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【FASHION HEADLINE 編集長ブログ】「並び」と「セレクト」

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【編集長ブログ】「並び」と「セレクト」
  • 【編集長ブログ】「並び」と「セレクト」
  • 「MAKERS 21世紀の産業革命が始まる」著:クリス・アンダーソン(NHK出版)
ファッション業界で重要視される基準に「並び」がある。どのブランドと一緒に並ぶのか? 何と一緒に並ぶのか? 誰と一緒に並ぶのか? それは常に「ブランディング」という名のもと、“検討”される。

ファッション誌の編集者、百貨店や専門店のバイヤー、SCのテナントリーシング担当、スタイリスト、広告代理店の営業マン、素材メーカー、テキスタイルコンバーター、みんなこれに頭を悩ませる。80年代後半以降、海外のラグジュアリーブランドがジャパン社として日本に拠点を置き、本国のアプルーバルのもと厳しいイメージ管理を図るようになってから、このわかりやすい「ブランディング」が、「グローバル」という言葉と共に、トレンドとマーケットの同質化を進めた。

クリエイティブの分野ではこの20年、パーツの再構築がテーマとなった。それは音楽でHIPHOPのターンテーブルミックスに始まり、リミックス、サンプリングという手法、コンセプト自体がデザイン、映像、洋服に連綿と受け継がれた。そして2010年以降は、ハイテクとインターネットと結びついて、クリス・アンダーソンが著書「メイカーズ」の中で語るように、新しい産業革命の時代へ向かおうとしている。

おそらく、その流れに最も遅れたのがマスメディアの業界だろう。著作権などの権利関係の難しさから、カットアップやマッシュアップ、サンプリングという手法が、おいそれと既存のビジネスに応用できるわけがなかった。フェイスブックやツイッターなどSNSでのシェアやリツイートが情報を先行し、編集という役割は2chのまとめサイトやツイッターのトゥギャッターなどが、その手法を代用する役割を担ってきた。

WEBの世界にファッション業界で重視される「並び」は無縁だ。ファストブランドの隣にクチュールメゾンの写真が並び、ラーメンの隣に高級バッグの情報が載ることを誰も阻止できない。可能なのは「セレクト」だが、どのブランドやどの商品をセレクトするかという編集視点も、サマリーやTAB、ピンタレストを始めとした新しいSNSにより、今やユーザー主導となりつつある。

そういったWEBでの情報発信のあり方を的確に見ているのが、エディ・スリマンなのだろう。エディに変わってからの「サンローラン」の情報共有のあり方は、革新的だ。現在、ファッションヘッドラインで掲載しているようなニュースや画像を、WEBのニュースメディアに公平に公開、使用許可を与えているメゾンや企業は、まだ少ない。「並び」にこだわらず、情報を「セレクト」する視点をマーケットに渡すというのは、彼自身のクリエイションに対する絶対的な自信であり、新しいパブリックリレーションは、この希有なカリスマの魅力をあらためて知る一端となった。

情報の量と速さはインターネットにつながってさえいれば、すべてに平等だ。そのなかで、ファッションの本来の楽しさが、「並び」より「セレクト」にあることは、ユーザーが一番よく知っている。

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《野田達哉》
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