人工乳房から人工ボディパーツへ!名古屋・池山メディカルジャパン成長の秘密 | RBB TODAY

人工乳房から人工ボディパーツへ!名古屋・池山メディカルジャパン成長の秘密

名古屋市名東区の池山メディカルジャパンが独自技術を駆使して製造する人工乳房は、その品質の高さから乳がんで乳房を失ってしまった多くの女性患者からの支持を集めている。

エンタープライズ その他
手作り製作が基本
  • 手作り製作が基本
  • 池山紀之社長
  • リアルな耳
  • 指に彩色中
  • 様々な人工ボディパーツ
 色も、形も、触り心地も、本物とそっくりだ。名古屋市名東区の池山メディカルジャパンが独自技術を駆使して製造する人工乳房は、その品質の高さから乳がんで乳房を失ってしまった多くの女性患者からの支持を集めている。最近では、製品のラインナップを指や鼻、耳といった人工ボディパーツ(エピテーゼ)にまで拡充。さらに、中国での事業もスタートさせた。同社の高い技術と、順調に成長を続ける理由とは? その秘密を探った。

■家族旅行がきっかけに
 池山社長が人工乳房づくりを始めたのは2003年のこと。妹の切実な願いを知ったことがきっかけだった。家族で温泉旅行に出かけた時、妹だけがなぜか入ろうとしなかったという。「私、温泉に入りたいけど、入れないの…」。理由を聞いてみると、こんな答えが返ってきた。「乳がんで片方の胸を失ってしまった姿を誰にも見られたくなかったから。女性にとって乳房とは、命と同じぐらい大切なものなの」。

 当時の主流だった人工乳房は、ひと目で作り物と分かってしまうクオリティ。片手で胸を隠しながら、温泉に入るより仕方がなかったそうだ。そんな現実を知った池山社長は、自らの手で人工乳房を開発するしかないと決意を固める。「『モノがこれだけしかないのだから、人の方がそれに合わせろ』という姿勢はとても乱暴に感じました。なぜ患者のニーズに合わせて、より良い製品をつくろうとしないのだろうと…」。

■開発に2年、製作は手作業
 残った胸の型を取り、手作業で精巧に仕上げていくという独自の製法を確立したのは、開発に着手してから約2年後のこと。数種類のシリコーンを配合し、より本物に近い手触りを実現。顔料を使って着色する肌の色も、それぞれの利用者にぴったり合う色を出せるようになった。

 形や色をひとりひとりに合わせたオーダーメイドの人工乳房という、これまでの概念を覆す画期的な商品の誕生に、乳がん患者も注目。2006年の販売開始以降コンスタントに受注を重ね、累計販売数は4000個を数えるまでに。今や業界のトップランナーとなった。

 「現在では、世界中のどんな会社にも負けない人工乳房が製作できるようになったと自負しています。価格は最も低い価格帯のものでも1個30万円と、決して安くはない製品ですが、購入していただいたお客様からは『人生で一番よい買い物ができた』という声をよくちょうだいするほどです」と池山社長は胸を張る。

 同社が製作する人工乳房はすべて手作業。型取りから完成まで2カ月ほどかかるという。現在、外部スタッフも含めて10数人の技術者が働いているが、一人当たりの作業量が限られているため、現行体制では年間1000個の受注で手一杯の状態。一方で、全国の乳がん患者数は年間約7万人。そのうちの6割が乳房を摘出すると言われている。潜在的な需要に供給が追いついていないのが現実だ。



 こうした状況の中、さらなる事業拡大のために欠かせないのが、次代を担う技術者の養成。池山社長は、一般社団法人日本人工乳房協会を設立し、ブレストケア・アーティストと呼ぶ技術者の養成講座(ブレストケア・アーティストスクール)や検定試験を開催している。「患者様のことを第一に考えて事業を続けてきました。技術力を磨くことは大切ですが、それよりも私たちと同じような“志”を持った人材を育てていきたい」と池山社長は考えている。

■欠損した体の一部を製作
 最近では、指や顔面、鼻、耳といったボディパーツ(エピテーゼ)を製作する分野にも進出した。工場の機械で誤って指を落としてしまったり、大きなやけどを負って皮膚がただれてしまったり、さまざまな理由で体の一部を人工パーツで補うことが必要という人に向けての製品だ。最大の特徴はもちろん質感。形も色も肌触りも、本物に見間違うほどだ。そこには人工乳房の製作で培ってきたノウハウが生かされている。

 「患者様の体の一部分に私たちの製品を使っていただけるのは大変ありがたいと思う一方、その方の人生を背負うことになるので、責任の重さも痛感しています。スタッフには、『毎日親戚が増える、やりがいのある大きな仕事』だと声をかけ、仕事へのモチベーションを高められるよう努力しています」と池山社長。

 どん欲に事業規模の拡大を図るその背景には、事業を継続させなければならないという義務感が働いているようだ。「乳房にしろ、ほかのパーツにしろ、一度使っていただいたら、一生涯お客様との付き合いは続きます。うまくいかないからといって、簡単に会社をやめてしまうわけにはいきません」。社会的な存在価値を高める中、同社に求められている役割も日増しに大きくなっているようだ。

■グローバル化は中国市場から
 人材育成と同時に事業発展のカギとなりそうなのが、グローバル化。同社では、中国全土で乳がん患者向けの下着やパットを販売している企業と提携し、中国での人工乳房の販売をスタートさせた。日本の10倍の人口規模を誇る中国は、同社にとっても魅力的なマーケットだ。「当社の品質であれば中国の方にも認めていただけると自負しています。一方で、類似の粗悪品が出回ったり、ノウハウだけ盗まれたりする心配もあるので、情報管理には細心の注意を払いたいと考えています」と池山社長。当面は、中国での受注分も日本国内で製作する予定だ。

 ジャパンベンチャーアワード2011で中小企業庁長官賞を受賞した経験がある池山社長。それも納得の行動力と発想力を持ち合わせた人物だ。「乳がんで苦しむ女性が笑顔を取り戻すお手伝いをしたい」という思いで東奔西走する池山社長率いる同社は、今後どのような成長曲線を描くのだろう。ベンチャー優等生とも言える同社の動向に今後も注目したい。

【地方発ヒット商品の裏側】人工乳房から人工ボディパーツへ、そして世界へ――池山メディカルジャパン

《DAYS》

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