【インタビュー】電子出版を“ビジネス”に育てるために必要なものとは?……スターティアラボ 北村社長 | RBB TODAY

【インタビュー】電子出版を“ビジネス”に育てるために必要なものとは?……スターティアラボ 北村社長

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スターティアラボ 代表取締役社長 北村健一氏
  • スターティアラボ 代表取締役社長 北村健一氏
  • 北村氏は「過去の電子書籍ブームのようにインフラ整備の段階で終わってしまうことはない」とする
  • 各種マーケティングデータの取得が重要であるとの考えから、北村氏は自社で電子ブック販売(配信)サイトを持つことを勧めている
 電子出版元年と騒がれた2010年。今回の電子出版の動きは、過去のブームのように一過性に終わってしまうのか、それとも着実に成長を続けているのだろうか。

 7日から電子出版に特化した世界最大級の専門展である「第15回国際電子出版EXPO」が開催されるが、この機会に電子ブックのオーサリングシステム「Actibook」を手掛け、中小規模の出版社やプロダクションなどを顧客を持つスターティアラボの代表取締役社長 北村健一氏に話を聞いた。
 
■電子書籍がブームで終わることはない

 北村氏は、電子出版市場について、昨年以降この市場に参入する出版社や、関連サービスを提供するベンダーも増えてきていると感じていると述べる。ただ日本の場合、その市場の盛り上がりも、タブレットや電子ブックリーダーなど、ものづくりが先行しており、本来あるべき電子書籍を読むというニーズが追い付いていないのも事実だという。

 また、電子出版の市場を「インフラ整備」「コンテンツの拡充」「読書スタイルの確立」という3つのフェーズでとらえており、現在はまだインフラ整備の段階だとしている。ここでいうインフラとは、電子ブックリーダやスマートフォン、タブレットのようなデバイスや、配信のためのサービスプラットフォームなどが含まれる。次の段階はコンテンツの整備としている。これには、雑誌や書籍などコンテンツの配信スキームが確立するフェーズが必要だ。最後に、電子ブックリーダやスマートフォンなどで電子書籍や雑誌を読むという行為が、生活スタイルの中に浸透していく段階で仕上げとなる。

 北村氏は、過去の電子書籍ブームのようにインフラ整備の段階で終わってしまうことはないと予想する。その理由として、「震災後、紙やインクの供給不能という、印刷・出版業界にとって経験したことのない事態が発生しました。出版業界としても発行する術がなければ、代替手段を考えざるをえません。大手出版社が発行誌を電子化して配信するなどといった手段を、積極的に考えるようになっています。コンテンツホルダー側の意識は確実に変わってきています」と語った。

■電子ブックシステムはログ機能が要

 前述の通り現在の電子出版市場のフェーズはインフラ整備の段階にあるというが、この段階で、スターティアラボはどのような戦略で製品開発に取り組んでいくのだろうか。参入企業が増え、競争が激しくなる中、どのような点を差別化ポイントとしていくのだろうか。このあたりを、北村氏に引き続き尋ねてみた。

 「実際に出版社とのやりとりで聞くのは、電子出版を始めてみたが肝心の売り上げに結びつかない、といった声です」と、現状の課題を述べた。最終的にビジネスとしてまわっていくには、最後の「読書スタイルの確立」までいく必要がある。既存の流通や広告モデルが立ち行かなくなる現実において、電子出版を新しいビジネスとして育てていくのは必然である。そう考える北村氏は、電子ブックオーサリングシステムや配信プラットフォームについて、ログ解析をベースとしたマーケティング機能を重視することが大事だと述べる。実際、同社のサービスやパッケージは、単にコンテンツを電子化するフォーマット変換だけではなく、ログ機能、解析機能、コンテンツの共有機能などの周辺環境が充実している。

■口コミ、ソーシャルリーディングなど消費モデルの変化も見逃すな

 また読者の属性情報などを伴ったアクセスログや購入履歴情報は、販促だけでなく新しい書籍や雑誌の企画に生かすことも可能だ。そのログ情報をいまから蓄積・管理することは、今後広がるだろう電子出版ビジネスにおいて非常に強力な武器となるということだ。

 その意味で北村氏は、出版社には小さい規模でも、自社の電子ブック販売(配信)サイトを持つことを勧めているという。コストをかけずにクラウドや大手電子ブックモールにすべて依存した電子出版も可能だが、それでは版元としていちばん重要なユーザーのログデータを大手サイトやモールに提供しているだけになってしまう。さらに、ログをベースとしたマーケティングデータは、クチコミやターゲティング広告などに活用することで、既存の媒体広告の付加価値を高めてくれる。販売チャネルとして外部に複数のサイトを持つことはよいが、自社にログデータが蓄積される仕組みは必須との認識だ。このときログを収集できるのがPCだけでは意味がない。スマートフォンやタブレットなどのデバイスからの情報も蓄積できなければならないそうだ。

 また、電子ブックのビジネスを考えるうえでは、ソーシャルリーディングもポイントとなるという。電子ブックの配信において、ネット上に検索できる状態にあるだけではビジネスにはらない。SNSやクチコミによるネット上の伝播と、キュレーターによるソーシャルリーディングの機能をどうサポートするかを配信側(版元)は考える必要がある。北村氏が電子ブックの配信プラットフォームでこだわる機能のひとつだそうだ。ソーシャルリーディングや電子出版ビジネスのスキームについては、7日から開催される「国際電子出版EXPO」の同社ブースでも重点的に展示が行われるとのことだ。

■長期的には出版市場のエコシステムが再構築される

 最後に、北村氏にとってこれからの電子出版市場の方向性をどのようにみているのだろうか。

 日本の出版社の数は数万~数十万社ともいわれているが、その多くは中小規模の出版社なので、これらのうち大規模なシステムに投資できる出版社は限られてしまう。北村氏は、そこにカスタマイズやシステム構築を前提とした大規模システムを構築したりするビジネスは続かないと考えている。

 その場合、出版社ごとのカスタマイズは最小限にしたパッケージで、頻繁にリリースやバージョンアップによって機能を追加していくようなモデルが理想ではないかと述べる。つまり、業界の成長やニーズに合わせて、柔軟性のあるシステムやソリューションを展開し、新しいニーズやビジネスにも対応できる柔軟性のあるシステムやツールが重要だというのだ。

 北村氏は、「今後の電子出版の市場は、業界といっしょに育っていくようなシステム、著者、版元、(電子)書店を巻き込んだエコシステムを作れるかにかかっていると思います。そのエコシステムは、おそらく紙・印刷・電子がバランスしたものでなければなりません」と、自社の方向性と市場への期待を語ってくれた。
《中尾真二》

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