【物欲乙女日記】会田誠に会いに、芸術について語るイベントに行ってみた | RBB TODAY

【物欲乙女日記】会田誠に会いに、芸術について語るイベントに行ってみた

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現代美術家の会田誠氏。
  • 現代美術家の会田誠氏。
  • ゲンロンカフェ入り口。サインだらけ。
  • ゲンロンカフェの中。女性率が高い!
  • こちらがステージに当たる座敷。右から会田誠氏、東浩紀氏、黒瀬陽平氏。ここで3者が飲みながらトーク。
  • グラスが空いたらこんな風にスタッフの方がステージ上で給仕をしてました。
  • サインを壁に描く会田氏。
  • トーク後、酔っ払って座敷に寝転がる会田氏。と、それをケータイで撮る観客たち。
  • 東氏を囲む参加者たち。トーク終了後はこんな風に話ができる場に。
 美術家の会田誠氏が「いいとも」のテレフォンショッキングに出演するという情報をTwitterで得、この一大事を見逃すわけにはいかないと普段見ないテレビの前に張り付いて鑑賞した会田誠ファンの奥 麻里奈です。会田氏が「いいとも」に出演したその日の夜、評論家の東浩紀氏が運営する五反田にあるゲンロンカフェでお2人の対談イベント「危険な闘い――あるいは現代アートの最前線」が開催されるとあって、喜び勇んで行ってきました。

 雑居ビルの5階にあるゲンロンカフェに入ると、開始前からすでに東氏と会田氏、司会の黒瀬陽平氏がステージに当たる座敷の上で雑談をしておりました。「さすが会田さんファン、今日は女性が多い」と東氏。普段はかなり男臭い場なのかもしれません。見たところ50人くらいのお客さんで満員でした。

 ゲンロンカフェでは出演者が座敷で酒を飲みながらトークを繰り広げるスタイルのよう。トーク中も、「ちょっと、日本酒持って来て」などと東氏がスタッフの人に声を掛け、酒が注ぎ足されるシーンが何度もありました。

 トークは東氏や黒瀬氏が現代美術史の流れの中で会田氏を位置づけるという批評的な話から始まりました。オカザキケンジロウ、アサダアキラ……し、知らない人物名がのっけから頻出、アカデミックで難しそうな話…。どうやら美術界での派閥や評価についての話題です。ここにいるお客さんたちはみんな分かっているんだろうか…? 己の不勉強のために肩身の狭い思いが幾度となく胸を去来しましたが、ふと耳を引きつけられるシーンが随所にありました。

 東氏が現代アーティスト村上隆との比較で、「今ふと思ったんですが、村上さんは父性の問題を持っているのに対して、会田さんは母性の問題を持っているように思う」と語ったとき、私の「ユリイカ!」の瞬間が訪れました。“父性”とか“母性”とか言葉は難しいですが、ざっくり言うと要は、村上氏は男っぽいマインドに根ざした芸術家で、会田誠は女っぽいマインドを持った芸術家だということだと思います。

 「女性の真っ赤なルージュとか網タイツとかが嫌い」と言う会田氏は、貧乳が好きなロリコンだと公言し、そのフェティシズムを晒すように美少女を描く作家です。が、会田氏の描く女性には品が感じられるのです。美術の授業のお手本みたいなというか、彫刻みたいに整った描き方といいますか…私は以前から「会田誠は一見下品なように見せておいて、どこか女性をリスペクトしてるよなあ」と思っていました。容易には手を触れられない、侵しがたい神聖な少女の肉体美を、遠巻きに眺めながら描いている感じを受けるのです。一方、村上氏はアキバ系アニメ的巨乳美少女をモチーフにした作品をつくる作家で、そこには女に対する男の征服欲というか、女を手ごめにして支配下に置きたい欲望の対象としての目線を感じます。つまり何が言いたいかと言うと…だから、女性である私は会田作品に共感を持つわけで、会場にも女性の観客が多いのはそういう理由だということです。やっぱり女は男から大切な扱いを受けたいですから。会田氏自身、「自分はオカマみたいなところがあり、女性的なもの(感性)がキモいほど入っている。美しき同性愛者のなり損ない」と語っていました。

 会田氏の作品との最初の出会いはたしか、私が美術部に所属していた高校生の頃、顧問の先生が持っていた雑誌の中だったように思います。作品は『犬』だったか…手足を切断された裸の若い女が犬のように首輪を繋がれて歩いているショッキングな絵です。それからしばらくしてこたつの中でビン・ラディンに扮して「サガサナイデクダサイ」などと言っている何ともふざけた映像作品を目撃して以来、氏の作品と著作物が大好物になってしまったのですが…目の前の生身の氏も終始「くだらない存在としての自分」に徹しており、その一語一句やアティチュードに触れるにつけ愛おしい気持ちが絶えません。

 東氏に促されるままに飲み続け、どんどん酔っ払いの様相を呈しながら発するセリフは「美大をアカデミーというのはおかしい。本来バカ万歳みたいなところ」「英語に不自由している人は日本的なものにこだわるし、不自由していない人は日本的なものへのこだわりがない。それが人間の自然だと思っていて(自分が海外で評価されていない理由もそこだと思う)」「美大は行ってもいいけど行かなくてもいい場所だと思う。中卒高卒で美術家がたくさん出てくる時代を待ってるよ!」etc…。最後に挙手した女性が自分の仕事は風俗業だと述べ、「『灰色の山』(一見、山を描いた墨絵と思いきや、大量のサラリーマンの屍がゴミみたいにうずたかく積み重なっている様を描いた大作)という作品を見て、『これは私のお客さまたちだ! 私は彼らを癒す仕事をしているんだ!』と思って共感しました」と発言。それに対し酩酊しながらぼそっと述べた「芸術家も風俗嬢と似たようなサービス業」というコメントから会田氏の矜持がチラリと覗き見え、制作物だけでなく会田誠全体で芸術家を生きようとする氏の魂のきらめきを見た気がしました。

 トークは3時間にも及び、その後は出演者と観客が肩を並べて話すことができる懇親の場に変わりました。ゲンロンカフェの醍醐味はここにあるようです。が、会田氏は完全に酒が回ったようで、座敷に寝転がったり、会場を千鳥足で回遊したりとカオスな場に……その様子を興味本位にカメラに収めて満足し、私の理想の男性は会田氏のような人だな、と思いながら会場を後にしました。
《奥 麻里奈》

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