【インタビュー】スマートフォン時代のサービス戦略……ケイ・オプティコム社長 藤野隆雄氏 | RBB TODAY
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【インタビュー】スマートフォン時代のサービス戦略……ケイ・オプティコム社長 藤野隆雄氏

エンタープライズ 企業
ケイ・オプティコム代表取締役社長 藤野隆雄氏
  • ケイ・オプティコム代表取締役社長 藤野隆雄氏
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 「ブロードバンドアワード2011」(RBB TODAY主催)において、キャリア部門の「ベストキャリア」をはじめ「サポートの部」「トリプルプレイの部」、テレビ部門の「ベストテレビ」「地デジ対策の部」において受賞を果たしたケイ・オプティコム。ベストキャリア受賞は今年で5年連続となった。今回は、同社の代表取締役社長 藤野隆雄氏に事業の現状や戦略ついて話をうかがった。

――アワード受賞は5年連続となります

 関西地方は、もともとブロードバンドの競争が激しいところです。価格競争が大変厳しいなかで、NTTやCATV系などの競合企業と三つ巴の戦いをしてきました。その結果として、関西でのブロードバンド普及率も全国平均より高いものになっているわけです。5年連続で我々がアワードをいただけたのは、価格のみならず、顧客満足度という点でも良質なサービスを提供してきたという証であると感じています。

――固定ブロードバンドユーザーの獲得状況はいかがでしょうか?

 昨年はエコポイントと地デジ対策の効果があり、右肩上がりで新規加入が増えていたのですが、アナログ停波以降は、やはり加入者の伸びは半減しています。この状況をテコ入れするために、新規割引(スタート割は3,900円から)、従量課金の導入、スマートフォンとセットでの料金体系など、コスト面での対策を打ち出して、新規加入者獲得に努めてきました。さらに、長期割引なども導入し、加入者の定着にも努めています。しかし、いずれ関西地域の固定ブロードバンドユーザー比率が高くなれば、マーケットも飽和状態になるものと予想されます。それをいかに打破し、より多くの方にご利用いただけるような魅力ある新しいサービスを提供できるかという点が大変重要になってきます。

――では、今年から始まる目玉の新サービスにはどのようなものがありますか?

 新サービスとして、宅内サービス事業「eoスマートリンク」を本格的に提供すべく準備しているところです。実は今年1月末まで、北摂地域(箕面・豊中・池田・吹田・茨木・高槻など)において、eo光を導入したユーザーを対象に専用Androidタブレット端末を提供し、ICTやECなどの情報サービスを受けられる試験を実施しました。地域のスーパーや商店の電子チラシをタブレット端末で閲覧したり、ネットから品物を注文できるサービスが好評を博しました。端末インターフェースも高齢者が使えるように簡単なものに工夫しました。健康サービス関連では、通信機能付きの体重計・血圧計を利用することで、そのデータをタブレット端末で管理できます。自動的にグラフとして表示でき、ヘルスケアサービスを受けられるようになります。また食事内容を撮影すると、そのカロリーが計算されます。食材の宅配サービスを導入すれば、毎食のカロリーを管理することも可能です。

――新サービスでは、デジタルサイネージについても力を入れてきましたね。

 ええ。昨年から注力してきたデジタルサイネージも、ようやく実例が出てきました。身近なところでは、箕面市のバスターミナルで屋外向けデジタルサイネージが導入され、バスの運行状況が分かるようになりました。現在バスがどのあたりを走行しているのか、あるいはあとどのくらいで到着するのか、その時間まで表示されるようになっています。今後は、こういった便利なサイネージサービスを、商店街や企業などにも積極的に売り込んでいきたいと思っています。こちらの事例としては、昨年から大阪府大東市の野崎参道商店街などに導入されたものがあります。この商店街には独自の公開スタジオがあり、そこからUstreamでオリジナル番組を中継したり、店舗CMやイベント情報などの生活情報を発信しています。我々は地域に密着した企業ですから、地域活性化は大きなキーワードの1つだと考えているのです。

●モバイルサービス関連の動向と新たな展開

――固定ブロードバンドのARPUをアップする方法は?

 光ファイバを導入したユーザーが、「光」のメリットをフルにご活用していただけるよう、ネットに加えて、電話・テレビといったサービスを含めたトリプルプレイ加入者を多く増やして、売上げを伸ばせるように努力しているところです。現時点では、ネットと電話をセットで導入しているユーザーは約8割ですが、テレビも含めたトリプルプレイサービスの加入者になると約半分ぐらいにとどまっています。もう少し伸びしろはあると思うので、今後はトリプルプレイの加入者増への取組みを強化するとともに、「eoスマートリンク」などの魅力ある新サービスを投入することにより、加入者増とARPUの向上を図っていきたいと思います。

――先ごろKDDIとクロスセル契約を結ばれました。どのような狙いがあったのですか?

 我々自身、スマートフォンが今後のトレンドになるだろうという認識がありました。ちょうどKDDIから「料金の施策面で一緒に考えませんか?」という呼びかけがあり、双方にメリットがあることが分かったため、クロスセル契約を締結したわけです。我々の回線を使っているユーザーで、au以外の携帯電話を使っている方々が乗り換えてくれるのであれば、KDDIにメリットがあります。逆にauの携帯電話を使っていて、他回線からケイ・オプティコムのほうに乗り換えてくれれば、我々にもメリットが出ます。今回のクロスセル契約によって、年間で1~2割ぐらい獲得回線数の押上げ効果があるものと考えています。今回は、そういう相乗効果を狙っているわけで、決してNTTを包囲するための施策ではありません。あくまで我々に利益をもたらすものと考えて始めたものです。今後はスマートフォンと光回線を組み合わせたサービスをKDDIと共同で展開していきたいですね。

――スマートフォンの普及によって、さらに固定ブロードバンドの展開が厳しくなりませんか?

 これはよく聞かれることなのですが、スマートフォンが普及しても、固定ブロードバンドのほうが厳しくなるというわけではないと思っています。多くのユーザーが携帯端末を利用する場所では、通信速度が極端に落ちてしまいます。通信が確立されていてもレスポンスが返ってこないという事態も起こりますので、逆にオフロードで使用できる環境が重要になってきます。そのため我々としては、Wi-Fiの延長線上に光ファイバによる利用法が見いだせるものと考えています。

――貴社は新規顧客に向け、モバイルサービスも拡充してきました。Wi-Fi戦略のその後と課題についても教えてください。

 この1年間で、無線スポットの設置を10,000ヵ所まで拡大させるというフェーズが終了しました。ユーザーの動線に沿った主要なスポット、たとえば駅やコンビニなど約70%をカバーすることができました。ただし、我々の無線スポット設備は、電柱に吊して外から電波を出す方式です。そのため電柱がない地域では、ビルの屋上などに設置しなければならず、そのぶん設置に手間が掛っています。これが課題の1つですね。あとは地下鉄の駅で、まだ十分敷設ができていないことも課題になっています。現在、各キャリアが大阪市の地下鉄で無線サービスを展開しています。しかし、無計画に無線設備を敷設すると、電波の干渉が起きてしまいますので、各キャリア間で協議会的な運営が行えるように調整しているところです。話し合いがまとまれば、さらに地下鉄の無線サービスを充実できるようになるでしょう。今後は京都や神戸などの大都市において、市営のみならず私鉄にもサービスを広げていきたいと考えています。

●NTTグループの活用業務の不公正を正す方針は変わらない

――では昨年に続き、対NTTへの戦略についても教えてください。

 長期割引、スタート割、従量課金の導入など、我々の料金体系を抜本的に変えたため、今年から対外的により競争力がついてくると思います。それからNTTグループの活用業務の件については、従来より総務省に要望を出し続けてきました。この方針は全く変わりません。本来ならば、NTTコミュニケーションズだけしかできない業務までも活用業務として手を出せるようにしています。これは、NTT再編などの競争政策の流れを無視し、グループ再統合や独占回帰をなし崩し的に図っているのと同じことで、NTTを分割した意味がありません。もし競争構造を変えるのであれば、それでも構いませんが、行政上できっちり明確にして欲しいと思います。最近でも、NTT東日本・NTT西日本・NTTドコモ・ NTTコミュニケーションズの利用料の債権を子会社が譲り受け、固定・携帯電話もNTTグループが事前申請することで、料金請求・回収を一本化できるようにする動きがありました。

――企業の赤字決算が続いています。今後、日本の産業界が回復するためのよい施策はありますか?

 通信サービス事業者の立場から考えると、コスト面での工夫はもちろんですが、ビジネスモデルが変わるようなユニークな使い方などを提案する必要があります。コンシューマーのみならず、ビジネスでの需要を喚起し、より効果的に回線ニーズを増やしていくしかないと思いますね。弊社では、昨年の大阪マラソンでコース上に定点カメラを設置し、「ランナーズアイ」という無料動画配信サービスを提供しました。これは、eoモバイルのWi-Fiスポット経由で撮影映像をサーバにアップし、ユーザーがインターネット上からランナーのゼッケン番号を入力すると、各地点の通過前後の映像を閲覧できるというサービスでした。PCやスマートフォンで手軽に映像が見られ、かなり話題になりました。また、ビジネス面でも流通・小売系では、Wi-Fiとスマートフォンなどの端末を組み合わせて在庫を管理するようなサービスも出てきています。売り場の商品をスマートフォンで撮影して管理部に転送すれば、どのコーナーの、どの商品が、どのくらい足りないのか、写真で一目で分かります。こういった新しいサービスを提供することで、ユーザーの全体的なパイを広げていくことが重要になるでしょう。
《RBB TODAY》
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