[年末企画]無料サービスと立ち上がったばかりの有料サービスのせめぎ合い−公衆無線LANの「この1年」 | RBB TODAY

[年末企画]無料サービスと立ち上がったばかりの有料サービスのせめぎ合い−公衆無線LANの「この1年」

ブロードバンド その他

 2002年を通じて、あちこちのニュースサイトに「公衆無線LANサービス」のキーワードがよく登場した。わずか1年前までは「あくまで実験」という雰囲気であったものが、商用サービスへと大きく動き出したこと、これが2002年の公衆無線LANサービスをめぐる大きな特徴といえよう。

 しかし、無料サービスと商用サービスが併存し、相互乗り入れも大々的な進展を見せないまま混沌の度合いを増しつつあることもまた事実である。この先どうなるのか、誰にもよくわからないのが公衆無線LANサービスの現状である。

■次々に試験サービスを実施
 各社乱立状態となった2002年


 まずは、今年1年の主要なニュースを振り返ってみよう。公衆無線LANサービスをめぐる2002年前半の「主役」は、商用化に先べんをつけたNTTコミュニケーションズ(NTTコム)の「HotSpot」だろう。昨年1年の実験を経ての商用化は、モスフードサービスとともに功績をたたえられるべきだろう(その一方で、サービス名称に「HotSpot」という一般名詞を使ったことへの批判はあるかもしれない)。

 5月にもうひとりの主役であるソフトバンクグループ「Yahoo! BBモバイル」が登場する。マクドナルド店内に無線LANアクセスポイントとIP電話を提供、その後も着々と実験店舗を増やし、いまやNTTコムに迫る勢いを見せている。

 6月にはNTT東日本の「Mフレッツ」とNTT西日本の「フレッツ・スポット」が、一般ユーザを対象とした大々的な試験サービスを開始した。これに対して、ISP各社はこぞって自社のオプションサービスとして公衆無線LANサービスを取り込んでいる。

 7月には鉄道施設を中心に展開する公衆無線LANサービスが実験サービスを開始した。相鉄やNTT-MEの「ネオモバイル」、NTT-BPの「無線LAN倶楽部」がこれにあたる。同じく休止中のJR東日本の「駅でワイヤレスインターネット体験!」などもこの時期に登場している。

 新たなサービスもあれば、終了するサービスもあった。黎明期に三軒茶屋で実証実験をはじめたMISが公衆無線LANサービスから撤退したことは記憶に新しい。12月5日のことだった。

■ノートPC、PDA、携帯電話...
 想定する利用環境は各社各様


 公衆無線LANサービスという括りがあるにせよ、よく見ると、事業者ごとの方向性がまったく異なることに気づくはずだ。その中でも最も一般的なユーザ層はといえば、ノートPCを利用するビジネスマンだろう。ただし、これらのユーザが利用する店舗として想定されるのはノートPCを広げて使えるだけの客席数とテーブル面積、そして少々長居をされても問題のない業態に限られる。行列のできるラーメン屋などには適さないのである。

 また、鉄道施設を中心にアクセスポイントの展開を行っている場合には、クライアントとして主にPDAが想定されているのが対照的だ。というのも、満員の通勤電車では立ったままノートPCを広げるわけにもいかないからだ。特に、無線LAN倶楽部(NTT-BP)ではインターネット接続もさることながら、無線LANをコンテンツの配信経路として捉えている。まさに、PDAを紙の新聞に代わるメディアとして見立ているのだ。

 3つ目が、IPでも通話できる携帯電話の登場を見越して、将来的には携帯電話を対象にすえたサービスである。当然ながら、PCからのアクセスも行える。何よりも携帯電話の普及台数を背景に、一番伸びる可能性が高いといえよう。来年はこの手のサービスが勢いを増してくるかもしれない。PC以外のプラットフォームで利用する人が増えれば、公衆無線LANサービスも大々的な拡大が期待できるというものだ(スポットという言葉が死語になるかもしれない)。

 確かにこの1年で、公衆無線LANサービスは非常に魅力を感じるインフラに育ったと実感する。ただし、その魅力は「常時ブロードバンドを利用しており、携帯電話やAirH”の通信速度では飽き足らず、かつ都心で生活をしている人たち」に限られている。東京圏や大阪以外では、まだ公衆無線LANサービスのリアリティはない。それこそ、影も形もないといっていい。

 もちろん、無線なので目に見えないサービスなのだが、東京ですら郊外にはアクセスポイントはほとんどない。2002年末の現状でいえば、新宿駅からJR中央線に乗って西に向かったとき、その限界点は立川あたりで訪れる。いかに増えたとはいえ、公衆無線LANサービスがブレイクするためには、まだ絶対的にアクセスポイントが足りないのだ。また、これまで以上に相互乗り入れを推進する必要があることはいうまでもない。

■想定される3つのシナリオ
 事業者の淘汰で相互乗り入れが実現するか


 最後に、公衆無線LANサービスの「近未来像」に迫ってみよう。とはいえ、冒頭で述べたように「これだ!」といえる結論があるわけではない。そこで、「こうなりそうだ」という3つのシナリオを示してみることにした。

 1つは、このアクセスポイント設置の動きが国のe-Japan構想の一環として認識され、国からの補助が行われるというもの。公共事業で無駄な橋や無駄なコンサートホールを作るよりは、ずっと有益と思われるがいかがなものか。

 2つ目は、公衆無線LANサービスでは採算が取れないとして、サービスそのものをやめる会社が出てくるというもの。これによって、公衆無線LANサービスが統合され、サービスの吸収という形で相互乗り入れが実現する。

 最後の1つは、ほとんどの公衆無線LANサービスが低廉な料金で利用できるようになるというものだ。ただし、第2のシナリオほどでないにせよ、事業者がこのサービスに対して採算性に見切りをつけ、一般ユーザに直接課金するのでなくISPへのサービスとして提供するというのが前提条件となる。メルコのFreeSpotをイメージしてもらえばわかりやすいだろう。

 これらのうちのどれでもない未来がやって来るかもしれないし、これらがバラバラにやってくるかもしれない。この国で、「目に見えない」サービスにお金を払ってもらうのがいかに大変かというのはすでに「定説」となっている。実体が分かりにくい公衆無線LANサービスでユーザから直接課金するというのは並大抵の努力では実らない。そのため、「ISPのアクセスラインの1つとして基本料金の中に含まれるサービスとして提供する」というスタイルにリアリティを感じずにはいられない。いずれにしても、そのシナリオを作るのはRBB TODAY読者のみなさん1人1人だ。みなさんが、これらのサービスを必要と思うか、実際に利用するかどうかにかかっている。

 最後に、来年注目のサービスはといえば、ついにMISシステムの呪縛から解放される「みあこネット」だろう。サービス自体での利益を追わず、集客や町おこしの道具として公衆無線LANサービスを位置づけるみあこネットのスタンスこそ、サービスを長続きさせるための「秘訣」と見るが、いかがなものだろうか。
《RBB TODAY》

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