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競争力を支える武器は電子教科書だ~デジタル教科書教材協議会始動

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シンポジウムは立ち見も出るほどの盛況ぶりだった
  • シンポジウムは立ち見も出るほどの盛況ぶりだった
  • 企業会員19社、一般会員51社の計70社
  • マイクロソフト 樋口氏が示した国際競争力を高めるために必要なスキル
  • ソフトバンク 孫氏が示した日本のマイルストーン(案)
 デジタル教科書教材協議会(DiTT:Digital Textbook and Teaching)は、同会の設立にあわせて27日、明治記念館にて「デジタル教科書教材協議会設立シンポジウム」を開催した。

 シンポジウムには、三菱総合研究所理事長・元東京大学総長で同会の会長に選任された小宮山宏氏ほか、ソフトバンク 代表取締役社長の孫正義氏、マイクロソフト 代表執行役社長の樋口泰行氏、東京学芸大学客員教授の藤原和博氏、慶應義塾大学メディアデザイン研究科教授の中村伊知哉氏の4名の副会長らが出席。原口一博総務大臣も挨拶に駆けつけた。

 冒頭で小宮山氏は、満席で立ち見も出た会場を見まわし、「興味と期待の大きさがよくわかるにぎやかな設立シンポジウムになり感謝しています」と挨拶。知識量が爆発的に増え、昔のように知識の詰め込みでは処理しきれなくなっている教育の現状を紹介し、問題のすべてがITで解決できるわけではないとしながらも、教育現場でのICT活用の重要性を訴えた。

 さらに、さまざまな立場の人がいることを踏まえた上で「あまり限定しないで幅広に議論しましょう」と問いかけ、「そして早くすばらしいコンテンツを作りましょう」と締めくくった。

 副会長兼事務局長を務める中村伊知哉氏からは、デジタル教科書教材協議会の概略説明が行われた。あわせて、同シンポジウムがUSTREAMとニコニコ動画で生中継されていることも紹介された。

 中村氏は、「日本の教育現場のIT化は、アメリカや韓国に比べて遅れているという指摘があるが、政府が本腰を入れはじめ、5月のIT戦略本部のIT計画にはデジタル教科書について明記され、同じく5月の知的財産推進計画でもデジタル教科書の普及が明記されている」と説明。協議会では、「すべての小中学生がデジタル教科書教材をもつ環境を整える」ことを目的に、学校関係者をはじめ、さまざまな分野の方と議論を重ね、産学連携をサポートするとした。

 具体的には、ガイドラインや条件の議論を行い、政府や企業との連携による現場での実証研究、普及啓発、会員による毎月のイベントなどを行っていくという。また、すでに会員より要望が出ているワーキンググループについても、進めて行く考えを示した。

 現在の会員は、企業会員19社、一般会員51社の計70社。参加企業は出版社、新聞社、テレビ局、ラジオ局、ゲーム会社、機器メーカー、通信事業者、広告代理店、シンクタンクと多岐にわたり、現在も入会受付が行われている。

 続いて行われた発起人による講演では、マイクロソフトの樋口泰行社長とソフトバンクの孫正義社長が登壇した。

 樋口氏は「情報化社会におけるデジタル教材のあり方」と題する講演で、国際競争力を身につけるための基本スキルは語学力とITリテラシーとし、それらを道具として身につけた上で、問題解決能力、コミュニケーション力、創造力を強化しなければならないと強調した。さらに実社会においては、知識をいかに自分の頭に記憶するかではなく、頭に入りきらない膨大な情報を、ITを駆使して処理し、瞬時にして活かす能力が求められていることも付け加えた。

 続いて「情報革命と教育変革で実現する日本の成長戦略」と題する講演で孫氏は、過去20年続いた日本の競争力低下状態を、このまま引きずらないために「5年以内に、日本の競争力再生への道筋をつけなければならない」とし、資源のない日本においては、「知的レベルを上げるしかない」「競争力を取り戻すための国家戦略として教育改革をしなければならない」と断言した。

 また「今日は物議をかもしに来たんです」としながら、「いままでの教科書は間違っている」、今10歳(小学校4年生)の子どもが働き盛りの40歳になる「30年後の日本の競争力を支える武器は電子教科書だ」。「鎌倉幕府ができたのなんか2、3年違っても誤差範囲だろう、だいたい千年前、それで十分だ、あとは検索すればよい。それよりも、なぜ出来たのか? なぜ統幕しなければいけなかったのか? そちらのほうが重要だ」との持論を展開し、会場を沸かせた。

 さらに、日本の小学校から大学のすべての学生約1,800万人、教師約130万人全員に電子教科書を無償配布するという。デバイス原価を2万円とした場合、費用は子ども手当の月額13,000円の予算から、電子教科書(現物支給)代として月280円(2万円/72か月)を割り当て、残りは現金給付すれば、あらたな予算はいらないとし、ソフトバンクでも協力し通信費は無料。マイクロソフトなど他の企業にも応援してもらえばよいと説明した。

 韓国では2007年にデジタル教科書の実験を開始し、4年後の2011年には義務化することが決定している。これに対し孫氏は、「日本でもせめて5年でやらなければいけない」と言う。2009年の原口ビジョン提示、2010年モデル校(小中高あるいは大学も含めて100校ずつ)で事例を作り分析し、2015年にはデジタル教科書を全小中学校に配備するという日本のマイルストーンを示した。

 また、「教育とは本来、感動を人々に与え、人々はそれに対して知識意欲というすぐれた欲望を満足させるものだ」とし、「教育は日本国民の管轄だ。国民主権だと、心から叫んで終わりたい」と講演を終えた。
《編集部》
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