緩やかなビジネス連合体で、WiMAXの新しい市場の開拓を狙うアッカの戦略 | RBB TODAY
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緩やかなビジネス連合体で、WiMAXの新しい市場の開拓を狙うアッカの戦略

ブロードバンド その他
【図1】次世代ワイヤレスブロードバンド技術「WiMAX」の大きな特徴。速い、安い、オープンという3つのメリットがある。モバイルという観点から、移動体通信技術として利用できる点も重要だ
  • 【図1】次世代ワイヤレスブロードバンド技術「WiMAX」の大きな特徴。速い、安い、オープンという3つのメリットがある。モバイルという観点から、移動体通信技術として利用できる点も重要だ
  • 次世代ワイヤレスブロードバンドの大本命と注目を浴びている「WiMAX」。ここでは、モバイルWiMAXのサービスに向け、新たな市場を切り開こうとしているアッカ・ネットワークの独自の戦略について紹介しよう。
  • 【図2】WiMAX事業におけるアッカ・ネットワークスの大きな強み。新規参入の強みと、中立的な立ち位置、キャリアとして蓄積されたノウハウによって、他社との差別化を図る
  • 【図3】オープンなビジネス連合体として、既存のモバイル提供事業者に縛られない低コストなソリューショーンをつくれるような環境を整えていく
  • 【図4】具体的な事業セグメントへの落とし込みとして、プラットフォーム(ASPF)を用意。同社では、ここにWiMAXサービスを組み込んでいく方針だ
  • 【図5】想定するWiMAXの新しい市場セグメント。Web2.0的な考え方で、ロングテールのテールの部分にある様々な潜在的ニーズをすくい上げていく
 WiMAXは、1台のアンテナで半径約50kmをカバーし、最大70Mbpsの高速通信が可能な次世代ワイヤレスブロードバンド技術だ(図1)。ワイヤレスブロード市場において、新たなマーケットとビジネスチャンスを生み出す可能性があるため、現在大きな注目を浴びている。
 WiMAXには、ワイヤレス通信の標準規格IEEE802.16として固定WiMAX(IEEE802.16-2004)とモバイルWiMAX(IEEE802.16e-2005)がある。特にモバイルWiMAXは、国内でも安価で高速なモバイルブロードバンドサービスを実現する技術として高い期待を集めている。移動中にWiMAXのサービスを利用すれば、インターネットへの常時アクセス環境を整えられ、なおかつIP電話サービスの提供も可能になる。WiMAXが普及すれば、通信料が安く簡易的に利用できる携帯電話サービスや、定額制の携帯電話サービスなども実現するかもしれない。

 現在、総務省の情報通信審議会では「広帯域移動無線アクセスシステム」を実現する技術の1つとしてWiMAXの検討を進めている。早ければ2007年にモバイル2.5GHz帯のワイヤレスブロードバンドとしてWiMAXが割り当てられ、2008年には本格的な無線ブロードバンドサービスが提供されることになるだろう。こうのような政策の一方で、最近になって、IRIユビテック とインテル、ジャパンケーブルキャスト、三菱総合研究所の4社が合同で民間のプロジェクト「WiMAX Japan Project」(仮称)を発足させており、国内でのWiMAXの早期実現と普及に向けて大きく拍車がかかってきた。

●モバイル市場に新規参入する
アッカ・ネットワークスの3つの強み

 さて、WiMAXの実現へ向けて動きが活発化する中で、通信事業者各社も実証実験を着々と進め、新市場への参入への準備をしているところだ。特に通信事業者の中でも、独自の事業戦略を打ち出し、この新市場への切り込みを図ろうとしている事業者がある。アッカ・ネットワークスがそれである。
 同社は、総合的な地域通信事業者として2000年に設立された。個人向けDSLによるインターネットアクセスサービスから始まり、法人向けDSLサービス、光サービスなどを順次拡大していき、商用開始から3年で通期黒字化を達成、2005年にはJASDAQへの上場も果たしている通信事業者である。同社では従来から個人・法人・M2M向けにDSL、光事業を展開してきたが、ここにきて新たにモバイル(無線)領域を加えることで、事業の拡大を狙っている。
 では、なぜ同社がモバイル事業の新規参入に際してWiMAXを選んだのであろうか。アッカ・ネットワークスの高津智仁氏(WiMAX推進室 副室長)は、その理由を次のように語る。 「モバイル事業として3G(WCDMA)への参入も可能でした。しかし、既存のモバイル事業者と同じコスト構造では、サービスの差異を出すことができません。ところがWiMAXという新技術が登場したことで、我々のような新規参入の事業者が既存事業者と差別化を図れる可能性が出てきたのです。WiMAXならばコスト構造をうまくハンドリングでき、新しいビジネスモデルを創出できるのではないかと考えたからです」

 同社はWiMAX事業の参入にあたり、大きな強みを持っている(図2)。それは、前述のように新規参入ということもあり、他の通信事業者のような既存モバイル事業に対する縛りがない点だ。WiMAXのオープン性を活かしながら、マーケットへの展開が図れる唯一のプレイヤーなのである。その反面、既存のモバイル事業を持っていない点は、一見すると弱点のようにも思えるかもしれないが、同社は設立以来、法人ユースでのネットワーク構築を手がけてきた実績があり、キャリアとして基地局まで対応できる十分なオペレーション能力とノウハウを持っている。この点は、他の通信事業者でも難しいところだ。
 さらに、各事業者から見て中立的な立場にいるため、幅広く各事業者と手を組んで事業を展開することも可能だ。これは特に、次に紹介する独自の事業スキームに直結する点である。それでは、アッカ・ネットワークスが描く、新事業モデルとは一体どのようなものなのであろうか。

●緩やかな連合体によって、
新しいビジネスモデルを創出

 従来の既存モバイル事業者は、端末、アプリケーション、コンテンツなど必要なパーツを、各社のインターフェースにそれぞれ合わせて調達していく形が主流であった。つまり、相互協力会社の関係が薄く、構造的にどうしてもコストが高くなりがちな垂直的な統合モデルであったといえるだろう。ところがWiMAXでビジネスモデルを考える場合、標準的な仕様のため端末がすぐにでも作れ、またコンテンツやアプリケーションも既存モバイル事業者が用意しているようなプラットフォームを意識せずに開発できるというメリットがある。つまり、コンテンツやアプリケーションの提供事業者がインターネットに提供している環境を、そのまま適用できるようになるため、提供事業者のコスト削減にも貢献可能だ。そのため、同社のような中立的な立場にいる事業者は、「モバイル事業者が技術を抱え込むモデルではなく、WiMAXというオープンな環境のもとで、それをベースに様々なアライアンスパートナーと協力関係を築きながら、"緩やかなビジネス連合体"というモデルを形成することが可能になる」(高津氏)
 これにより、既存モバイル事業者が提供することが難しかった新しい形態のソリューションも提供できるようになる。たとえば、オープンなビジネス連合体として、よりよいものをレディメイド(半製品)で作り、それを低コストで棚卸して、パートナーやMVNO提供者に渡す、といった市場への展開も可能になるわけだ。つまり、最初からベンダーやコンテンツ・アプリケーション提供者などに対してソリューショーンをデザインできるビジネスモデルを考え、既存のモバイル提供事業者には提供が難しい低コストなソリューショーンを提供する環境を整えられる(図3)。つまり、従来のように汎用的なパッケージを提供するのではなくニーズに応じたサービスとして提供するWeb2.0的なサービス提供が狙いだ。

 同社では、法人向けの事業セグメントへの具体的な落とし込みとして、すでにM2M案件で様々なユーズに応えるべく、ASPF(ACCA Solution Platform)というプラットフォームを用意している。DSL、光、無線などアクセス環境やネットワークを用意し、必要であれば音声・映像などのサービスをのせてパートナーに提供、それをパートナーがユーザー企業に提供することもできる。このプラットフォームに対しても、WiMAXを加えて拡張できないか検討しているところだ(図4)。ASPFを用いた事業展開としては、この3月に大塚商会と提携し、同社を通じた回線コンサルティングもスタートさせている。

 また、市場へのリーチを狙う際に、高津氏は大変ユニークな考え方で、モバイル市場の拡大を図ろうとしている。これもモバイル市場におけるWeb2.0的な考え方である(図5)。モバイル市場のロングテールに対し、主にテールの部分における需要を喚起し、それを集めていくという形である。たとえば、同社では、まずテールの中間となるAirH”や3Gデータカードといった既存カード市場をWiMAXによって拡張し、次に新規データ市場として、「Eコマース」「セキュリティ」「教育」「車載」「ヘルスケア」「ゲーム」などのターゲットへの参入を考えている。この新規データ市場では、前述の連合体とともに、回線、端末、サービスなどのソリューションをまとめて提供する戦略を取る方向だ。ひとつずつのパイは小さくても、全体を合わせれば、その市場規模は最終的に数兆円にも達するとの予測もある。
 同社では、いままで見えてこなかった潜在的なニーズをWiMAXによって積極的に掘り起こしながら、様々な市場を立ち上げることで、既存のモバイル事業者と一線を画すソリューションを提供していく方針だ。
《井上猛雄》
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