【インタビュー】光回線の接続料は公正か?……ケイ・オプティコム 藤野社長 | RBB TODAY
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【インタビュー】光回線の接続料は公正か?……ケイ・オプティコム 藤野社長

ブロードバンド 回線・サービス
ケイ・オプティコム 代表取締役社長 藤野隆雄氏
  • ケイ・オプティコム 代表取締役社長 藤野隆雄氏
  • ケイ・オプティコム 代表取締役社長の藤野隆雄氏
  • 「分岐回線単位」の接続料設定を含めた接続料金算定方式では、一部しか設備コストを負担しない接続事業者を利することなり、インフラ事業者が不利な条件になってしまうという
  • OSU共用案とOSU専用案の比較・説明(平成20年のNGN答申時の説明)
  • 希望する接続事業者同士でのシェア方式によるスキームイメージ
  • 平成25年度末8分岐単位シェアドアクセス接続料(J:COM 情報通信行政・郵政行政審議会 電気通信事業部会 接続委員会 事業者ヒアリング資料より)
  • ケイ・オプティコムが提唱するブロードバンドの利活用例
  • 大手通信事業者では、企業グループという新たなドミナントが出現し、グループ内での固定・携帯電話の通話無料化やショップでの販売を実施
 NTT東西は1月に、平成23~25年度の加入光ファイバ接続料の改定を申請。2月22日には主要な電気通信事業者に対する公開ヒアリングが行われた。

 この公開ヒアリングでは、光ファイバ接続料の設定方法を巡って、主にケイ・オプティコムやKDDIなどの光インフラ事業者と、ソフトバンクやイー・アクセスなどの接続事業者の間で主張が分かれた。

 NTT光ファイバの接続料の設定方法は、大きく分けて以下の2種類がある。
・一芯単位の接続料設定
・分岐回線単位の接続料設定

 現行は「一芯単位の接続料設定」が採用されている。光ファイバは一本の芯線を通る光信号を分岐させることで、一芯を複数のユーザー(最大8ユーザー)が同時に利用できるようにしているが、「一芯単位の接続料設定」では、一芯(8ユーザー分)を1つの事業者が利用しサービスを提供する。そのため8ユーザー分のうち、利用者が埋まらない分は事業者がコストとして負担することになる。

 しかしソフトバンクをはじめとする接続事業者は、この方式が一芯分のコストを負担する体力のない新規事業者の参入を妨げ、接続料金を高止まりさせている原因だとし、一芯の光ファイバーを、1ユーザー分ごとにNTT東西から借りられるようにする「分岐回線単位の接続料設定」の導入を主張する。

 関西圏の光インフラ事業者で、「一芯単位の接続料設定」を支持するケイ・オプティコムは、接続料の設定に関して「リスクを取ってインフラ投資を行ってきた光回線インフラ事業者を含めた、競争事業者間の公正性が十分に担保される必要がある」と主張する。

 今回同社の代表取締役社長 藤野隆雄氏に、接続料金に関する立場と主張について話を聞いた。

■分岐回線単位の接続料設定は、公平な競争環境に重大な影響を与える

 「我々が一番懸念する点は、“分岐回線単位の接続料設定”が現行の競争環境をゆがめ、政策的な思惑だけで料金が決められる恐れがあるということです」と藤野氏は語る。同社のように自社でインフラを所有しサービスを提供している事業者がいる中で、設備を1ユーザー分ごとに借り受けることができるようになる「分岐回線単位の接続料設定」では、不当に安い料金で提供されることになり、事業者間の公正な競争が担保されなくなるという考えだ。

 藤野氏は“公正な競争”には、「事業者間の競争を“設備競争”と“サービス競争”の両面から促進すること」が必要だという。従来インフラが整備されることで、利用サービスも高度化してきた経緯があるとして、“設備競争”こそが進化したインフラの上でしか動かせない高度な“サービス競争”を発展させるために不可欠だと主張する。

 そのため事業者がインフラ投資を行わずにすむ「分岐回線単位の接続料設定」を導入することで、主軸が“サービス競争”へ偏ることを懸念する。藤野氏は、“設備競争”と“サービス競争”のどちらも重要であるとしつつも「設備共用を中心に考えると、事業者にとって技術革新に対するインセンティブが働かなくなる」と語る。

 また「分岐回線単位の接続料設定」には、「OSU共用案」と「OSU専用案」という2種類が存在するが、どちらも事業者が未使用の光回線の負担を負わずにすむという仕組みは変わらないため、藤野氏は前述の通り“設備競争”が損なわれるとして反対している。

■やはり「分岐回線単位」は必要なし

 藤野氏は解決案として、複数の接続業者同士でコンソーシアムをつくり、1つのOSUを共同で設置し、光ファイバーも借り受けてシェアする方式を提案する。これにより接続事業者側でもユーザー未使用分のコストを等しく分担する形となり、ケイ・オプティコムやKDDIのようにインフラを持つ事業者との競争の公平性は保たれるという。さらに設備投資へのインセンティブも働き、“設備競争”と“サービス競争”のバランスも保たれることになる。

 今回のヒアリンングでは、ケイ・オプティコムと立場を同じくするジュピターテレコム(J:COM)も、サービス事業者の営業努力によって、1芯あたりの実質的な戸建ての接続料をADSL並みまで低減できるという資料を提出している。この資料によれば、8分岐単位のシェアドアクセスでは、3ユーザーで1,304円、4ユーザーならば1,056円、5ユーザー以上なら1,000円を切る接続料をはじき出している。つまり3ユーザー以上であれば、メタル並みの料金を現行ルールで実現可能なレベルまできているという。そのため、ケイ・オプティコムやJ:COMは、分岐回線単位の接続料をわざわざ検討する必要はないと主張する。

■「光回線だけにこだわらないブロードバンドの普及を」

 また、ソフトバンクなどは「現行の方式では、新規事業者の参入が阻害されるため、NTTのシェアが高止まりしている」とも主張しているが、藤野氏によれば、これはコストだけが原因ではないという。藤野氏は、携帯電話の利用を例にあげ、月額数千円の料金でも便利で、ユーザーの役に立つものであれば普及するのではと語る。

 従って必ずしも料金だけが普及のファクターではなく、むしろブロードバンドの利活用の部分が働いているという見解だ。この点については、各社立場は違えども意見は一致しているところだ。藤野氏は「これからは行政や教育、医療などの世界で、ユーザーがさらに価値を感じられるサービスを光回線だけにこだわらず展開していくべき。そのとき、もっと早く、もっと精細にというようにハイグレードな要求も出てくる。そこで初めて光回線が真価を発揮するはずだ」と説明する。

■NTT法の形骸化

 さらにNTTのシェアが高止まりしている理由として、藤野氏はNTT東西の活用業務による市場独占に言及しており、公平な競争環境を実現する上で「NTT東西に対する規制の厳正化」を求めている。これは1999年にNTTの再編成が行われた際、公正な競争環境のために、市場影響力の強いNTTに対して規制が課されたが、この規制が現在では「形骸化されている」(藤野氏)いう。

 具体的には、NTT東西は「県内通信」を業務範囲とする会社として設立されており、原則「県内通信」以外の業務はできない。例えば長距離電話の際は必ずKDDI等他社の通信網を経由する必要がある。

 しかしその後、認可申請により例外的に事業範囲を広げられる活用業務制度により、NTT東西は「県内通信」以外の業務(活用業務)を申請し、現在では「活用業務が無視できない規模に拡大」(藤野氏)しており、これがNTT東西の市場シェアの高止まりの原因だという。

 さらに先般のICTタスクフォースでは、ユーザーメリットの観点から、NTTの業務範囲を弾力運用すべき一定の合理性がある」という点が基本方針に盛り込まれた。これは、どうやら次の法改正では活用業務を認可制から届け出制に変更しようという動きらしい。総務省では事前届け出制にするという噂も囁かれているが、もしそのような緩和が実施されると、従来以上に活用業務が扱いやすくなり、NTT東西の支配力がより一層高まる可能性も出てくるだろう。

■NTT東は光を月額2,800円で提供開始へ

 このように光回線ユーザーを増やすための施策として、公平な競争環境の整備、接続料金の見直し案、利活用の展開など、現在さまざまな事案が検討され、活発な意見がかわされている。折しも、2月28日にはNTT東日本が「光ファイバー通信回線サービス・フレッツ光に、月額料金2,800円からの新料金プランを6月から導入する」と発表した(NTT西日本でも年内導入する予定)。これは5,200円の定額プランに加え、ネット利用が少ないユーザー向けの新料金プランとして提供するもので、通信量が10MB増えるごとに約30円が課金され、上限5,800円に達すると使い放題になる料金設定だという。同社では、新プランの導入によって光回線契約を計210万件まで増やす目標を掲げた事業計画を総務省に申請するという。

 新料金プランによって、実際にどこまで光回線契約数を伸ばせるのか疑問の余地が残るところだが、これは「従量制」導入への前哨戦と考えられないこともないだろう。今後、公平な競争の下での積極的な取り組みにより、光回線の需要が増え続けるような有効的な施策を打ち出せるか?今後も引き続き注意深く業界の動向をウォッチしていきたいところだ。
《RBB TODAY》
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