“大砲”よりも“機関銃”……アニメビジネス×地域活性化を成功させるには | RBB TODAY

“大砲”よりも“機関銃”……アニメビジネス×地域活性化を成功させるには

エンタープライズ その他

アニ玉祭総合プロデューサー 柿崎俊道氏
  • アニ玉祭総合プロデューサー 柿崎俊道氏
  • 「秘密結社 鷹の爪」
  • テレビ埼玉 営業局営業部長 高橋英彦氏
  • 「パンパカパンツ」
  • 株式会社DLE 代表取締役 椎木隆太氏
  • アニ玉祭のステージ会場の様子
  • アニ玉祭に登場した「頭文字D」の痛車
  • 「大洗あんこう祭」で提供された飲食物。アニメの世界感を表現したネーミングとなっている
 経済産業省 関東経済産業局は、千葉県・幕張メッセにて「地域におけるアニメビジネスの可能性」と題するセミナーを開催した。経済産業省では、各地域内の放送局と中小アニメ制作会社が協働でご当地アニメを制作することによって、2次利用ビジネスによる地域活性化や交流人口の増加を目指している。

 同イベントには、100名近くものアニメコンテンツ制作会社やテレビ局、地方自治体が参加。当日は、地域アニメビジネスに携わる3名から、事例を交えながら、地域発信のアニメビジネスを推進するポイントが紹介された。

 まず登壇したのは、アニメイベントのプロデューサーとして活躍する柿崎俊道氏。柿崎氏からは、2015年10月17日にさいたま市・ソニックシティで開催された「第3回 アニ玉祭(アニメ・マンガまつりin埼玉)」が紹介された。同イベントには約32,000人が来場し、ステージ会場では歓声による地鳴りを感じるほどの盛り上がりを見せたという。

■地域とアニメ「世界観」を結びつける
 当イベントでは、”アニメ”と”観光”をテーマにしたとのこと。会場は、アニメ会社が集まる「アニメ・キャラクターゾーン」と各市町村が集まる「地域観光ゾーン」が設けられた。「アニメ・キャラクターゾーン」では声優によるトークショーや握手会が開催されたほか、走り屋を描いたアニメ「頭文字D」の痛車を展示したり、異世界での自衛隊の活躍を描いたファンタジーアニメ「GATE」とコラボレーションするように、自衛隊に来てもらったりしたとのことだ。

 柿崎氏によると、「自衛隊が来るとファンは大盛り上がり」とのこと。「本物の自衛隊がなぜかコスプレイヤーに見える」らしく、ファンに好評だったとのことだ。30代~40代をターゲットにしたため、”萌え”ではなく、”メカ”をコンセプトにしたという。”メカ”というコンセプトに基づいてアニメの世界感を実世界に表現したことが、イベントを成功に結びつけたポイントのようだ。

 これと関連し、アニメの世界感を表現した飲食物が好評を博す場合も多いようだ。例えば、2015年11月15日に茨城県大洗町で開催された「大洗あんこう祭」。このイベントでは、大洗が舞台のアニメ「ガールズ&パンツァー」に関する飲食物が提供された。例えば、「あひる戦車コロッケ」「バレーボールたこ焼き」などである。アニメを知らない人からするとどのようなものかイメージがつかないが、柿崎氏いわく、「分かる人には分かる、ファンなら大喜びする」とことだ。

 アニメビジネスを進める上では、”アニメ権利元”、”ファン“、”地域”の3者が密接に関わることになる。この内アニメ権利元は、アニメ制作委員会やアニメ制作会社、原作者などに分けられ、関係者が非常に多い。このため、アニメを活用したい地域の企業や自治体からすると、これらの関係者の違いが分からず、どこに話を持ちかけて良いか分からないケースが多いという。

 そこで活躍するのが、柿本氏のような存在であるのだが、さいたま市浦和地区を舞台としたアニメ「浦和の調(うさぎ)ちゃん」では、ある工夫をしたという。それは、「調ちゃんグッズになるシール」を商品に貼れば、アニメ製作委員会への申請は不要で、そのまますぐに商品を販売できるというものだ。

 シールを商品に貼れば、浦和の調ちゃん製作委員会から販売許可を得たことになり、許諾申請や問い合わせは一切不要となる。このシールは、テレビ埼玉のオンラインストアから購入が可能だ。シール10枚を1000円という安価な値段で買うことができ、中小企業でも手が出しやすい。また、キャラクターイラストのデータも提供され、店内POPやチラシ、飲食店メニューなどに自由に使用することが可能だ。同じようなビジネスモデルは浦和のみならず、他の自治体でも行うことが可能であるだろう。

 次に登壇したのは、テレビ埼玉営業部の高橋英彦氏。高橋氏からは、テレビ埼玉と地元のアニメ企業「harappa」が制作をしたアニメ、「浦和の調(うさぎ)ちゃん」が紹介された。2015年4月より6月までテレビ埼玉で放送されたご当地アニメである。1話あたりの放送は5分と短い。8人の女子高生が登場する、ほのぼのとした日常系アニメである。

■ライセンスは使いやすさに工夫を
 キャラクターが8人なのには理由がある。浦和地区には駅名に”浦和”と含まれる駅が8つあるため、キャラクターも8人にしたとのことだ。キャラクラーの名前には浦和の地名が入っており、しかも、声優8人の出身は全員埼玉県であるという。

 また、アニメの描写も埼玉をモチーフにしている。例えば、同アニメのワンシーンに何気なく登場するお菓子。これは、埼玉発祥のフルーツゼリー「彩果の宝石」であるという。こういった地域ならでは描写は、ファンが見つけるとTwitterで発信され、拡散されていくという。このように、随所に浦和や埼玉県ならではの要素を入れることによりご当地っぽさを出すことが、地域発アニメの成功のポイントのようだ。

 内容はご当地っぽさが出ているが、「ビジネスモデルは基本的には他と変わらない」という。つまり、アニメ放送によるスパンサー料やタイアップによるロイヤリティで収入を得るモデルだ。ただし、地元企業には優遇措置が設けられている。タイアップによるロイヤリティは基本5%だが、さいたま市内の企業は3%となっている。なお、アニメの宣伝になる場合は、ロイヤリティをなしにしているとのことだ。

 タイアップで制作された製品は、アクリルキーホルダーやタオルマフラー、Tシャツなどさまざまである。また、HMVや埼玉県牛乳商業組合ともタイアップしている。両社とも、オリジナルの原画を作成し、ポスターなどのプロモーションに「浦和の調ちゃん」のキャラクターを活用したものとなっている。また、埼玉高速鉄道とは、同アニメの登場キャラクターをデザインした切符を制作している。

 同アニメを活用したイベントも開催されている。よこはま市内で行われた観光スタンプラリーはその一例だ。スタンプラリーを回り終えると、同アニメのキャラクターが描かれた絵馬がもらえる内容となっている。スタンプラリー地点として設定されているのは、同アニメのキャラクターを表面に描いたクッキーを販売する洋菓子店など、よこはま市内の各スポットである。

■ライセンスビジネスは最低2年はがまんする
 この洋菓子店では、スタンプラリーのイベント開催時には、売上が大きく増えたという。「スタンプだけ押して、何も買わずに帰るのは悪いという意識が働いたのでは」と高橋氏。スタンプラリーは好評で、2種類100個ずつ用意した絵馬は2日ですべてなくなってしまったとのことだ。

 その他の取り組みとして、特別に描き下ろされたキャラクターイラストの入ったプレミアム商品券を発売。これも好評だったが、「グッズとして買って行かれる方が多く、商品券を使ってくれない」という悩ましい問題が発生しているそうだ。上記の取り組みの多くに共通するのは、ファンのコレクション収集欲をくすぐるという点ではないだろうか。

 高橋氏は、「アニメを用いたライセンスビジネスは、長期的視点で取り組むことが大事。最低でも2年」と語る。実際、同アニメの情報が初めて開示されてから1年が経つが、投資した額の回収はまだ進んでいないとのことだ。最後に、「ビジネスビジネスしてしまうと、『金儲けのためにやっているのか』と思われてしまう。ファンの方は敏感。収益という観点だけではなく、地域貢献という観点を持つことが必要」と高橋氏は強調した。

 そして、3番目に登壇したのは、株式会社DLEの椎木隆太氏。DLEでは、アニメ「秘密結社 鷹の爪」と「パンパカパンツ」のライセンスを有している。アニメの名前は知らなくても、キャラクターは見たことのあるという方も多いのではないだろうか。特に「鷹の爪」については、TOHOシネマズのマナー広告で見たことのあるという方も多いであろう。椎木氏から、同2つのアニメを市場に浸透させた手法について話があった。

■「大砲」よりも「機関銃」
 DLEでは、「私たちは地方から世界的ヒットを狙う」をスローガンとして掲げている。つまり、県内だけではなく、県外収入も狙っていくということだ。そのためには、「あえて狭いエリアで廉価でヒットアニメを作り、それを飛び火させることによってマーケティングエリアを拡大させる」「つまり、局地で熱狂的なファンを作り、SNSで拡散してもらうことが大切」という。

 ただし、ベンチャー企業や地方テレビ局は大きなリスクを取ることはできない。よって、椎木氏いわく「“キャノン砲”ではなく“機関銃”となることが大切」なのだという。つまり、大きな作品をひとつ作るのではなく、小さな作品をたくさん作るとの意味合いだ。イメージとしては、「構想4日、製作3日」という短期間であるとのこと。ただし、「制作期間は短くても、その作品を長く使い続けることが大切」とのこと。長く続けるほどファンのロイヤリティが高まり、収益も高まるのだという。

 また、「企業や自治体に使ってもらうことによって、キャラクターの露出を増やすことが重要。そうすることにより、自社ではお金をかけずに露出を増やすことができる」と椎木氏。その具体的な例が、「鷹の爪」のTOHOシネマズにおけるマナー広告などである。企業や自治体に使ってもらうためには、営業力が大事だと椎木氏は語る。特に椎木氏が重要視としているのは、テレアポだ。

 DLEでは、月に2,000~3,000件のテレアポを行っている。つまり、一日に100本のテレアポを行っている計算だ。これを実現するために、「受話器を置かずに、指で電話を切って、すぐに次の電話かけさせるようにしている」とのこと。「キャラクター使ってくれませんか?なにかお困りのことはありませんか?」というセールストークを繰り返ししているという。ヒットアニメの裏には、並々ならぬ努力が存在していることを感じさせる戦術であった。

 以上、3名による講演があったが、重要となるのは「アニメの世界感を実世界に表現すること」「長期的な視野で、地域貢献という視点を持って取り組むこと」「他企業にアニメキャラクターを使ってもらい、自社ではコストをかけずに露出を増やすこと」であろう。このような取り組みが他の地域にも広がり、各地域の活性化に繋がることを期待する。

アニメビジネスと地域活性化…自衛隊・埼玉・大洗・鷹の爪

《まつかず・HANJO HANJO》

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