試合後、胸の痛みに涙を流した。
そこには、ホームがホームとして機能していない「異様な景色」があったからだ。
韓国の女子プロサッカークラブ、水原(スウォン)FCウィメンは5月20日、本拠地である水原総合運動場で行われた「2025-2026 アジアサッカー連盟(AFC)女子チャンピオンズリーグ(AWCL)」準決勝で、北朝鮮のネゴヒャン女子蹴球団と対戦。1-2で逆転負けを喫した。勝利したネゴヒャンは、23日に日テレ・東京ヴェルディベレーザとの決勝に臨む。
水原FCは後半4分に先制するも、後半10分、22分と立て続けに失点。後半30分にはPKのチャンスを得たが、大黒柱のチ・ソヨンが失敗し、そのままタイムアップを迎えた。

この試合の関心はホームの水原FCよりも、対戦相手のネゴヒャンに向けられていた。水原FCはネゴヒャン側の要請により、本来の宿舎を明け渡し、移動を余儀なくされるなど、準備段階から振り回された。さらにスタジアムの雰囲気も妙だった。韓国政府の行政機関である統一部が、3億ウォン(約3000万円)を投じて「共同応援団」を支援していたからだ。
その共同応援団は試合中、終始「ネゴヒャン」と連呼。一部の観客席からは、チ・ソヨンのPK失敗時やネゴヒャンの得点時に大きな歓声が上がった。ネゴヒャンのロゴが入ったフラッグがスタジアムのあちこちで揺れ、勝利後には北朝鮮の国旗が掲げられてセレモニーが行われた。


試合後、ネゴヒャンのリ・ユイル監督は「試合に集中していて(応援は)意識していなかった。観客のサッカーに対する関心の高さが伝わった」と、異例の応援熱気を評価した。
一方で、水原FCのパク・ギルヨン監督は、記者会見の冒頭から感情が高ぶり、言葉を詰まらせた。「私たちは韓国のサッカーチーム、水原FCウィメンだ」と前置きし、「様々なことがあり、試合中はずっと悔しく、やるせない思いだった。韓国女子サッカーがより多くの関心を集めるためには勝利が必要だった。この試合が、女子サッカーを再び見てもらえるきっかけになればいいのだが…」と目を潤ませた。
さらに、会見が終了する直前、パク監督は自ら再びマイクを手に取り、「どうか、女子サッカーに多くの関心をお願いしたい」と切実に訴えかけた。

チ・ソヨンも「(共同応援団の応援は)全く気にしなかった。水原のファンが本当に大きく熱心に応援してくれたおかげで、力を出すことができた。試合中はずっと幸せで、感謝の気持ちを伝えたい」と語った。
試合前から異様な空気に包まれていた“南北戦”。政治的な配慮とスポーツの狭間で、ホームチームが孤立してしまったかのような、後味の悪さが残る結末となった。
(構成=ピッチコミュニケーションズ)
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