トップ歌手の海外公演が、ビザひとつで消えた。
歌手ソン・ガインが米国ビザの発給問題により、ロサンゼルス公演をわずか3日前に電撃的に中止した。
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ステージに懸けるアーティストの熱い思いも、冷たい国境の壁の前ではなすすべがなかった。
当初、ソン・ガインは2月14日、15日に米ロサンゼルスのペチャンガ・シアターで開催予定だった「ガインダル The チャオルダ」公演を控えていた。これまで海外公演の中止理由の多くが「チケット不振」だったのに対し、トップクラスの歌手がビザ問題で渡航を断念するのは極めて異例だ。
トランプ第2期政権の発足以降、ビザ審査は「顕微鏡審査」と呼ばれるほど厳格化している。かつては2週間もあれば十分だった発給期間が、いまや1カ月でも確約できない状況だ。
ソン・ガイン側の関係者は「普段通り準備していたが、十分ではなかった。こうした事態が起きるとは予想していなかった」と語った。

有名アイドルは今のところ問題ないが…
ビザの壁の高さは、アーティストの“格”によってはっきり分かれる。
ソン・ガインだけではない。バンド紫雨林(ジャウリム)はニューヨーク公演が、キム・チャンオク講師はスタッフと出演者のビザ発給が遅れたためロサンゼルスのイベントが中止となった。
一方、HYBE所属のTOMORROW X TOGETHER、LE SSERAFIM、CORTISなどの大型アイドルグループは、前政権時代と変わらず円滑にコンサートを消化している。数十億ウォン規模の専門ローファームによる行政支援、ビルボードやSpotifyのデータで証明された「グローバルな大衆性」が背景にある。
米国移民局の立場からすれば、有名アイドルは「確実な収益をもたらす来賓」である一方、客観的データが乏しいトロット歌手は、いまだ「検証されていない在米韓国人向けイベントの歌手」に過ぎない。行政上の優先順位から後回しにされる「ジャンルによる疎外」こそが、今回の中止騒動の本質というわけだ。
韓国トップクラスのトロット歌手であるソン・ガインでさえ、グローバルな認知度の低さが足かせとなった。

とはいえ、アイドルであっても油断は禁物だ。グローバルグループの中でも、国籍による「ピンポイント規制」は存在する。
ある音楽業界関係者は「人気グループ内の中国人メンバーは特に審査が厳しい。面接回数や提出書類の要求量が際立って多い」とし、「米国は外貨獲得と安全保障を名目に、見えない差別を設けている」と明かした。
こうした閉鎖性は、韓国だけの問題ではない。英国の伝説的シンガーソングライター、キャット・スティーヴンスも昨年10月、米国ビザが下りず公演を中止した。彼は当時、「チケットを買い、旅程を立てたファンのことを思うと腹立たしい」と批判した。
トランプの自国優先主義政策は、産業全般を麻痺させている。グーグルやアップルなどのビッグテック企業は最近、米国内の外国人従業員に対し「出国自粛令」を出した。海外に出た後、再入国ビザのスタンプが得られず、最長1年にわたり復帰できなくなる事態を防ぐためだ。
世界最高峰の人材でさえ、ビザ問題によって「米国内の監獄」に閉じ込められたも同然といえる。特にインド、アイルランド、ベトナムなど主要国で、予約遅延の事例が増えていると伝えられている。
結局のところ、米国の政策基調が変わったいま、グローバルな体制が脆弱な歌手たちには「情熱以上の戦略」が求められる時代となった。
歌ひとつで世界を制するというロマンの時代は終わった。第2のソン・ガイン事態を防ぐためには、アーティストの情熱を支える精緻な行政システムとリスクマネジメントの構築が急務だ。
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