【インタビュー】ウェザーニューズ…天気予報を動かす人間の五感 | RBB TODAY

【インタビュー】ウェザーニューズ…天気予報を動かす人間の五感

 人間の体の中に蓄積された天気の記憶、その記憶を元にしたこれからの天気の予感。それが巨大なデータとなって集まることで、天気予報における気象技術に変化を与えている。

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ウェザーニューズ取締役の森田清輝氏
  • ウェザーニューズ取締役の森田清輝氏
  • ウェザーニューズ気象予報士の喜田勝氏
  • 【インタビュー】ウェザーニューズ…天気予報を動かす人間の五感
 人間の体の中に蓄積された天気の記憶、その記憶を元にしたこれからの天気の予感。それが巨大なデータとなって集まることで、天気予報における気象技術に変化を与えている。これから雪が「降る」「降らない」といった予感が、ウェーザーニューズが発表した2月6日の天気予報にも生かされた。

 ウェザーニューズでは、気象観測システムによる気象状況に加えて、同社がサポーターと呼ぶ「ウェザーリポーター」の会員400万人が、現地が今どういう気象状況なのかを送ってくるリポートを、最新の予報に反映している。さらに、サポーターが感じるこれからの天気の予感までをも予報に生かしているという。

 気象庁が東京都心でも大雪になると予報した2月6日の天気においても、「大雪にはならない」と、いち早く軌道修正して天気予報を伝えていった。

 人間の五感を生かした“感”測データやこれからの天気の“予感”が、どのように天気予報に役立てられているのか、ウェザーニューズ取締役の森田清輝氏と、予報を担当する気象予報士の喜田勝氏に話を聞いた。

--- 2月6日の天気予報は、気象庁では東京都心も大雪になると予報を出していました。しかし、実際には雪は積もらず気象庁は批判を浴びることとなりましたが、雪の予報というのは難しいものなのでしょうか?

喜田:2月6日の予報に関しては、我々も前日となる2月5日の午前中までは“都心でも積もるだろう”と、大雪予報を出してました。しかし、お昼ぐらいになると気象学的な部分からみても、ちょっと想定していたものと違うな、と感じるようになりまして、もしかしたら“雨よりのストーリー”になる場合もあるんじゃないかと考え始めました。

雨か雪か、気象に携わる者として正直に言うと、当時は五分五分の状況でした。しかし、サポーターの方から送られてくる“体感”に関するリポートでも皆さん「雪にはならない」というものがほとんどだったんです。実際に気象学的にも「雨よりのストーリーもあるな」ということが見えてきたので、我々としては、ここで「大雪」というよりも、むしろトーンを下げた方が、サポーターにとってより良い情報になるのではないかと思い、最終的に下方修正して雨よりのストーリーを出していきました。

--- サポーターが送る情報というのは、天気の様子だけでなく「降りそう」「降らなそう」といった感覚の部分まで集めているのですか?

喜田:天気予報をするうえで一番重要なのは現状を正しく認識することなんです。気象庁にはアメダスがあり、アメダスでこそ全国に約1300ヵ所の観測所がありますが、実は積雪を観測できるのは関東で言えば16ヵ所なのです。観測所付近の様子は判っても、地点間の様子は推測するしかなく、観測所からの情報では凄く粗い予報になってしまうのです。

サポーターから我々に送られてくる情報というのは、刻々と天気が変化する様子をかなり詳細にかつ短期間で送られてくるので、これまでの気象観測とは劇的に違って現在の状況が解るようになりました。さらに、この先どうなっていくのか、「晴れてきそうだ」「雨になりそうだ」というサポーターの体感に基づく予感の部分でも、実は統計的に見えるようになっています。

--- サポーターの五感で感じたこれからの天気の予感というものは感覚的な情報だと思いますが、その情報というのは、どのように位置づけられているのでしょうか。

森田:天気予報を“科学”と“技術”に分けて考えると、“科学”の部分では気象学的な方法論は気象庁もウェザーニューズも変わらないものを持っていて違いはないと思っています。しかし、現状を正しく認識するという“技術”といった面では、これまでの気象技術では観測所間の様子は推測するしか方法がなかったわけですが、我々はサポーターが送ってくる情報によりその間を埋めることができ、圧倒的な数があることでこれまで推測していたものが確実に見えるようになったことが、気象庁とウェザーニューズでは大きく変わってきています。

気象の専門家ではない一般参加者からの情報が正確なのかと、疑問に思われる方もおられるかと思いますが、明らかな間違いは1万通のなかで言うと7、8通です。しかも、サポーターの方が感じる“五感”に基づく予感の部分に関しても、圧倒的な数が集まることで、いままでに見えなかったものが見えるようになってきていますので、これまでの気象技術とは別な次元の考え方として、取り入れていかなければといけないと思っているのです。

--- そのサポーターの五感で感じた予感を、どのように予報に結びつけていくのでしょうか?

喜田:2009年の3月3日は、僕ら気象屋がサポーターに負けた日ということで、ウェザーニューズの歴史に残そうと“敗北記念日”として社内で制定しています。

当時は、我々も大雪の予報を出していて、“東京の都心も降るぞ”ということで、その体制を組んでいたのです。予報を出す側のスタッフとしては“どう見ても雪”“絶対雪になる”と、みんな確信していました。

しかし、実際にサポーターからの体感のリポートを見ると、皆さん“雪にはならない”、“降っても雨のまま”といったリポートがずっと送られ続けていたんです。それでも、僕らは「この後、必ず気温が下がって雪になるんだ。今は、気温が高くてそう感じるのは当たり前、必ず下がるんだ」ということを言い続けて、結局は雪にならなかったんです。

これは、技術的に確立していないものを予報に取り入れることはできないので、正しい判断であった思います。そんな中で、気象学的には正しくても、実際にはそうならないこともあるんだということを教えてくれた出来事で、サポーターの五感で感じた予感を予報に取り入れる方法はないかと考え始めたのです。

翌年の2010年に、サポーターが感じるこれからの天気の“予想”を統計的にまとめたところ、「雨」と「雪」の境目が見えることが解りました。2011年では、これから雪が「積もる」「積もらない」という部分も確認できるのか挑戦してみたところ“いけそうだ!”と手応えを感じました。さらに、2012年になるとリポートの数も増え、積雪が“始まる”“始まらない”という部分まで確認を終え、今年ようやくコンテンツにすることが出来ました。

森田:これは、あくまでも「統計的に言えることはこうでした」というものを“技術”という部分で取り入れたもので、まだ“科学”という話にはなっていません。いままでの気象技術にはないものですが、この発見で気象の世界が変わってくるのかなと感じています。

--- 人間が肌感覚で感じる天気の予感も、数が集まることで価値のある情報となるのですか。

森田:人類が生まれてからここまでのことを考えると、生き残るために「環境にどう適用するのか」というのは生存本能としてあったはずなんです。現代は気象の世界も専門化が進んでいて、トップとなる存在がいてそこから流れてくることに慣れてしまっていますが。人間が元々持っている本能というものがあって、それを大切にしなければならないと我々は考えています。

20年、30年生きていると、その日の天気の移り変わりなどは、その人の経験としてデータベースに残っていると思うのです。このあと雪が「降りそうだ」「降らなそうだ」と感じるのも、その人の経験が元にあると考えられます。あるエリアに住んでいる人の「降りそう」と「降らない」感じる人と変化などを見ていると、気象学的な情報とは別なものとして価値があると思っています。

--- サポーターから送られる予感は、天気予報を決めるうえでどの程度の重要度を持つのでしょうか。

喜田:観測所のデータは精度的にきちんと保証された方法で測っていますので、何処で測っても間違いのないものです。一方で、人のセンサーには誤差があると思いますが、それぞれが感じたままを送ってもらうのが最高のセンサーである思っています。感度のバラツキがあっても数が集まることで、きちんと見えてくるんです。

天気予報は、最終的にコンピューターが決めるのではなく、我々人間である気象予報士が決定しています。サポーターが送ってくれる“感”測データや“予感”が、我々の判断材料の一つとして確実に重要な位置を占めてきていると感じています。もちろん、これまでの気象予報にあるオーソドックスなスタイルの部分をしっかり担当している人間もいますので、そことの合わせ技です。

今回、2月6日の雪の予報に関して正確な情報を出していけたのは、数多く参加してもらっているサポーターの力があったことが大きな要因だと思っています。昨年、参加型気象情報へとリニューアルしたことでリポーターの数も増えた成果が現れたのだと改めて実感しました。
《高木啓》

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