注目のモバイルWiMAX!実証実験の現場をレポート(前編)〜横須賀リサーチパークの実験施設を一挙公開〜 | RBB TODAY
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注目のモバイルWiMAX!実証実験の現場をレポート(前編)〜横須賀リサーチパークの実験施設を一挙公開〜

ブロードバンド その他
神奈川県横須賀市のYRPセンター1番館。この一室で昼夜を問わずモバイルWiMAXの実証実験が行われている
  • 神奈川県横須賀市のYRPセンター1番館。この一室で昼夜を問わずモバイルWiMAXの実証実験が行われている
  • YRP内には、電波情報通信技術に特化した研究機関が集結。東京湾を望む風光明媚な丘陵地帯で、研究開発の環境としては良さそうだ
  • アッカネットワークス WiMAX推進室の担当部長、岡崎浩治氏
  • アッカが進めるモバイルWiMAXの実験ネットワーク構成
  • YRPセンター1番館の屋上に敷設された基地局とアンテナ。写真ではアンテナのみが見える。地上28mぐらいのところにあるという
  • YRPセンター1番館の屋上で撮影した基地局の全景。ここから実験電波を飛ばす
  • こちらの基地局はYRPセンター1番館の屋上に設置されているもの。有線ネットワークには光回線を利用している。
  • 側面から基地局を見たところ。外形は約W450×H900×200mm、重量は30kgぐらいなので、設置スペースもとらず、簡単に敷設できる
●明らかになっていくWiMAXの特性

 総務省は年内中にも、2.5GHz帯を使った無線ブロードバンドサービスの実現に向けた答申を発表する予定だ。無線ブロードバンドサービスの技術仕様としては、WiMAX(モバイルWiMAXを含む)や、ウィルコムが提唱する次世代PHS、京セラが進めるiBurstなどが候補に挙がっているが、本命とされているWiMAXの実験準備が各社で急ピッチで進められているところだ。

 そのような中で、アッカネットワークスはモバイルWiMAX(IEEE802.16e)の実現に向け、着々とその準備を進めている。同社は、この7月より、神奈川県横須賀市のYRP(横須賀リサーチパーク)において、2.5GHz帯を使ったモバイルWiMAXの実証実験を開始。今回、同社が初めて公開する実験の推進状況を取材できたので報告しよう。

 YRPは、東京湾を望む風光明媚な丘陵地帯にある。YRP内には、電波情報通信技術に特化した公的な研究機関や国内外の民間研究機関などが集結している。首都圏にありながら海と丘の豊かな自然に恵まれた環境で、アッカはモバイルWiMAX実証実験の設備を敷設し、基本的な性能に関する実験を始めている。実験用のインフラが整っており、建物もまばらなYRPは、新技術であるモバイルWiMAXの基礎的なデータを効率よく集めるうえで、うってつけな環境だろう。同社では、この基礎実験を3つのステージにわけて段階的に進めていく計画だ。まず第1ステージでは、基本特性確認試験を中心に様々な検証を行った。具体的には、以下のような試験をすでに終えており、必要な実験データを収集できたという。
・周辺電界強度特性
・伝播スループット測定
・カバレッジ
・モビリティ特性
・インターネット
・映像ストリーミング
・VoIP通信(この実験は現在進行中。フュージョンとの共同研究として行われているという)

 アッカネットワークスの岡崎浩治氏( WiMAX推進室の担当部長)は、基礎実験の結果について次のように語る。
「この場所は起伏に富んだ環境なので、悪影響下で具体的にどのような結果が出るのか検証しています。2.5GHz帯のため、電波の直進性が高く、エリア内で電波が反射して戻ってきたりすることもあります。どのように電波が飛んでいるか、ひとつひとつ確認をとりながら、ノウハウと実績を積み重ねている段階です」
 実際に2.5GHz帯の特性は指向性が高く、反射だけでなく、山などがあると電波が吸収されてしまうこともあるそうだ(具体的には葉が多いと吸収されてしまうという)。そのため、ロケーションによっては電波の打ち方を十分に考える必要がある。また電波が水平方向にまっすぐ飛んでしまうため、起伏が激しいところでは、電波の送受信方向を調整するといった工夫もしなければならない。これらの問題は、アンテナ側に搭載されたモータでチルト角をコントロールしたり、ダイバーシティアンテナを利用することで解決できるという。現時点では、詳しいデータを公表できないが、実験結果から電波の特性を十分に考慮した上でWiMAXの設計をしなければならないことがよくわかったという。

●敷設が容易なアルカテルの小型基地局

 それでは具体的な実験環境について見てみよう。

 基地局の設置場所はYRP敷地内に2箇所ある。ひとつはYRPセンター1番館の屋上に設置。地上から約28mの高さのところに基地局とアンテナが置かれている。もうひとつは、YRPグラウンドのそばにある高さ5mほどの地上ポールに取り付けられている。

 同社が採用した基地局の設備は、仏・アルカテル製の小型製品「Evolium」だ。外形は約W450×H900×200mm、重量30kgほどで、スペースを取らないというメリットがあるため、公道にある電柱などにも設置できるという。

 また板状のアンテナには、合計4つのアンテナが内蔵されている。これは、電波利用効率を高めるために、同じ周波数帯の電波に別々のデータを乗せ、複数のアンテナから送信する技術「MIMO」(Multiple-Input Multiple-Output)に対応させるためのものだ。最終的には、前述のアンテナを4本つなげて、ビームフォーミングが可能になるという。

「アンテナについては、今後もう少し幅の狭いものを利用できればと考えています。高い所に設置すると風の影響を受けるため、強度設計が難しくなるためです」(岡崎氏)
 基地局を制御するための専用装置群(WAC:Wireless Access Controllerなど)は、YRP1番館の4階の実験室にあり、ここに検証用のコア無線ネットワークが構築されている。屋上の基地局とは光回線で結ばれている。また、DHCPサーバや、映像ストリーミングの実験をするための専用サーバなどもある。コアネットワークでは、基地局の制御やモバイルIPの制御を担っている。一方、コアネットワークから外部への接続についても光回線を利用しており、インターネット経由でVoIP実験も開始しているという。
 次回は、電波マニア必見!? の珍しい電測車や、ストリーミングの実験について紹介する予定だ。
《井上猛雄》
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