ケーブルテレビ事業者の問題をクラウドで解決する……イッツコム記者発表会 | RBB TODAY
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ケーブルテレビ事業者の問題をクラウドで解決する……イッツコム記者発表会

エンタープライズ ソフトウェア・サービス
イッツコム 代表取締役会長 河村浩氏
  • イッツコム 代表取締役会長 河村浩氏
  • イッツコム 取締役常務執行役員 村井健二氏
  • ケーブルテレビ事業者の抱える問題
  • クラウドソリューションはグローバルな動向
  • 「統合クラウドサービス」のポイント
  • サービス展開ロードマップ
  • DPMサービスの主要機能
  • 導入の考え方
●ターゲットはJ:COMなどMSOを除く独立系ケーブルテレビ事業者がメイン

 5月31日、イッツ・コミュニケーションズ(イッツコム)は、ケーブルテレビ事業者としては珍しい統合クラウドサービスの提供を開始することを発表した。

 イッツコムが提供を開始するというクラウドサービスは、主にケーブルテレビ事業者のためのDPMサービスや、その上位に位置するCRM、SFA、課金システム、Webサーバーなどである。発表当日は、DPMサービスを7月1日から開始することを明言し、この秋から2012年3月までをめどに、監視サービス、Web/Mailサービス、課金システム、CRM、マッピングなど提供クラウドの範囲を広げていくという。ターゲットは、J:COMなどのMSOを除く、独立系のケーブルテレビ事業者がメインとなるが、その営業フロントとしてJDS(Japan Digital Service)が担当する。JDSは、国内ケーブルテレビ事業者に衛星デジタル放送の配信サービスを手掛けている会社だ。そのため、国内事業者へのリーチ度も期待できる。

 ケーブルテレビ事業者の抱えるITシステムは、サービス追加、変更、多様な料金プランなどへの対応コストがかかるといった柔軟性の問題がある。もともと、放送事業を展開していたところに、インターネット接続や電話サービス、VODと事業範囲が拡大していったという経緯から、サービスやシステムの統合化が遅れているということだ。そして、システムの改修、仕様変更、障害対策など、そのつど100~500万円単位のコストが発生している。また、IT系の技術者確保が難しいという問題もある。実際、グローバルでは、これらの問題を解決するため、局の規模にかかわらず、ブロックごとにシステムを分割してアウトソーシング、またはクラウドサービスを積極的に導入しているという。

 イッツコムの考える「統合クラウドサービス」は、モデムやSTBなど(Android端末やiPadも対応可能)のエンドユーザー宅の端末機器の自動登録やリモートでの設定変更などが可能になり、導入した事業者は、ユーザーの契約変更やサービス内容変更などにも迅速に対応できる。もちろんクラウド環境なので、各事業者は管理ソフトやサーバーを自社で保有する必要はない。まずは、上記のDPMサービスからの展開だが、将来的にはCRM、Web/Mailサービス、課金システム、マッピング支援システムといったサービスを展開していくので、ケーブルテレビ事業者のコア業務システムをほとんどクラウド化できるようにする。

●なぜイッツコムなのか?

 業界初のサービスということで、発表後の質疑応答もさまざまな質問がなされた。そのいくつかにイッツコム代表取締役社長 市来利之氏が答えた。まず、なぜイッツコムがクラウド事業なのか、という質問には、イッツコムはデータセンター事業を展開しており、まったくの新規事業でなないとし、第2データセンターなどの追加投資の予定もあるとした。セキュリティやSLAについては、VPNなど最低限の対応の他、シグマ・システムズとの技術支援を含む業務提携で対応していき、イッツコム内部にもITビジネス事業部を設立し、技術者や要員の確保も行っているとした。

 事業者向けのクラウドサービスでどれくらいの売上を見込んでいるのか、契約してサービスが稼働するまでの時間はどれくらいか、という質問については、JDS 常務取締役 橋本幸典氏が「複数年度ですが、DPMサービスで全国60事業者を目安にしています。契約からサービス開始までは、事業者ごとのSTPやモデム、内部のオペレーションシステムは既存のものを流用することになるので、そのカスタマイズ、設定などが必要となるため3カ月」と答えた。そして「3カ月あれば、どのような事業者のシステムでも対応できます」とも補足した。

 以上のように、イッツコムが発表した「統合クラウドサービス」は、ケーブルテレビ事業者に特化したクラウド環境を事業者カスタマイズを含めて提供するという、プライベートクラウドとパブリッククラウドのハイブリッド型クラウドといえるものだ。また、河村氏は「ケーブルテレビ事業者の業務システムやプロセスは、標準化が遅れていますが、このソリューションにより、業務プロセスやクラウド利用の環境が、デファクトとして浸透することを目指しています」とも述べた。

 この言葉の背景に、資本提携や買収によってグループを拡大していったJ:COMに対して、クラウドによる業務プロセスのデファクト化によって、独立系事業者をまとめて競争力を高めようという思惑があるとしたら、今後の業界の勢力地図に影響しそうなサービスとして興味深い。
《中尾真二》
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