【インタビュー】ウェザーニューズ社石橋知博取締役……気象情報をソーシャル化 | RBB TODAY
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【インタビュー】ウェザーニューズ社石橋知博取締役……気象情報をソーシャル化

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ウェザーニューズ取締役・石橋知博氏(向かって右)とシステム開発本部長・西祐一郎氏(左)。
  • ウェザーニューズ取締役・石橋知博氏(向かって右)とシステム開発本部長・西祐一郎氏(左)。
  • 開発を担当する西氏は、「毎日集まってくる3万枚の空の写真とリポートを分析し、気象情報として提供するのが『ウェザーニュース タッチ』の使命。今後も使いやすいアプリに進化するように開発を続ける」とコメント。
  • 『ウェザーニュース タッチ』
  • 『ウェザーニュース タッチ』
 スマホアプリ『ウェザーニュース タッチ』を開発・運営しているウェザーニューズは7月28日、ソーシャル機能を大幅に強化した「バージョン 2.0.0」をリリースした。これまでのシンプルな天気予報アプリから参加型の天気予報アプリに進化させた経緯と狙いを、取締役・石橋知博氏とシステム開発本部長・西祐一郎氏に伺った。(後編)

●200万人のデータから天気予報を作る

 ウェザーリポートの会員数は、サービスを開始した2004年から少しずつ増加し、8年経った2012年は約30万人に達した。それが2012年7月28日に『ウェザーニュース タッチ』アプリの新バージョンを公開した途端に、100万人に急増した。8月末ではなんと200万人に達した。

 ここまで増えた理由は、以前は有料会員しかリポートを送信できなかったのが、今回のバージョンアップで無料会員からもリポートを受け付けるようになったからだ。石橋氏は「会員数が増えただけでなく、1日に約5000通だったリポート数も、一気に3万通まで増えた。いままでは、気象に関心が高いユーザーだけがリポートを送ってくれているのかと思っていたが、特別な気象マニアだけではなく、一般のお客さんからも多くのリポートが届いていることに驚いている」と語る。リポートは写真とテキストで送信するのだが、カメラが標準搭載されたスマートフォンの普及率も影響しているのだろう。

 ウェザーニューズはユーザーがリポートを送りやすくするために、さまざまな工夫を凝らしている。その一例が、“ソラミッション”と呼ばれる「お題」。ソラミッションで「花火」や「星空」など、特定の写真を送るように促すと、ユーザーはリポートをしやすくなる。ただ「空の写真を撮って送ってほしい」と言うよりも、目標物を指定されたほうがユーザーの関心も高まる。

 なお、リポートを送ったりソラミッションを行なうと、ユーザーにはウェザーニューズより「感謝ポイント」が送られる。このポイントを2000点貯めると、風速や気温、湿度などが測れるハンディー観測機「ソラヨミマスター」がプレゼントされる。「毎日投稿し続ければ約3ヵ月程度で貯まる」(石橋氏)ポイント数なので、これを目指してリポートに参加しているユーザーも多いそうだ。

 石橋氏は、「日々の気象の変化をリポートとして記録していくことは、自身の体調管理や安全管理にもつながる。そして、その情報をウェザーニューズにリポートすることは、天気予報の制作に参加していること。言い方を変えれば、他人を助けている。これはいわゆる“自助・共助”と言われるもので、船乗りの精神“シーマンシップ”の文化にリンクしている。我々はもともと船舶を相手に商売していたため、基礎となっている企業理念は自助・共助。社員の多くもこの考えに賛同した人間ばかりなので、これからもシーマンシップを大切に、気象情報をコアとしたさまざまなサービスを提供していきたい」と語る。

●新らしくなった『ウェザーニュース タッチ』のマルとバツ

 大幅な変化を遂げた『ウェザーニュース タッチ』のアップデートについてお話を伺うと、石橋氏は「よい面と悪い面があった」と語る。いい面はすでにお伝えしている通り、ユーザーとリポート数の大幅な増加。それまではユーザーのなかでスマートフォンユーザーが占める割り合いは3割程度だったのが、一気に7割まで増えた。

 一方で悪い点は、いきなりインターフェースを変えすぎてユーザーを混乱させてしまったところ。システム開発本部長・西祐一郎氏は「我々もユーザーのレビューなどを読んで学ばせてもらった。いまもインターフェースについて研究しており、2〜3種類の候補を開発中。より使いやすいアプリに進化させなければならない」と言う。

 ユーザーの意見で多かったのは機能の制限とのことだが、実はバージョンアップ時に機能はなにも削っていない。機能は含まれていたのだが深い階層に入れてしまったため、機能が制限されたと勘違いされてしまったケースが多いようだ。これに対して石橋氏は、「我々のアプリが単なる天気予報ではなく、ソーシャルな機能もあることをアピールするために行ったアップデートだったのだが、浸透したと思っていたカスタマイズの機能が実際は知られていなかった。今回の反省を踏まえ、ユーザーの声を大事にしながら満足してもらえるアプリ開発を目指していく」と語る。

●ウェザーニューズの今後の取り組みと目標は?

 ユーザー数の増加に伴い、リポートの内容の変化を伺った。石橋氏は「毎日3万枚の空の写真が送られてくるようになり、リポートの質も上がった」と言う。会員数の増加は予測していたため、アプリを公開した直後は24時間体制でサーバーを監視していたそうだ。

 西氏は「当時はイタズラなど質の悪い投稿が増えるのではないかと懸念していたのだが、嬉しいことに1%未満だった。これは有料会員制だったころの数値と変わっていない」と振り返る。また、石橋氏は「日本人は天気・気象に対して関心が高い人種だと思う。日本は季節もあるし、気象災害も多い。数ヵ月おきに季節が変わり、なおかつ毎年台風がやってくる国は世界的に見ても珍しい」と分析する。

 最後に今後の目標について伺うと、石橋氏は「いまのユーザーの大多数は天気予報を知るために使っているが、もっと多くの人に気軽にリポートを送ってもらえるようにしたい。そして、日本人は世界でもっとも気象リテラシーが高く、もっとも天気予報の当たる国……、のような調査結果が出ると嬉しい」と夢を語った。
《佐藤隆博》
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