世界100カ国で「梵」が成功した理由 | RBB TODAY

世界100カ国で「梵」が成功した理由

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カナダ・バンクーバーでの日本酒展示会にて説明する加藤代表
  • カナダ・バンクーバーでの日本酒展示会にて説明する加藤代表
  • KLBDコーシャー認定を受けた際に参列したイスラエル建国記念日のレセプション
  • 安倍首相の中東歴訪に同行し「梵」を振る舞う加藤代表
【記事のポイント】
▼年間180日を出張先で過ごす経験から「現地で取引先と会うことが重要」
▼偽造品を防ぐためにも商標登録の登録は不可欠
▼パッケージデザインの工夫で消費者の理解を促進


■現地に赴き、現地語でコミュニケーション

 ロンドンで毎年開催される世界的ワインコンペ「インターナショナル ワイン チャレンジ」において、07年から日本酒部門が設置されるなど、海外の酒類市場において日本酒の存在感が高まっている。現在、国内の日本酒製造業者のうち、輸出に取り組んでいる企業は全体の4割以上。この10年で海外での日本食レストランも3倍に以上増えており、今後の日本酒産業にとって、海外市場は大きなマーケットとなる。

 しかし、世界で“SAKE”を展開するための方法論は未だ確立されておらず、日本酒製造業者が手探りで進めているのが現状だ。世界100以上の国や地域で商標登録を受け、海外コンペで高く評価されている「梵(英語表記は『BORN』)」を展開する加藤吉平商店の加藤団秀代表は、「実際に現地に赴き、現地の言葉で話し合うことが大事です」と語る。

「現地のソムリエの方、レストランオーナー、リカーショップのオーナー、スタッフの方々と話し合いをしながら、少しずつ市場を広げていくことが最も大切です」

 そのため、加藤代表は年間50回ほど海外に赴き、180日程度を出張先で過ごす。たとえ英語が通じやすい国であったとしても、現地の通訳を雇い、現地語でコミュニケーションを取っているとのこと。日本食を含む現地の食と、同社の提供する日本酒が最大限に調和するように綿密なケアを行っている。

 その上で同社では、海外での取引先となるディストリビューターやレストラン関係者に対して、福井県鯖江市にある酒蔵への訪問を積極的に受け入れている。言葉の異なる取引相手との信頼関係の構築が、同社が各国で成功している大きな要因となっていることは間違いない。

■海外戦略では商標登録と安全性が重要

 加藤代表が海外進出に欠かせないと語るのが商標登録。「商標登録できない国や地域には絶対に輸出をしません」と話す。商品が人気を集めるとともに、その偽物が流通するリスクも高まる。その際には、現地のパンフレットなどに商標登録の写しを載せることが、大きな抑止効果になるという。

 同社では「梵(BORN)」ブランドのほか、「夢は正夢」などの主力ブランド名についても商標登録を進めている。製造業者にとってコスト負担となる商標登録だが、海外事業においては必要不可欠なのだ。


 一方、安全志向の国際的な流れについて、「キーワードとして、これからは“美味しい”よりも“安全”が一層大事になるかもしれません」と指摘する。同社ではロンドンに本部を置く「コーシャ認証(ユダヤ教の教義に則った安全な食品であるという認証)」の機関であるKLBDの認定を全商品で取得。「誰が口にしても安全な食品」との意味合いが強い認証を取り、認定マークをラベルに含めることで、各国の消費者からの信頼感を獲得している。

 さらに、海外展開の際のパッケージへの取り組みとして、意図的に行っているのが色のバリエーションだ。味わいの傾向に合わせて瓶の色を変更。これによって、見た目で商品が分かるようになり、「Black BORN please」や「Gold BORN please」などと、現地では各色でのオーダーを可能にしているという。

 また、海外消費者の好みの分析から、ラベルは日本的なデザインよりも、高級感があるデザインに。素材には和紙以外にもアルミやプラスチックを採用しているが、そこには「冷やして飲んでも大丈夫ですよ」とのメッセージが込められているという。

■「地元の誇り」と言われる努力

 38年前に「梵」の英語名を「BORN」にした理由について、「響きが良く、フランス語の『セ・シ・ボン(素晴らしい)』にも繋がる。さらに、お酒を飲んで頂いた方に『輝く未来が生まれる』という意味を掛けました」と話す加藤代表。

 同社の日本酒は15年だけでも26もの賞を受賞し、まさしく世界的な日本酒メーカーとして評価されている。しかし、「究極的に大事なのは、半径10キロから15キロ圏内の地元のみなさんに『地元の誇り』と言われる商品を作る努力を続けること。日本で見向きもされない物が、世界で売れるとは考えにくいですから」と加藤代表は明言する。

 福井県鯖江市から世界へ“SAKE”を届ける同社。品質の追及とともに、現地で望まれていることを熟知し、細やかな工夫の数々を打ち出し続けている加藤吉平商店に倣うこと。それは、日本酒製造業者のみならず、海外市場での展開を志す各企業にとって、大きな成果をもたらすに違いない。

~Sakeの海外戦略:4~世界100カ国で「梵」が成功した理由

《本折浩之/HANJO HANJO編集部》

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