【ニールセン博士のAlertbox】iPadのユーザビリティ: この1年(後編) | RBB TODAY
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【ニールセン博士のAlertbox】iPadのユーザビリティ: この1年(後編)

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要約:
iPadアプリは大幅に改善された。しかし、スワイプの曖昧さやナビゲーションの過負荷のような、新たなユーザビリティ上の問題が浮かび上がってきた。


■前回と同じ発見

 昨年のユーザビリティ上の発見の多くが今年もまた見られた:

・ウェブサイトに対しては、読むこととタップすることの間の釣り合いが取れていない。読むには十分な大きさのコンテンツも、タップするには小さすぎる。いくつかのウェブサイトでは、より大きなタッチできるエリアを持つ、タブレット上でうまく機能するようにデザインされた好例もあった。例えば、Virgin Americaの予約ページでは、希望する出発時間が入っているテーブルのセル全体のどこでもユーザーがタッチすることが可能になっている。したがって、ラジオボタン(あるいはまさにそのラベル)で示されたずっと小さなエリアをタッチする必要がない。

・ユーザーの抱えているタスクが複雑でない限り、標準的なiPadのブラウザにおいて、ウェブサイトは割によく機能した。例えば、集中して読んだり写真やビデオを見たりすることは比較的容易だった。(もし、あなたがたのサービスがかなりの量のインタラクションを必要とするものなら、サイトではなくアプリにすることを考えたほうがいいだろう)。
・多くのアプリではタッチできるエリアが小さすぎた。またそのエリアがお互いに寄りすぎてもいたため、違うところにタッチしてしまうリスクが増加していた。

・意図しないタッチによる予想外の起動がまたも問題を招いた。とりわけ、アプリにBack(:戻る)ボタンがない場合には。

・発見しにくさ。アクティブなエリアがタッチできるように見えなかったからである。

・タッチスクリーン上でユーザーはタイプするのを嫌がった。その結果、登録プロセスは敬遠された。

 昨年の中心的な結論は今年は大きな問題にはならなかった。ばらばらのユーザーインタフェースにユーザーが前回ほど悩まされなかったからである。アプリはより一貫性のあるものとなり、標準化され、その結果、より使いやすいものとなっていた。

■新しい発見

 スプラッシュスクリーンには何年も前に杭を打ち込んでいたので、それによってウェブ上から絶滅させたと思っていた。しかし、スプラッシュスクリーンというのが強力な吸血鬼であり、今もあの世から現れて、ユーザーに付きまとうことができているのは明らかである。新しいiPadアプリのいくつかは長い導入部分を持ち、最初は楽しませてくれることもある。しかし、すぐにそれらによる歓迎は陳腐になる。これをサイト上でやるのは間違っているし、アプリでやるのも間違っている。やめておこう。

 同じ画面上にスワイプ可能なアイテムが複数あるとき、スワイプの曖昧さはユーザーの悩みの種になる。ページ間をスワイプにも依存して移動するアプリにおいて、カルーセルはこのユーザビリティ上の問題を引き起こすことが多かった。多くのユーザーがページをめくることができなかった。なぜならば、間違った場所でスワイプしていたからである。このことによってもたらされる典型的な結論は何かって? それは、このアプリは故障している、ということである。

 多くのアプリが小さすぎるエリアに情報を押し込み、認識や操作を難しくしていた。関連する問題としては、アプリが使うナビゲーションが多すぎる(Too much navigation)というのがあった。デザイン上のこの問題は、あまりにも横行していたので、頭字語でTMNという名前で呼んでもいいだろう。我々のナビゲーションデザインについてのセミナーで、25ものナビゲーションテクニックを扱うというのは本当だが、どんなユーザーインタフェースでもそこに含むナビゲーションはほんの数個であるべきである。この2つの問題はお互いに影響し合っている。なぜならばナビゲーションの選択肢が多くなると、その1つ1つに与えられるスペースは小さくなるからである。

 過剰なナビゲーションの例としては、利用可能な記事をサムネイルで見せるために多くのアプリが使っている、コンテンツのポップオーバーがある。そうしたポップオーバーは、メニューやカルーセルとして現れることもあるし、スライダーを動かすことによって機能することもある。ホームページ型の目次では、ユーザーは次の記事に単にそのまま進むのではなく、別の場所に行きたければその目次に戻ることが可能だったが、実装の仕方がどうであれ、この長いサムネイルのリストのユーザビリティは、ホームページ型の目次より劣っていた。

■タブレットは共用機器である

 一人暮らしの人を除けば、我々の調査協力者はiPadを家族と共用していると一様に言っていた。彼らのタブレットでアプリを1つ1つ見せてくれるように依頼したとき、家族の誰か別の人がインストールしたアプリに遭遇することはよくあった。

 共用されるというiPadの性質は、それよりもずっと個人的である携帯電話の性質とは対照的なものである。携帯電話は個々人によって所有され、利用されるのが一般的だからである。

 競争によって価格が押し下げられれば、将来的にはタブレットが真に個人的な機器になる可能性があるのは明らかだ。しかし、今のところは、複数のユーザーが利用する機器としてデザインしていくことを考えるべきである。例えば、ユーザーはアプリにずっとサインインした状態でいることを嫌がるかもしれないが、それにもかかわらず、彼らはパスワードを忘れてしまうものである。認識可能なアプリケーションアイコンをデザインすることも重要だ。そうすることで複数のユーザーのアプリで混み合うリストの中で目立つことになる。

■iPadの使用目的は何か

 参加者からの報告によると、ゲームをすることや、Eメールやソーシャルネットワークのサイトをチェックすること、ビデオ及び映画を見ること、ニュースを読むことに、共通してよく使用されていた。人々はまた、ウェブを閲覧したり、買い物関係の調べごとをしたりもしていた。しかし、たいていのユーザーはデスクトップコンピューターで買い物するほうが容易であると感じていた。iPad上でのeコマースのセキュリティを心配している人もいた。

 iPadのこうした使用全てに共通する特徴は、Eメールへの返答に関わる小さな生産を除けば、メディア消費に大きく支配されていることにある。

 約半数のユーザーはiPadを頻繁に持ち歩いていたが、残りの半数は主に自宅や長い旅行において使用していた。

 我々はたった1年でここまで来た。iPadのユーザビリティは大幅に改善され、人々は多くのアプリを習慣的に利用している。とはいえ、いつものことだが、これによって、我々が警戒を緩めるわけではない。なぜならば、新たなユーザビリティ上の問題が現れたうえに、以前からの問題が完全に克服されたわけでもないからだ。とはいえ、タッチ型タブレットにとって、その未来は概ね明るいといえるだろう。


※この記事はユーザビリティ研究者ヤコブ・ニールセン博士が運営するサイトuseit.comで連載中のコラム『Alertbox』の転載・翻訳記事です。
株式会社イードが運営する「U-site」では、博士からの正式な許可を得て同コラムの全編を日本語訳し公開しています。
《RBB TODAY》
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