【インタビュー】『リアル脱出ゲーム』ヒットの裏側 「みんな物語の主人公になりたい」(後編) | RBB TODAY
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【インタビュー】『リアル脱出ゲーム』ヒットの裏側 「みんな物語の主人公になりたい」(後編)

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SCRAP加藤隆生氏
  • SCRAP加藤隆生氏
  • 『マダム・マーマレードの異常な謎』 (C)ナゾトキネマ「マダム・マーマレードの異常な謎」製作委員会
  • SCRAP加藤隆生氏
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  • 『マダム・マーマレードの異常な謎』 (C)ナゾトキネマ「マダム・マーマレードの異常な謎」製作委員会
  • 『マダム・マーマレードの異常な謎』 (C)ナゾトキネマ「マダム・マーマレードの異常な謎」製作委員会
  • 『マダム・マーマレードの異常な謎』 (C)ナゾトキネマ「マダム・マーマレードの異常な謎」製作委員会
  • 『マダム・マーマレードの異常な謎』 (C)ナゾトキネマ「マダム・マーマレードの異常な謎」製作委員会
 「リアル脱出ゲーム」のみならず、映画『マダム・マーマレードの異常な謎』のように様々なコラボレーション企画を展開してきているイベントクリエイター集団SCRAPの現在。フリーペーパー創刊から10年が経ち、その人気や知名度は1段階上のステージに来ているように見えるが、代表の加藤隆生氏はこれからの方向性をどのように考えているのだろうか。

――今回の映画もそうですが、リアルイベント以外の形でも展開されている今、SCRAPとしては新しい段階に入って来たのかな、と思うのですが、これからについてはどう考えていますか?

加藤:SCRAPとしては何かヴィジョンがあって今こうなっているというよりは、とにかく今できる面白いことを片っ端からやろうということしか考えてないんですよね。「映画つくってみる?」って言われて断るやついないですよね。「やるやる!」っていう話じゃないですか。「本出す?」って言われたら「出す出す!」、「エヴァンゲリオンが組みたいって言ってるけど組む?」って言われたら「組む組む!」組めないっしょ、普通っていう話で。海外進出も、シンガポールの人、台湾の人、上海や北京の人、サンフランシスコの人から「やりたい」って言われたから「いいよ」って言ってるだけで。あんまり自分から何か世界戦略を仕掛けてどーんと面白いことやろうっていうつもりは実はそこまでないんですよね。自分たちの価値を自分たちの場所で高めていけば、それを面白いと思った人たちが勝手にいろんなところに広めてくれたり、次のステージに上げようとしてくれる。だから、僕たちで面白いものをとにかくきちんとつくり続けるっていうことが1つのヴィジョン。「10年後どうなってると思いますか?」って聞かれたら、「面白いものつくってると思います」としか言いようがないですね。

――やっぱりビジネス先行じゃないんですね。

加藤:うん、まあ、そうだね.社員が14人もいりゃあ毎月何千万と飛んでいくわけだから、それなりの経営判断はもちろんありますけど。でも、お金、これ以上あったらどうしよう? 何して遊んだらいいんだろう? と思って。遊ぶ暇もないし、高い車欲しいとも思わないし、旅行もそんなに好きじゃないし。家帰っても別に本読んでるだけなんですよね。あと、携帯ゲーム。…急に暗い話になっちゃいましたけど(笑)。仕事してるときの方がずっと幸せだから。楽しくて楽しくてしょうがないですよ、毎日。アイデアを出して人が反応してくれるっていうのは夢みたいな話だから。

――謎以外にされている計画とかはあったりしますか?

加藤:謎以外で?今ディレクターの1人が謎がつくれて解ける、「パズルガールズ」っていうアイドルユニットつくって育ててますけど…。でも、僕らが一貫してやりたいことっていうのは“物語に入る体験をする”っていうこと。テーマパークみたいに物語的な場所を歩くことはできるかもしれないけど、それは僕は物語に入った体験とは違うと思っているので。

――物語に入る?

加藤:子どもの頃からずっと「物語に入りたい」って強く願ってたんです、本当に。のび太くんが引き出し開けたら猫型ロボットが来たりとか、パズーに女の子が降ってきりとか、「羨ましいな」と思って。むしろ「何で俺のところには女の子が降って来ないのか?」っていう方が不思議だったんですよ。今はもう、女の子も猫型ロボットも現れないなとは諦めてるんですけど、じゃあせめてこの現実世界を少しでも物語にしてやろうとして生きてる。

――それが「リアル脱出ゲーム」の原点なんですね。

加藤:そうだと思います。だから、物語に入るツールとして今僕らが見つけている最大の武器が『謎』なんですよね。それを使って物語体験をさせているということなので、別のツールが見つかったらすぐそっちに切り替えるかもしれない。

――物語体験をする手法が「謎」なんですね、なるほど。そういうインタラクティブな手法を加藤さんは編み出したわけですが、「今後エンターテインメントはこんな風に変わっていくんじゃないか」っていう予測とかはありますか?

加藤:うーん、どうかなあ。僕としては、モテないやつがモテるようになるエンターテインメントがもっとあるといいなーと思ってます。

――へえ、それはどんな?

加藤:男前のやつとか面白いやつとか足が速いやつはモテるけど、謎が解けるやつがモテるっていうのができればすげえ面白いなと思いますね。そういう別の尺度がどんどん生まれて行って、それがエンターテインメントの軸になるのかな。エンターテインメントって、どっかで恋愛(、ひいてはその先にある行為)と繋がってると思うんですよね。恋愛って面白いじゃないですか、一喜一憂したりして。あの感情の軌跡はエンターテインメントの心の動きと同じですよね。恋愛って人間が一番最初にする物語体験だと思う。それに繋がる道筋がもっとたくさんあれば面白いだろうな、と思います。

――いろんなモテ方があっていいんじゃないか、と?

加藤:うん、ヒーローをつくってあげるエンターテインメント。そういう尺度で考えていけば、次のエンターテインメントが何かっていうヒントがひょっとしたらあるかもしれないですね。


 自分の場所で、地道に面白いことをやり続けること。それがムーブメントを起こし、人が人を呼ぶ。10年前、自分から出版社に出向かずに仕事を得ようとしてフリーペーパーを創刊した当時から変わらない姿勢である。イベント開催にあたって有名人を使うのではなく、企画力勝負で人を呼ぼうとしたのもしかり。それは、もともと人だかりができている場所に赴くよりも根気のいる、なかなか貫き通せない行為だ。だけど、本当の意味で新しく、人を夢中にさせるものというのは、そういった原始的なやり方でしか生み出せないのだろう。
《奥 麻里奈》
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