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規制緩和と消費者保護に板挟み?の総務省 −IT競争政策特別部会が最終答申案を公開

ブロードバンド その他
 総務省は30日、情報通信審議会のIT競争政策特別部会がまとめた最終答申案を公開した。その中では、公衆網の再販や接続料の検証に関する問題、OSS開放、競争の枠組みといった「事業者vs事業者」に関する議論のほか、通信にまつわる消費者行政の充実ついての考え方などが示されている。

 答申案では、ブロードバンド化・IP化へ急速にシフトしつつある通信サービスにおいて、インフラ設備を保有する既存通信事業者の不当な影響をおさえ、新規参入を促進するための方策として、接続料の検証やOSSの開放、アクセス網等の機能のオープン化などをあげている。その一方で、答申案では新規参入事業者の増加やサービスの多様化にともなって、消費者トラブルも急増していることを指摘、包括的な消費者保護政策の強化が必要であるとした。これについては、総務省などにおける相談窓口機能や情報公開機能の強化のほか、政府、業界団体および消費者団体などの連携強化、事業者の自主的な消費者対応の強化などが求められている。

●DSL開通がもっと早くなるOSS開放とは?

 OSSとは、Operation Support System(業務支援システムと訳せばよいか)のことで、ここではNTTの業務システムをいう。

 OSSの接続事業者への開放(つまり、NTT東西の顧客管理システムなどにDSL事業者などがアクセスする、ということ)については、開放に必要なシステム開発費用の見積もりや開発・運用コスト負担のあり方について、パブリックコメントとして各事業者からさまざまな意見が寄せられていたが、DSL関連のOSS開放としては確認結果通知および名義人情報の開示の自動化が前向きに検討されている。これらは現在、手作業での確認作業を行っている部分であり、開放が実現すれば、DSL申し込み時の適合性確認がより短期間で行えるようになる。これにより、「名義人が違うので受け付けられません」といって申込が差し戻されたりすることがなくなるわけで、DSLの申込が簡単・スピーディになるはずだ。

●規制緩和の期待と不安

 答申案のそのほかの部分も、当然ながら基本的に競争推進の方向での議論であり、エンドユーザである我々にとっては、将来的な料金の引き下げやサービスの向上、選択肢の多様化などが期待できる内容となっている。

 ただ、答申案の中では通信事業者の退出(事業撤退)規制や事業譲渡などに関する規制が緩和されることも示されており、これは消費者トラブルの種になりそうな部分だ。騒動をもたらした事業譲渡としては、ちょっと古い例ではJ-COMのタイタス買収、近い例ではイー・アクセスのJ-DSL事業買収がある。譲渡ですらモメるのだから、退出(撤退)となると社会問題に発展しかねない。規制緩和一辺倒でない十分な検討を期待したい。

 今回の答申案では、わざわざ消費者行政の充実に章が割かれているが、これは2001年後半に、Yahoo!BB関連の多数の苦情がエンドユーザから総務省に直接寄せられたことも大きく影響しているものと思われるが、それにとどまらず、コンシューマ向けインターネット接続サービスが、電話や専用線といった従来型通信サービス以外の「おまけ」としての位置を脱し、情報政策上重要なサービスとして認知されたことのあらわれと言える。

 もちろん、誠実な事業者&苦情を言わずにすむサービスばかり、というのが理想ではあるが、プロバイダ関連のトラブル解決の手段として「お上への直訴」が総務省側に認知されたのは心強い。電気通信事業は公益性の強い事業であり、それゆえ第一種電気通信事業者は免許制となっている。事業者とトラブルを抱えた場合、個人だからとあきらめず総務省に正式な苦情を申し立てることが、最終的にサービスを改善させ、ユーザも救う、ということになるだろう。
《RBB TODAY》
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