講談社が製作したVRアニメーション「猫が見えたら」が第82回ヴェネツィア国際映画祭のVR部門コンペティション「VENICE IMMERSIVE」にノミネートされた。
同作は国際的評価の高いアニメーション作家・和田淳(「グレートラビット」で2012年ベルリン映画祭銀熊賞受賞)と、VR映像プロデューサー石丸健二(講談社VRラボ)がタッグを組んで製作。日本における精神医療の難しさや課題、そして希望をVRの臨場感とインタラクティブ機能を最大限利用して表現した作品だ。
現在、日本では20人に一人が何かしらの精神疾患で治療を受けているとされる。同作では、愛猫を亡くしてしまったことで、その猫の幻覚を見るようになった少年が、「猫が見える」というだけで精神疾患と診断を受け、強制的に入院させられ治療を受けることになる物語を描く。
VRの中では、プレイヤーは幻覚として見える「猫」の視点で、少年が病院でどんな経験をするのかを見守る。精神医療の問題、母子の関係性、そして少年にとっての救いとは何かをリアルに感じられるVRならではの作品となっている。
和田淳監督は「今回、精神疾患だと母親や病院に決めつけられ、周りの環境に翻弄される少年を描くにあたり、そういう経験のない私は、ある種部外者として描くことになるのですが、常に意識していたのは、明日自分が同じ立場になるかもしれないということです」とコメント。
石丸健二プロデューサーは「『猫が見えたら』というタイトルは、『幻視の猫が見えたら何が悪いのか?』という主人公の少年のセリフから取りました。この言葉の中に、私たちが取材で感じた精神医療の問題や難しさが込められています。この少年の物語を通じて、精神医療の課題を知るきっかけになれば幸いです」と語った。
ヴェネツィア国際映画祭は、カンヌ国際映画祭、ベルリン国際映画祭と並ぶ世界三大映画祭の一つ。その部門の一つである「VENICE IMMERSIVE」には世界中から優れた作品が集まり、50以上のノミネート作品が展示されるXRクリエーター、スタジオにとってあこがれの映画祭だ。
同作は2025年8月完成予定で、上映時間は約37分。企画・制作は講談社VRラボ、製作は講談社が手がける。