Facebookを活用した総合的な学習……ネット時代のコミュニケーション力 | RBB TODAY
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Facebookを活用した総合的な学習……ネット時代のコミュニケーション力

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  • 新潟大学 教育学部 附属新潟小学校Facebookページ
 筆者が勤務する附属新潟小学校の小学6年総合的な学習において、ネット時代のコミュニケーション力を身につけさせる指導として、Facebookを活用した実践を行った。その実例を紹介するとともに、学校ブログ活動とFacebookページによる児童の発信の違いや、Facebookの年齢制限などについて述べる。

1 SNS利用が当たり前の子どもたち

 今や子どもたちにとって、SNSは極めて身近なものである。中学生、高校生になると、LINEやTwitterはほとんどの子が活用している。小学生においても、ニンテンドー3DSのフレンドコードを利用し、家のWi-Fi環境から情報のやり取りをしている。そして、そこで行われている情報交換が学校での人間関係に及ぶこともある。しかし、その実態は多くの場合、学校の先生や保護者に知られていない。

 子どもたちの生活にそれほど浸透しているSNSについて、何も指導をしないでよいはずはない。学校に携帯電話を持ち込ませなくとも、帰宅後に学校の情報がSNSを通じてやり取りされている現在、学校は、家庭でのSNSを用いた情報のやり取りを禁止したり、管理したりしきれるものではない。それであれば、どうするべきなのか。

2 情報モラル教育とSNS

 学校による温度差はあるが、これまでも「情報モラル」指導というものはなされてきた。小学校段階では、掲示板への書き込みを疑似体験させてその危険性を伝えたり、著作権の指導をしたりしてきた。また、チェーンメールの危険性や、懸賞サイトへの個人情報の登録の危険性などについても、具体的な事例を基に指導をしてきた。そして、これらの指導は一定の効果をあげ、子どもをネット社会の危険から守ってきたと言える。

 しかし、ここ1~2年の爆発的なSNSの普及により、子どもたちのネットワーク上での活動のようすが掴みにくくなった。たとえば、学校裏サイトへの書き込みなどはネットパトロールが巡回して探すことができたが、現在のSNSの制限の中では、児童・生徒がどんなやり取りをしているかはもはや見取ることが難しい。介入することもできないのだから、保護者が管理を強化するか、SNSの使い方を学ばせることが必要なのである。

 保護者が、子どもたちのSNS利用を管理することは一つの有効な方策であるとも言える。学校が保護者に注意喚起を促し、保護者と連携して子どもたちの安全を守ることに取り組むということも大切だ。しかし、単にSNSを禁止するだけや、端末を取り上げるだけといった「管理強化」のみに陥った場合、それは子どもたちの情報リテラシーの育成を遅らせることとなり、いずれ保護者の管理が及ばない年齢になったときに、あるいは保護者から隠れて、リテラシーを身につけないまま、SNSを利用することとなる。

3 Facebookを使った発信活動体験

 そこで、実際にSNSを使ったよいコミュニケーション経験をさせる「モデル体験」が必要となる。その際、どのSNSを活用することがよいのだろう。実際、SNSには色々なものがある。

 今回私は、児童にSNSのメリットやデメリットを教える場合、Facebookを使う選択をした。選択の決め手は、実名制であり、荒らしが少ないことである。匿名のSNSに比べ、書かれている内容はポジティブなことが多く、大人はセルフブランディングに活用している。つまり、子どもたちにSNSの特性を教えるには最適な仕組みである。

 また、Facebookは利用者が多く、コメントをもらいやすい。さらに、「いいね!」ボタンでポジティブリアクションを多くの人からもらいやすい。また、学校のIDを利用することにより、子どもの個人情報を出さずに、教師の管理下において子どもが意見を表明できる。このように、さまざまな条件を考えてFacebookが現在の環境においてはもっとも有効であると考えたのである。

4 Facebookと年齢制限

 Facebookは年齢制限があり、小学生はアカウントをもつことができない。これは、児童の安全を考慮すると致し方ないともいえる。反面、できることであれば、教育利用において、学校の管理下でIDをもてるというサービスがあるとよいと思っている。

 実際、児童利用に特化した「ぐーぱ」(https://www.goo-pa.jp)のように、小学生でも利用できるSNSもある。こうしたサービスも非常に価値があるが、後述するような、「信頼できる大人と交流してアドバイス等をもらう」という活動をするには、やはり、Facebookのような、大人が日常使用しているSNSを利用したい。その点では、Facebookの年齢制限についての今後の動きに注視していきたいと考えている。

5 「SNSで発信しよう!附属小の良さ」

 具体的な事例を紹介する。今回、筆者が勤務する附属新潟小学校で、6年総合的な学習の時間において、4月に「SNSで発信しよう!附属小の良さ」という単元を組み実践を行った。以下に実践の流れを簡単に紹介する。

 Facebookページをつくるきっかけは、学校に来た1通のメールである。「附属小のホームページは必要な情報は網羅されているが、子どもの様子がわからず、学校の良さが伝わりにくい。」というメールである。そのメールを提示し、子どもたちに感じたことを問うた。すると、「確かに、写真が少なくて面白みが無い」「附属小は良い学校だから、もっとわかって欲しい」「自分たちにできるならそれを伝えたい」と言う。

 そこで、児童がブログ形式で更新でき、なおかつコメントももらえるFacebookページを使い、子ども自身の手で情報を発信することとした。発信した記事には、保護者や学校を取り巻く関係者から、肯定的なコメントをいただく。また、よりよい記事や写真にするためのアドバイスをいただく。子どもたちは、そのアドバイスにお礼を書き、アドバイスを参考に、よりよい写真や記事をアップしていくという流れである。

 これらの一連の活動の中で、本物の大人とネットを介したコミュニケーションをすることで、SNSを活用した「モデル体験」を積む。そのことが、ネット時代のコミュニケーションの力を子どもに付けていくことになるのである。

6 Facebookで大人とコミュニケーション

 たとえば、桜の木の見える築山で遊んでいる子どもたちの写真をアップする。すると、それを見たある大人が「写真の構図がいいですね。桜を右に配し、土管の特徴もよくわかります。」「桜も空もきれい。思わず築山にかけのぼったり、土管を通りぬけたりして遊んでみたくなります。とても楽しそうな校庭でうらやましいです。」などというアドバイスをしてくださるのである。

 子どもたちは喜び、「ありがとうございます。次からもよりよい写真を目指します。」「本当に、とても楽しく遊んでいます。」というようにお礼の言葉を交えて返答する。このように、ネットを介した「理想的なコミュニケーション」を体験することができるのである。これらの活動を通して、子どもたちは、「ネットでのコミュニケーションでは、ポジティブな言葉でやり取りをすることが大切だ」ということに気が付いていくのである。

7 学校ブログ活動とFacebookページによる児童の発信の違い

 これと似たような活動に、「学校ブログ活動」というものがある。子どもたちが、委員会の時間などを使って、ブログを通して、学校のよさを発信する活動であり、いくつもの学校で行われている。これも大変有意義な活動であり、学校間での交流などもできる点で大きなメリットがある。

 その一方で、コメントをいただく量が少なく、また、コメントをくれた人の属性がわかりにくいというデメリットもある。Facebookページが「学校ブログ」と比べて、秀でていると思われる点は、SNSの特性として、「属性を明らかにした個人」からコメントがもらえる点にある。また、コメントをもらえなくても「いいね!」を気軽に押してもらえるということである。つまり、外部の人との肯定的なコミュニケーションの頻度が多くなるという点である。

 また、Facebookページによくある誤解に、「Facebookをしていない人は見られないのではないか?」というものがある。これは、間違いで、Facebookページは、Facebookにログインしなくても見ることができる。Facebook上にある普通のホームページと思ってもらえばよい。ログインすれば、「いいね!」や書き込みができるようになるだけで、ログインしなくても見ることができるのである。

8 保護者との連携はやはり重要

 このように、SNSを効果的に使わせ、ネットのコミュニケーションを学ばせることが、今後ますます重要になってくると私は思う。

 しかし誤解してはいけないことは、やはり冒頭にも述べたように、保護者との連携を深め、負の使い方をしないように子どもたちに目をかけていくことも、一方でとても大切なのである。学校の中で、よいSNSの活用経験を積ませながら、そのリテラシーを高める教育的な働き掛けを行うことと、保護者や教員といった取り巻く大人がしっかりと子どもたちを見守ることの両方を行うことで、子どもの安全を守りながら、子どもたち自身に正しい情報発信の仕方や、情報の受け方を身につけさせていきたいものである。

【著者プロフィール】
片山 敏郎(かたやま としろう)
日本デジタル教科書学会会長で新潟大学 教育学部 附属新潟小学校 教諭。

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《片山 敏郎》
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