製造工程の見える化&カルチャー化……劇場型で魅せる飲食店 | RBB TODAY

製造工程の見える化&カルチャー化……劇場型で魅せる飲食店

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女性客で賑わうカフェの売れ筋はホットチョコレート
  • 女性客で賑わうカフェの売れ筋はホットチョコレート
  • 元は倉庫だった建物を上手く活かし、ファクトリーが見える店づくりを行う
  • ワークショップが開かれる2階のガラス張りのテーブルからは、1階のファクトリーが見える
  • ダンデライオン・チョコレート・ジャパン代表取締役の堀渕清治氏
【記事のポイント】
▼職人のこだわりが受け高額でも売れるクラフトムーブメント
▼クラフトムーブメントの安心感を製造工程の見える化で強化
▼工房体験で店としてのカルチャーを心に焼き付け、リピーターを獲得


■こだわりが受け、高額でも売れていく「クラフトムーブメント」

 カカオ豆の選別から製造までの全工程を、ショコラトリーが単独で手がける高級チョコレート「Bean to bar」(ビーントゥバー)。別名クラフトチョコレートとも呼ばれる、このムーブメントはアメリカで生まれ、日本でも一躍注目を集めている。

 東京・蔵前に2016年2月にオープンした「ダンデライオン・チョコレート」も、そんなBean to barを追及している店舗だ。1階にはファクトリーと店舗を、2階に喫茶店をかまえ、その製造工程が垣間見える店舗として人気を集めている。

 ダンデライオン・チョコレート・ジャパン代表取締役の堀淵清治氏によると、Bean to barは「クラフトビールやサードウェーブコーヒーなど、クラフトムーブメントの一連の流れの中にあるもの」だという。大手メーカーのチョコレートは、カカオ豆をベースにカカオバター、乳化剤、砂糖などを原料にして作られるのが基本。だが、ダンデライオンのチョコレートは、シングルオリジンのカカオ豆とオーガニックのサトウキビ糖のみで作られる。

「もっとも、小ロット生産のチョコレート作りは、簡単なようでいて並大抵ではありません。焙煎の機械もコーヒー豆用に作られたものを改造する必要があった。そもそも直接、カカオ農園で豆を買い付けることから始めるわけですから、手間もコストもかかっています」

 ダンデライオン・チョコレートでは毎年、ソーシング・レポートを発行している。グアテマラ、エクアドル、ベネズエラなど、世界各地の農園で、どれほどの量のカカオ豆をいくらで買い付けているのか、仕入れ状況すべてをオープンにしているのだ。仕入れ先や量を明らかにすることで真似される危険性もあるが、そこは「真似しようと思ってもなかなかできない」という自信の裏返しでもある。

 何より、Bean to barは使用するカカオ豆によって味や香りが大きく異なり、気候や焙煎、砂糖を入れるタイミングによっても味は左右される。つまり、カカオ豆の個性が大きく影響してくる商品なのだ。この面白さが同店のファンを増やす要因の一つになっている。


■製造工程の見える化で、ものづくりが一つのカルチャーになる

 カフェを併設したファクトリーを作るにあたり、その立地に選ばれたのが職人が多く、ものづくりの街である蔵前だった。元になった建物は倉庫で、1階の床や2階の天井、窓枠などは、以前の造りがそのまま活かされている。2階の天井は、富岡製糸場にも見られるトラス式構造。三角形に組まれた白塗りの柱が、どこか昔ながらの工場のような雰囲気を醸す。

 2階にあるワークショップのテーブルはガラス張りになっており、1階でチョコレートプロダクションスタッフが作業を行っている様子を見学できるという仕組みだ。

「大量生産・大量消費が当たり前の世の中では、自分たちの口に入るものが目に見えないところで作られている。果たしてそれで良いのか、というシンプルな発想がクラフトムーブメントの原点です。そのため、製造工程を透明化して見せることを大切にしています」

 美味しくて体に良く、安全な食物を食べるというオーガニックの文化は、北カリフォルニアの先進的な風土から生まれた。アメリカで42年間暮らした堀淵氏は、そうしたカルチャーに馴染んでいたからこそ、Bean to barをいち早く評価できたのだろう。

 ダンデライオン・チョコレートのファクトリーでは、カカオ豆の選別、焙煎、磨砕、調合、成形、ラッピングまでの工程を行っている。作業終了後の工房内を見学できるファクトリーツアーも実施し、チョコレートについて学ぶクラス、チョコレート製造体験ができるクラスも用意した。

 1階のスタンドでは、ホットチョコレートを飲みながら、工房の奥を眺めている客も多い。物を作る工程には、人の関心を惹きつける何かがあるようだ。

「何より、お客様にとっては、チョコレートがシンプルに作れることに驚きと発見があるのだと思います。工房にカフェを併設することで、表面的な格好の良さだけではなく、カルチャーとしてのBean to barを知って貰いたいですね」

 例えば、日本には昔から豆腐屋や饅頭屋のように、店で手作りした商品を売る文化がある。しかし、それが今の形で生まれ変わったことに価値がある、と堀淵氏は言う。

「ぜひ、カルチャーとして根付いていって欲しいです」

 製造工程を見せることは、職人の顔が見えることの安心感と品質への自信をアピールすることにつながる。その上で、その工程を眺めることには、パフォーマンスとして人々を魅了する何かがあることは間違いない。リピーターとなるファンをつかむ上では、これ以上ない演出といえるだろう。アメリカに発して、日本を魅了しているクラフトムーブメント。そこには製造工程の見える化による劇場型演出との相性の良さが感じられる。

~劇場型で魅せる飲食店:2~製造工程の見える化&カルチャー化

《斉藤裕子/HANJO HANJO編集部》

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