歌手のチェ・ソンボンさんがこの世を去ってから、2年の月日が流れた。
チェ・ソンボンさんは2023年6月20日、ソウル・江南(カンナム)区の自宅で遺体となって発見された。享年33歳だった。
前日19日、彼はオンラインコミュニティにこう記していた。「私の愚かな過ちで被害を受けられた皆様に、心からお詫び申し上げます。この2年間、支援金の返金を求められた、すべての方にお返ししました。今こそ命をもって罪を償います」
このメッセージは彼の亡くなった当日に公開された。通報を受けて警察が出動したものの、すでに息絶えていた。
チェ・ソンボンさんは2011年、tvNのオーディション番組『コリアズ・ゴッド・タレント』で準優勝を果たした。孤児院で育ち、逆境を乗り越えてアーティストを目指すという感動的なエピソードは多くの視聴者の胸を打ち、“韓国のポール・ポッツ”という異名で一躍注目を浴びた。
2014年にはアルバム『Slowcoach』をリリースし、2016年には著書『無条件で生きろ、一度きりの人生だから』を出版。2017年には政府主催の「2016年国民推薦褒賞」で行政安全部長官表彰を受賞し、キャリアのピークに。しかし2020年5月、ステージ3の大腸がん、前立腺がん、甲状腺機能低下症および甲状腺がんを患っていると明かし、多くの同情と支援を集めた。
その後も彼はテレビ番組などに出演し、闘病の近況を伝えながら感動的なステージを披露。クラウドファンディングを通じて歌手としての活動を続けていた。
裏の顔は“夜の帝王”

しかし、その感動は虚構だった。2021年、チェ・ソンボンさんのがん闘病が嘘ではないかという疑惑が浮上。公開された診断書の真偽が問われるなか、彼が支援金の一部を風俗店などで浪費していたことが報じられたことにより、一転して“夜の帝王”として取り沙汰されることとなった。その額、なんと3000万ウォン(約300万円)以上にものぼるという。
疑惑が拡大するなか、彼は何度も否定を繰り返したが、最終的には「物議を醸して申し訳ありません。大切な支援金を返してほしいとおっしゃる方々には、当然お返しします。なんとしてでも返金し、立ち去ります」と謝罪。飲食店でのホールスタッフなど、さまざまなアルバイトをこなしながら、返金に努めていた。
そして、すべての支援金を返し終えた彼は、「命をもって罪を償う」という言葉を実行。警察は現場の状況や検視の結果から、他殺の可能性はないと判断した。
しかし、遺体の引き取り手は現れず、ソウル市内の病院の葬儀場に安置されることに。最終的には親しかった元マネージャーが自費で葬儀を執り行った。
厳しい環境に生まれながらも夢を諦めず、多くの人々に感動と希望を届けたチェ・ソンボンさん。しかし、“虚のがん闘病”という疑惑で全てを無駄にしたことで、彼の人生は悲しい幕引きとなった。その美談すらも、いまや色褪せてしまった。
(記事提供=OSEN)