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既存技術の異業種への応用が新たな価値を生む

ビジネス 経営
極細糸の開発・製品化で注目の佐藤繊維は、メーカーの域を越えてセレクトショップもオープン
  • 極細糸の開発・製品化で注目の佐藤繊維は、メーカーの域を越えてセレクトショップもオープン
【記事のポイント】
▼高度成長期の価値観=大量生産・大量消費の発想は時代のニーズに合わなくなっている
▼既存技術の異業種への応用が新たな価値を生む
▼ジャンルの越境、シェアリングといった関係性の再構築が必要


■大量生産・大量消費のものづくりからの脱却

 日本のものづくりがどのような変革に迫られているか、繊維産業の栄枯盛衰の歴史をひも解くとその一端が見えてくる。そもそも、日本の繊維産業は明治維新の文明開化を機に大きく発展。主要輸出品目に名を連ねるほどの一大産業へと成長した。

 やがて、2度の世界大戦を経て高度経済成長期を迎える頃には、人々の服装が和装から洋装へと様変わりしたほか、オーダーメイドから既製服へと需要が大きく変化。国内需要が大きく拡大し、繊維産業の繁栄を後押しした。旺盛な消費意欲に対応するため、良い製品を安く、大量に生産するという考えが主流となっていった。

 しかし、いわゆるバブル経済の崩壊により国内需要が冷え込むと繊維産業は一気に低迷。大手企業を中心に円高等を背景とした生産拠点の海外移転が進む一方、海外からの安価な製品輸入も加速し、国内の繊維産業は競争力を失い、衰退の道をたどるようになった。ここに、大量生産・大量消費のものづくりは終焉したといえる。

 価格競争では大手資本や海外勢に太刀打ちできない――。そんな時代の変化にあって成功しているのは、価格ではなく価値へと目を向け、製品の市場競争力を高めた中小企業だ。繊維メーカーの佐藤繊維は世界中でも他に真似のできない極細糸の開発で、国内外の有名アパレルブランドから次々と注文を獲得している。


■異業種への応用で既存技術が新たな価値を生み出す

 本特集ではこのような取り組みに“ポストものづくり”として注目してきた。三条特殊鋳工所によるB to C向け製品の開発や、東北工芸製作所によるアニメコラボもその一つ。ここ数年の製造業における動向を見渡せば、このような事例は決して少なくない。

 例えば、アニメ業界では数年前から、異業種とのコラボレーションによるビジネス展開が積極的に行われている。ファッションや飲食品をはじめ、中には自動車メーカーとのコラボで話題を集め、アニメ業界の最大級のイベント「Anime Japan」では、毎年、さまざまな商品がラインアップされている。

 特に、伝統工芸とのコラボは大きく広がり、16年には「あらいぐまラスカル」×「香川漆器(香川県)」の小皿(朱Ver./黒Ver.)をはじめ、「おそ松さん」×「京友禅(京都府)」のハンカチ、「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」×「京くみひも(京都府)」のストラップ(鉄華団Ver./ギャラルホルンVer.)、「装甲騎兵ボトムズ」×「信楽焼(滋賀県)」の徳利&お猪口セットなど、さまざまな商品が登場した。

 また、伝統工芸の活躍の場を広げるという点では、ほかにもさまざまな事例が見られる。福井・鯖江では伝統産業の眼鏡フレームをアクセサリーに応用した「sur(サー)」ブランドを展開。江戸切子の工房の熊倉硝子工芸・華硝と有田焼の辻与製陶所 与山窯は、有田焼の本体に江戸切子の傘を乗せたランプを開発した、伝統工芸同士のコラボだ。

 最近であれば16年2月に開設された「ファイナンセンス」が話題を呼んだが、これもポストものづくりの一つの形といえるだろう。世界的に知られるデザイナーの佐藤オオキ氏が“デザイン”から始まるモノづくりを提案し、“クラウドファンディング”を通じてファンを呼ぶ。このようなキーワードは、他にも自社ブランドや異業種参入など、まだまだ存在しているだろう。では、どうすればポストものづくりは成功するのか?

 戦国BASARAでのコラボ相手を巻き込んだ告知、鋳物ホーロー鍋「ユニロイ キャセロール」の「レッドドット・デザイン賞」受賞、バラク・オバマ氏が着用していたカーディガン。やはり、何が分岐点となったかを考えると、PRの要素は外せない。一般の中小企業には敷居が高そうに思えるが、東北工芸製作所が県のセミナーで担当者と出会ったことを考えれば、良い機会、良いコンテストにいかにポストものづくりをぶつけるか。そこまでを含めた計画を立てられれば、チャンスは十分に残されているだろう。

~ポストものづくり時代:5~低成長時代に生き残る戦略

《HANJO HANJO編集部》
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