「コーヒー界のグーグル」が起こす、IT目線の生産性革命【中編】 | RBB TODAY
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「コーヒー界のグーグル」が起こす、IT目線の生産性革命【中編】

ビジネス 経営
ALPHA BETA COFFEE CLUBでは、カリフォルニアのカフェで主流となっている「サブスクリプション(会員制)」ビジネスモデルを採用。月額7,500円のパスで、コーヒー飲み放題特典やメンバー限定の無料特典が受けられる。ほかにコミュニティイベントへの参加も無料。有効期限切れのカードはいつでもレジで更新できる。カードはRFIDチップで電子的に管理されているため、紛失しても問題はない
  • ALPHA BETA COFFEE CLUBでは、カリフォルニアのカフェで主流となっている「サブスクリプション(会員制)」ビジネスモデルを採用。月額7,500円のパスで、コーヒー飲み放題特典やメンバー限定の無料特典が受けられる。ほかにコミュニティイベントへの参加も無料。有効期限切れのカードはいつでもレジで更新できる。カードはRFIDチップで電子的に管理されているため、紛失しても問題はない
  • ABC Coffee(株)創業者の大塚ケビン氏(右)とアルヴィン・チャン氏(左)。CEOの大塚氏は、スタンフォード大学を卒業後、「Google」にてアジア太平洋地域におけるデジタルマーケティングの責任者を務めた。一方、プロダクト兼デザイナーであるチャン氏は、サンフランシスコのフードデリバリーサービス「Zesty」の創業者でもある
  • 充実したフードメニューはサンフランシスコの有名シェフによるもの。サンドイッチなど定番のほか、日本人のソウルフード「おにぎり」にメキシカンテイストをプラスした「Taco Rice Onigiri」などオリジナルが人気。日本でも人気が高まっている「スーパーフード(栄養価は高いがカロリーが低い食品)」を用いたデリも
  • 飲み物のメニューには、コーヒーだけでなくビールやヘルシードリンクも揃う。昼間(コーヒー)と夜間(ビールやワイン)の2つの時間帯での営業をスマートにこなすことで、家賃や客の流れの効率性を生んでいる。ラインナップはコーヒー同様、季節によってフレーバーが異なるため、定期的に更新される
 先ごろ、東京の自由が丘に気になるコーヒーショップができた。「気になる」中身だが、コーヒーの味やカリフォルニアのトレンドが楽しめるのはもちろんとして、それ以上に「ITによる生産性向上」というビジネス文脈からも極めて示唆的な内容をもっている点に、おおいに興味を惹かれるのだ。そのコーヒーショップの名前は「ALPHA BETA COFFEE CLUB」(アルファベータコーヒークラブ。以下「ABC」)。創業者はアジア系アメリカ人の2人。かつてグーグルのアジア太平洋地域におけるデジタル・マーケティングの責任者を務めた大塚ケビン氏と、サンフランシスコのフードデリバリーサービス「Zesty」で成功を収めたアルヴィン・チャン氏。そして「ABC」のキャッチコピーは「ITの目線」「コーヒー界のグーグル」だ。

 サードウェーブコーヒーなど、いま日本ではかつてないほどのコーヒーブームが起こっている。町を見渡せば、職人技を誇る専門店から大衆的な大型チェーン店まで様々なコーヒーショップがある。そんななか、新たな視点「ITの目線」が投げかける考え方や具体的な方法は、コーヒーショップ経営に関わるひとのみならず、生産性改善を目標とする数多くのサービス業者への力強いアドバイスとなるように思えるのだ。

「ABC」のフィジカルショップ(リアル店舗)でのITの使用法や開発手順、ブランディングやPR方法、そして「ITの目線」からみる日本の生産性向上へのヒントーーこれら3つのテーマに分けてお届けするシリーズ「『コーヒー界のグーグル』が起こす、IT目線の生産性革命」、大塚ケビン氏とアルヴィン・チャン氏の二人の挑戦に注目してほしい。

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【中編 新しいビジネスモデルをコーヒーショップで実現する】


■日常使いのカフェだから「月額制」はお客さんとウィンウィンの関係に

ーー月額制(7,500円)のカフェというのは、日本ではまだ珍しい方式です。

大塚ケビン(以下、ケビン) まだ始まったばかりですが、いまは順調です。街で生活するひとや働くひとが毎日通うのがカフェです。月の定額はお客さんにとって特典になりうるものだと思います。定額制によって毎日でも訪れたい場所になるのです。ABCの支店が増えれば、月額会員はどの店舗でも会員カードを使えるようにします。そうすればお客さんのメリットも増える。お客さんとお店双方のメリットがあれば、いわゆる「ウィンウィン」の関係を築くことができます。

ーーフィジカルショップ(リアル店舗)で意識したことは?

アルヴィン・チャン(以下、アルヴィン) デザイン、スタッフ、リテールをひとつのシステムとしてとらえています。いろいろな機能、メニュー、雰囲気をひとつの経験としてお客さんには体験してもらいたい。そのためにはオペレーションが大事だと考えています。

ーー在庫をもたない、いわばセレクトショップに近い形態ですよね。自分たちのショップのオリジナリティをどうやって作っているのですか?

ケビン ブランディングについては、自分たちの名前=ALPHA BETA COFFEE CLUBか、扱い商品である豆やコーヒーロースターをメインにするのか、どちらを大きく出すべきかについて検討しました。

日本のファッション業界では、ビームスやステュディオスなどのトレンドショップは、自分たちのブランドを前面に出しています。僕たちもそのやり方にならいました。

アルヴィン 商品の面からいえば、あらゆるコーヒー豆を取り寄せているわけではありません。品質が最も高いと認められたインドネシアのスマトラやエチオピアのイルガチェフェなど厳選しているので、その点からもABCならではのオリジナリティを十分にアピールしていると思います。

■「クラフト感」で統一すれば、昼(コーヒー)も夜(ビール)も営業できる

ーーコーヒーのほかにビールも扱っていますね。

ケビン コーヒーは夜、あまり飲まれませんよね。一方、バーは朝、営業ができません。昼間だけでも夜だけの営業でも、払う家賃は一緒です。とすると、カフェとバーの両方が、ショップのコンセプトにうまく当てはまるなら、効率的なビジネスになります。コーヒーもビールも「クラフト感」が共通するので、イケると思ったのです。でもコーヒーもビールも自分たちが好きだから、なんですけどね。

アルヴィン コーヒーやビール、そしてフード、そのどれにもストーリーがあります。お客さんを退屈にさせない。そういう飲料や食材を厳選しています。

ーー他の店とは違う、特別な存在を印象づけるためにはどんなことを行ってきた、またこれから行うつもりですか。

アルヴィン 一つ目にはフード。フードデザインには、サンフランシスコのラグジュアリーなレストランで腕を振るったシェフを迎え、おにぎりにメキシカンテイストを加えたメニューなど、オリジナルな内容になっています。
そしてコーヒーギーク(コーヒーオタク)が満足するコーヒー。コーヒーはパートナーシップを結んでいる日本全国のコーヒーロースターが、豆本来の味を最大限に引き出すように丁寧に焙煎しています。
三つ目はミートアップ(交流会)のイベントやワークショップを開く予定です。たとえばスーパスターのパリスタを招いたりすることで、コーヒーギーク以外のお客さんが集まりやすくなることを考えています。
そのほかに社会支援もコンセプトのなかにいれています。障がい者への経済的な自立を支援する「SELP」と連携、コーヒー豆の梱包をお願いしています。購入金額の一部が経済援助につながっています。



■少ない予算でPRを効率化するために何をすべきか?

ーーPRについてはどう考えていますか?

ケビン 予算が少ない場合、PRを効率的にやらないといけません。スタートアップ企業の友人たちと協力しあったりしています。大切なのは、自分たちの何がメディアの取材に値するかを理解することです。そしてユニークな部分をうまくパッケージして伝えます。

もし特徴的なことが見つけられなければ、自分たちで作ることもできます。僕たちはやりませんが、たとえば一杯1万円のコーヒーを出してみるなどです。実際に売るための商品というのではなく、PRとして自分のお店を有名にするために、大きな出来事を打ち上げてみるのです。

アルヴィン SNSではインスタグラムやフェイスブックですね。メインはインスタです。

ケビン インスタで重要なのは「テーマをいかにうまく作るか」です。テーマはできるだけ細かく設定したほうがいい。いま僕たちのインスタでは、世界中の色々なカフェやロースターを紹介しています。旅行の時に訪れたコーヒー屋さんなどです。僕たちと提携していないお店もありますが、別に構いません。写真で気をつけているのは、角度、光の当て方、フォーマットなどの統一感です。その統一感にひとは惹きつけられるのです。

アルヴィン 今後はインスタライブや360度パノラマなども考えています。

ーーこれまでのトライアルのなかで、方針変更したことはありますか?

ケビン もちろん失敗もあります。コーヒーを淹れるためのスターターキット(器具)を販売したのですがまったくダメでした。

アルヴィン シェアハウスとコワーキングスペースでコーヒー豆と並べて販売したのですが、スターターキットは誰も買いませんでした。

ケビン コーヒー豆を選んで買うようなひとはスターターキットをすでに持っている。一方、コーヒーの初心者は家でコーヒーを淹れない。コーヒーキットの販売はすぐにやめました。
(次回・後編に続く)

「コーヒー界のグーグル」が起こす、IT目線の生産性革命(中編)/ABC

《加藤陽之/HANJO HANJO編集部》
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