異業種からの管理職採用は穴埋めにあらず | RBB TODAY

異業種からの管理職採用は穴埋めにあらず

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社会福祉法人あかねでは介護福祉施設やデイサービス、高齢者向けマンションなどの福祉事業を展開
  • 社会福祉法人あかねでは介護福祉施設やデイサービス、高齢者向けマンションなどの福祉事業を展開
  • 経営管理本部人事マネージャーの中尾公則氏
【記事のポイント】
▼中小企業が規模拡大する際に不足するのが管理職
▼多様な価値観を持つスタッフの管理には、1対1のマネジメント能力が必要
▼営業職が持つコミュニケーション能力で、現場の信頼を勝ち取る


■規模拡大とともに不足するマネージャー人材

 看護師や介護士といった福祉関係の業界は、比較的労働の流動性が高いとされる。働きやすい環境、より待遇のいい事業所を求めて転職を繰り返すスタッフもいる。そこで、問題になるのが管理職の不足だ。

 小規模の事業所や施設であれば、経営者がマネージャーを兼ねることもでき、大きな問題にはならない。しかし、規模が大きくなると、どうしても施設ごと、グループごとのマネージャーの存在が必要。現場スタッフの流動性が高く、キャリアパスが十分に整備されていなければ、ベテランや幹部の育成は難しい。

 兵庫県で介護福祉施設を運営する社会福祉法人あかねも、そんな問題を抱えていた事業者のひとつ。正社員は300名、パートは450名。県内に複数の施設を展開しているが、特別養護老人ホームを新たにオープンするに至り、管理者の不足が問題化した。

■1対1のマネジメントができる人材が必要だった

 かつて、あかねは理事長のトップダウンで、スタッフの人事管理に大きな問題はなかったという。しかし、入居者やスタッフ、施設数が増え、理事長の世代交代もあったことから、「以前のやり方には限界を感じるようになった」と、経営管理本部人事マネージャーの中尾公則氏は話している。

 従来は上からの意思や方針を、下へうまく流すようなマネジメントを中心に考え、そのようなマネージャーを採用、配置していた。しかし、それでは多様な価値観を持ち、福祉や仕事に対するモチベーションもさまざまな現場スタッフの管理は難しい。

「重要なのは、上からの大方針を押さえつつ、スタッフ個人のスキルを活かした指導ができる能力です。1対nではなく1対1のマネジメントができる人が必要でした」

 このような人材は、スタッフの中にもいるだろうし、プロパーがマネージャー、管理職へとステップアップするのが理想である。実際、そういうマネージャーも存在するが、介護への思い入れが強く、資格と職能をベースに仕事をしているスタッフは、管理職やマネジメントに興味を抱かないことも多い。


■新施設を異例に低い離職率で稼働

 これまで、あかねでは人材会社やハローワークを活用しながら、外部の人材からマネージャーを探していた。しかし、新しい施設長に就任した若林浩司氏は、ダイレクトリクルーティングで採用した人材。以前はあかねと取引のあった会社の営業マンだった。では、なぜこのような従来にはない人材を採用したのか? その理由の一つが看護師の定着率を上げること。注目したのは若林氏の、1対1のコミュニケーション能力だった。

 当初、若林氏はとくにポジションを決めず、現場の看護師をまとめる仕事をしていた。その中で、かつて営業として磨いたコミュニケーションスキル、顧客や相手(この場合、看護師、介護士)の考えを読む力を発揮し、単なる上意下達ではなく、上と下の調整役として現場からの信頼を得ていったという。

 新しい施設の施設長に任命されると、若林氏は月1回のスタッフ面談、情報共有のしくみなどを整備しつつ、スタッフとのコミュニケーションを積極的にとっていった。その効果はほどなく現れたという。通常、新しい施設というのは3年くらいは人の異動、転職などでバタつくのだが、この施設においては離職率が各段に低く抑えられた。スタッフのモチベーションも上がり、一般スタッフの中から4人のリーダーが育ち、彼らをマネージャー候補とする下地も作ることができた。

 このような成功を収めた背景には、異業種から人材を受け入れるにあたって、経営陣による柔軟な対応もあったと中尾氏は話す。

「外部からの人材を活用しようと思ったら、まずその人のスキルを活かせるような環境づくりが重要だと思います。ポジションだったり、報酬だったり、前例がなくても会社として調整できる柔軟性は必要です。そのためには、足りない人材、抜けた人材の穴埋めと考えるのではなく、企業や組織として足りない部分を伸ばす考え方をするようにしています」

 人材不足や早期離職が問題となる中、社員を育成するには、今までのような現場たたき上げとは別の視点を持つ人材も必要となる。営業職でコミュニケーション能力を磨いた若林氏が、介護施設の離職率を変えたように、異業種のマネジメント人材を外部から招くことも選択肢の一つとなりそうだ。特に、あかねのように規模拡大していく中小企業には、やがて従来にないスキルを持つ人材が必要になるステージが訪れる。そのとき、どんな人材を雇用するかで、その後の成長は大きく変わることになるだろう。

【プロ人材と地方企業:3】異業種からの管理職採用は穴埋めにあらず

《中尾真二/HANJO HANJO編集部》

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