【ITで攻めの農業】年間売上100万円超、農家の太陽光発電 | RBB TODAY

【ITで攻めの農業】年間売上100万円超、農家の太陽光発電

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自動制御でモジュールの角度を変え、状況に応じて光を当てることが可能
  • 自動制御でモジュールの角度を変え、状況に応じて光を当てることが可能
  • ソーラーシェアリング設置準備中の耕作地
  • 自然エネルギー信州ネット理事で、株式会社ガリレオ代表取締役の合原亮一氏
【記事のポイント】
▼初期コストは最低1500万円、約10年で回収可能
▼ソーラーシェアリングは水田のような平たい耕作地と相性が良い
▼営農の効率化やIoT化などの付帯効果も魅力


■農業に新たな収益構造をもたらす

 作物を育てている田畑の上に太陽光発電システムを設置し、農業と発電事業を同時に行う「ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)」。収益性を高めることで農家の担い手不足や耕作放棄地の問題を解決し、風雨から田畑を遮ることによる効率的な営農が期待できるなど、近年では新たな“攻めの農業”の形として注目が集まっている。

 長野県上田市で農業を営む合原亮一氏は、そんなソーラーシェアリングに3年前から取り組んでいる農業従事者だ。”自然エネルギー普及モデル”を育むべく設立された「自然エネルギー信州ネット」の理事を務め、再生可能エネルギーの導入支援を行うガリレオの代表取締役を務めながら、自らの耕作地を所有。16年6月には約3000平方メートルの水田のうちの約1500平方メートルに、太陽光パネル672枚に及ぶソーラーシェアリング設備を完成させた。

「ソーラーシェアリングを導入する手続きとして、農業委員会の認可を取る必要があるのですが、私の場合は1年以上かかりました。現在では3ヶ月程度で認可が下りるのですが、当時は前例がなかったため、長くの時間を要したわけです。電力会社に依頼しても田圃の中に電柱を立ててくれないなど、いろいろな試行錯誤がありましたね」

■平な耕作地と相性のよいソーラーシェアリング

 ソーラーシェアリングはさまざまな耕作地に設置可能だが、13年4月に農水省が発表したソーラーシェアリングの指針(支柱を立てて営農を継続する太陽光発電設備等についての農地転用許可制度上の取扱いについて)を見た合原氏は、「ソーラーシェアリングを導入するなら水田がいい」と考えたという。その理由は採算性だ。

「畑には凹凸があるため、太陽光パネルを土地の形に合わせて設計しなければなりませんが、水田の場合は地面が真っ平らです。設置も楽で『どこにでも付けられるな』と思いました。ただ、水田は比較的多くの光が必要なので、自動制御でモジュールの角度を変えて、状況に応じてより多くの光を地面に当てられる仕組みにしています」


 なお、ソーラーシェアリング導入に必要なコストについては、「作物がどれだけの日照量を必要とするかで変わってきます。50キロワット程度の出力であれば、最も安い場合で1500万を切るぐらいでしょうか」とのこと。合原氏の水田では実験的に画像撮影機能などの設備を設置したため、導入コストは1700万円とやや高い。ただ、一般的なソーラーシェエアリングで約10年、合原氏の水田でももう数年すればコストは回収できるという。1年間で想定している売電収入は100万円超。自動制御システムの採用で発電力は落ちているものの、「固定型で設置している他の発電に比べても、85%程度の発電量がある」という。

■営農そのものにも相乗効果のある”攻めの農業”

 では、ソーラーシェアリングの導入で注意すべき点とは何だろう。これについて合原氏が強調するのは光や雨をできるだけ均等に当てるために「幅が狭いモジュールを使ったほうが良い」と話している。また、風や地震で倒れてしまわないように、「地盤が弱いところは器具を深めに設置する」など強度の重要性についても言及していた。撤去命令が出る可能性を踏まえた農水省の指針では「支柱は簡易な構造で容易に撤去できるものであること」となっているとはいえ、そこはある程度の強度が不可欠なようだ。

 なお、ソーラーシェアリングを行っている農地では、光をさえぎることで温度が下がる。これにより、「結果的に農作物のできが良くなる」、「暑い時期の農作業が楽になる」、「畑ではパネルのある箇所に雨が直撃せず種が流されにくい」といった効果が生まれていると合原氏は指摘する。また、意外なメリットとして、“農地のインターネット化”にも期待ができそうだ。従来は農地には電源がなかったが、発電用の電柱を介して電線やネット回線を引き、作物の生育状況を遠隔監視するといったIoTの可能性が見えてくる。

 ソーラーシェアリングでは農業と発電事業を別物と捉えず、相互の調和を図ることが成功のポイントとなるだろう。売電による収益だけでなく、作物の高品質化、作物管理の効率化など、営農そのものにもたらすメリット。それは特に自らが田畑に立つ中小の農業従事者にとって、恩恵をその身で実感できるのが嬉しいところだ。これをIT化が進む“攻めの農業”にぜひとも取りいれたい。

~ITで攻めの農業:2~年間売上100万円超、農家の太陽光発電

《本折浩之/HANJO HANJO編集部》

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