
データ分析から見る視聴者のインサイト変化
最近のヒットアニメの特徴として、「無痛コンテンツ」というテーマが挙げられます。視聴者は「精神的に辛くなる展開」や「複雑な男女の絡み」を避け、ストレスなく楽しめる「無痛」と、主人公が圧倒的で「安心できる(最強)」作品を求める傾向が強まっています。
そこに「キャラクターを推せる」という熱量が加わったとき、作品がSNSで語られる熱量が爆発します。アニメデータインサイトラボの大貫と湯通堂がこの変化を踏まえ、すでに固定ファンを持つ続編モノではなく、完全新作から今期のトレンドを牽引するであろう作品をそれぞれ3作品をピックアップします。
エンタメデータアナリスト湯通堂が選ぶ
3作品(データ分析視点)
異次元の推し活を生む『ニワトリ・ファイター』
「無痛コンテンツ」かつ「最強の安心感」というトレンドに最も合致するのが本作です。主人公が一羽のニワトリであるため、煩わしい男女の恋愛模様は皆無。さらに圧倒的な力で怪獣を倒すハードボイルドな展開は、視聴者に揺るぎない安心感を与えます。データ分析の視点で見ると、こうしたシュールな設定はSNSでのツッコミ待ち要素として機能しやすく、「ニワトリを推す」という異次元の推し活が発生しやすい構造を持っています。放送前の検索量という初速は低くとも、口コミによってSNSで語られる量が後伸びし、今季のダークホースとなるポテンシャルを秘めています。
推し活のメタ化が熱量を牽引する『霧尾ファンクラブ』
本作は、主人公の女子高生たちがクラスメイトの冴えない男子・霧尾くんを「推す」という構造となっています。生々しい恋愛ドラマを排除し、平和でシュールな笑いを提供する本作は、まさに現代人が安心して摂取できる無痛コンテンツといえるでしょう。同時に、現代の視聴者にとって「誰かを推す感情」は日常の一部であるため、彼女たちの過剰な愛情表現はSNS上で「わかりすぎる」という強烈な共感を呼ぶ可能性があります。
「推し活をする彼女たちを推す」という二重構造が、SNSでの継続的な盛り上がりに繋がりそうです。
挫折すら惹きつける群像劇の極致『あかね噺』
すべてが「無痛」に染まるわけではありませんが、挫折を描く王道でありながら、現代人に別の角度から「安心感」を与えているのが『あかね噺』です。作中で挫折や厳しい修行の描写はあるものの、主人公・朱音のブレない芯の強さが、視聴者に「この主人公なら大丈夫」という絶対的な安心感をもたらします。さらに、魅力的な落語家たちが多数登場する群像劇としての側面は、女性層も含めて「推し活」の対象となるキャラクターが豊富であることを意味します。そのため、放送開始前から検索される量が高く、終盤までSNSで熱く語られ続ける、今期を代表する「王道枠」になるはずです。
エンタメビジネスプロデューサー大貫が選ぶ
3作品(マーケティング・現場視点)
今期の逆輸入アニメ『ニワトリ・ファイター』
日本発の作品でありながら、海外で先行して人気を獲得した『ニワトリ・ファイター』は、いわゆる“逆輸入”型の注目作である。近年、海外市場での支持を起点にアニメ化へとつながる事例は増加しており、本作もその流れを象徴する存在といえ、アニメ市場においても新しい風となるのではと考えています。ユーモア性とアクション性を兼ね備えつつ、展開は王道で先読みしやすく、視聴者にとってストレスの少ない構成となっている点も特徴です。近年はショート動画や広告においても、視聴者が展開を予測しやすいフォーマットが好まれる傾向にあり、本作の構造はそうしたトレンドとも親和性が高い。事前の注目度に依存せず、視聴後の口コミによって広がる“ダークホース型”作品として、話題化のポテンシャルを有しています。
コア層の共感を喚起する『日本三國』
『日本三國』は、美麗な作画に加え、政治・戦略・戦闘といった重厚な要素を内包する作品である。一見するとハードルが高く見えるものの、キャラクターも深みのある描写があり、こだわりの強いアニメファン層に対しては強い訴求力を持つ構造となっています。特定の単一層ではなく、複数のコミュニティがそれぞれ異なる観点から評価することで、結果的に大きな盛り上がりへと発展する可能性がある点に注目しています。また、映像のインパクトが強く、SNS上での切り抜きにおいても初動の3秒で関心を引きやすい要素を備えている。大河ドラマ的な重厚さも兼ね備えていることから、話題化を契機にライト層への波及も期待されます。
業界共感を軸に拡散が期待される『左ききのエレン』
『左ききのエレン』は、広告代理店を中心とした人間関係や働き方をリアルに描いた作品です。クリエイティブ領域の物語でありながら、「営業とクリエイティブの関係性」や「クライアントとの力学」、さらには組織内の世代間ギャップといった、広告業界特有の構造を具体的に描写している点が特徴となっています。こうしたリアリティの高い描写は、特に広告・マーケティング業界に従事する層から強い共感を得やすく、SNS上での言及や議論を喚起する要因となり得て、実務経験と結びついた“あるある”の共有は、コミュニティ内での拡散を加速させる傾向があります。
また、同業界における情報伝播のスピードの速さを踏まえると、こうした共感を起点に、短期間で広範囲に話題が広がる可能性も高い。業界関係者の発信力がSNSビジネスYouTuberに伝播し、そこから一般視聴者にブリッジをするカスタマージャーニーが描かれた場合、作品が一般化し、認知拡大が期待出来ます。
アニメデータインサイトラボでは、今後も継続的にデータと現場の声をもとに分析を行い、春アニメの動向についても分析・検証していく予定です。アニメデータインサイトラボでは、今後もアニメビジネスに携わる人々に役立つ情報やサービスも提供していきます。
【プロフィール】
株式会社SevenDayDreamers
湯通堂 圭祐
株式会社マクロミルでデータサイエンティストとして複数の新規事業を立ち上げ、その後、FiNC Technologiesにてデータ分析、グロースハック、プロダクト開発、経営企画、人事の責任者を歴任。現在は、株式会社SevenDayDreamersを創業し、データとAIを活用してコンテンツIPの価値最大化に取り組む。
アニメデータインサイトラボ
代表:大貫 佑介
コンテンツ・IPビジネスプロデューサー。 株式会社ブシロードメディアコンテンツユニット副ユニット長、株式会社ブシロードムーブ代表取締役社長、株式会社ゲームビズ代表取締役社長、新日本プロレスリング株式会社の社外取締役も務める。ブシロードグループ内でアニメ・ゲーム・音楽のメディアミックス展開を統括している。
(C)️Anime Data Insight Lab
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