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【ニールセン博士のAlertbox】寄付のユーザビリティ:非営利団体および慈善団体へのオンライン寄付が増加

 ユーザー調査の結果、非営利団体のウェブサイトはコンテンツが著しく不足しており、寄付に踏み切るための判断材料に欠けていることがよくあることがわかった。

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Jacob Nielsen博士
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 ユーザー調査の結果、非営利団体のウェブサイトはコンテンツが著しく不足しており、寄付に踏み切るための判断材料に欠けていることがよくあることがわかった。

 活動内容と寄付金の使途とを明記するだけで、非営利団体はウェブサイトを使ってもっと多くの寄付金が集められるはずである。私どものおこなった新たなユーザビリティ調査によると、寄付を思い立って各団体のサイトにアクセスしても、その団体の使命と目標がわかりづらいために、ひどい徒労感におそわれていることがわかった。使命と目標、これは寄付に踏み切るための重要な判断材料なのである。

 Target Analyticsのおこなった調査によると、2008年に非営利団体が得た寄付金のうち約10%はオンライン寄付によるものであった。インターネット寄付が急増している現状を鑑みると、2020年には寄付金の大半をインターネット寄付が占めることになると推定される。ただし、非営利団体が各自のサイトの見直しを図れば、という条件がつく。

 デザインの優れた非営利団体のウェブサイトが特に向いているのは、新規の寄付者を呼び寄せることと、少額ではあっても思わず寄付させてしまうこと、この2つである。ウェブサイトは、寄付者と長期にわたる関係を保つのにはあまり効果がない。顧客忠誠心(寄付者が応援したくなる気持ち)をかき立てるのには、メール配信されるニュースレターがいまだ一番のインターネットツールである。

 非営利団体のウェブサイトをどのようにデザインすれば寄付が増えるようになるかを知るため、いつもどおりの手法をとった。その結果、寄付する見込みのある人がさまざまなサイトを利用するときの行動が観察された。幅広い分野を網羅できるように、次の23の非営利団体のウェブサイトをテストした(写真1)。

 上記サイトの大半は、全米規模の大きな非営利団体であるが、それよりも小規模の地域の慈善団体もいくつかテストした。

 次の2つのタスクをテストした。

寄付先を選ぶ:テスト参加者は、同じカテゴリーに含まれる2つの非営利団体を対象に、ほぼ同じような使命を掲げるその2つの団体のウェブサイトから、どちらに寄付すべきかを判断した。

寄付する:テスト参加者は、自分のクレジットカードを使って、選択した慈善団体にオンラインで寄付した。費用は調査後に返金した。

 テスト参加者は、年齢20~61歳、男女比はほぼ半々とし、幅広い分野から募った。インターネットの使用経験が割と浅い(1年以上)ユーザーと、使用経験が割と長い(3年以上)ユーザーとを含めた。職種は、弁護士から、銀行の部長補佐、微生物学者、警察官、中小企業経営者、教員まで、広く網羅した。

 過去1年間に非営利団体にも慈善団体にも一度も寄付をしていないユーザーは除いた。何にでも最初というものがあるが、私どもの研究している行動を実際に示してくれるテスト参加者が必要だったのである。

■寄付者は何を望んでいるのか

 寄付するかどうかを決める際に、非営利団体のウェブサイトでどのような情報が知りたいかをテスト参加者に問うた。回答は4つのカテゴリーに大別されたが、そのなかでテスト参加者が特に強く知りたがったのは次の2つであった。

団体の使命、目標、目的、活動
寄付金の使途、義援金の使途

 要するに、「何を成し遂げようとしているのですか? 集めたお金はどのように使うつもりですか?」と寄付者は尋ねているのでる。

 残念ながら、最初の問いに対する答えをサイトのトップページに載せていたのは、調査したサイトのうち43%にすぎなかった。2番目の問いに対する答えをトップページに載せていたサイトは、わずか4%というとんでもない低さであった。こうした答はたいていの場合、サイトのどこかに掲載されてはいたが、ユーザーはこの重要な情報をなかなか見つけられなかった。

 以前からわかっていたことだが、自分はこういうことがしたいという発言と、当人がウェブサイト上で実際にとる行動とは、まったくの別物である。この2つのうち、我々が信頼しているのは後者である。そこで、どちらの団体を支援するかを決めるときのユーザーの意思決定プロセスを分析した。

 2つの慈善団体のどちらかを選ぶ際に、ユーザーは5種類の項目を参照した。そのなかで重視されたダントツの第1位は、慈善団体の使命、目標、目的、活動という情報であった。第2位は、ユーザー自身の暮らす地域社会で当の慈善団体がどれほどの存在感を示しているのかということであったが、第1位と第2位とでは重要度で3.6倍の差がついた。

 (寄付金の使途についての情報は、寄付者の意思決定に影響を与えはしたが、寄付者の知りたい情報ランキングのなかでは第2位に遠く及ばなかった)。

 人は、非営利団体が何のために活動しているのかを知りたがる。自分と同じ理想と価値観を掲げる活動のために寄付をしたいと願っているからである。たとえば多くの人はおそらく、発展途上国に暮らす貧しい住民や、難病に苦しむ患者に手をさしのべるのは良いことだと思っている。多くの慈善団体の主張とまさに同じである。寄付する見込みのある者が抱く疑問は、当の慈善団体がどのような計画で支援の手をさしのべているのかということである。調査した各サイトは、この問いに対する答えを載せていないことが多かった。その結果、寄付金を得る機会を逃したのである。

■寄付を阻害する要因

 今回の調査では、ユーザーを引き寄せて"商談成立"まで導いた要因を観察しただけでなく、ユーザーがウェブサイト上でかなりの時間を費やしたにもかかわらず、寄付しなかった阻害要因についても分析をおこなった。寄付の阻害要因は次のとおりである。

・47%が、ページとサイトのデザインにからむユーザビリティ上の問題であった。わかりにくい情報アーキテクチャ、雑然としたページ、入り組んだワークフローなどもここに含まれる。
 ―驚くべきことに、どこで寄付すればよいかがわからないサイトの割合は17%にのぼった。寄付を募るサイトなのだから、どこで寄付できるかくらいは明示されていて当然と思うかもしれないが、バナーの見落としや過度な書式設定のために、寄付ボタンがいくつか見落とされてしまったのである。

・ウェブに適した文章にしているかどうかという、コンテンツの問題は53%であった。わかりにくい情報や、情報の欠落、紛らわしい用語などもここに含まれる。

■地方支部と全国規模/国際規模のサイトとの統一を図る

 今回の調査でわかったことだが、情報不足や紛らわしさを別にすれば、ユーザーを嫌にさせた一番の原因は、地方支部とその上位団体との統一がまったくとれていないことにあった。

 先に述べたように、ユーザーが知りたいのは、彼らの地域で非営利団体がどのような活動をしているかについてである。しかし実際に地方支部のウェブサイトにアクセスしてみると、茫然とするページが待ちかまえていたのである。地方支部のサイトと、その上位団体のサイトとでは、見た目がまったく違うのが普通であった。同じ組織としての基本的な指針、たとえば色づかいの統一などを守っていないことさえあった。

 ユーザーエクスペリエンスの統一を組織レベルで図ることについて言えば、忘れてほしい。非営利団体の大半は、ウェブサイトの外観や操作感を統一したり、地域サイトの改善に手を貸したりすることで、ウェブサイト全体の存在感を飛躍的に強めることができる。
 寄付する決心をしてしまえば、あとは寄付の手続きを進んで、実際に寄付するまでの流れはまったく簡単であった。もっとも寄付ボタンがサイト上になかなか見つからないのだが。

 ユーザビリティに関する小さな問題は確かにいくつか見つかった。一方、大きな問題は、寄付金の送金に外部の支払いサービスを使用していることくらいで、これに当惑したユーザーも何名かいた。

 寄付の手続きは、ネット通販の会計手続きを簡素化したようなものであるため、ユーザビリティはおおむね良好であり、面倒な事態はほとんど起きなかった。デザイナー側は、どうすればネット通販の会計手続きをスムーズに進めることができるのかをわきまえており、ユーザーのほうでもその処理の仕方をわきまえているのである。

 とは言え、ユーザビリティに関するごく小さな問題をかかえたプロセスを修正すれば、寄付金は10%増えるかもしれない。運営費1,000万ドルで、オンライン寄付の割合も平均的な非営利団体の場合は、そうしたちょっとした手を加えるだけで、年間100,000ドルもさらに得られる可能性がある。

 寄付の手続き自体にもまだ改善の余地はあるが、ユーザビリティ調査ではっきりしたように、大きな問題とは言えず、今後10年間でオンライン寄付が5倍になる可能性をつぶすようなことにはならない。むしろ大きな問題は、コンテンツのユーザビリティがひどいことである。募金活動を改善するためには、わかりやすい言葉づかいにし、寄付者のいだく大きな疑問に答えることである。そうすれば、お金はあなたのほうへ流れていく。

※この記事はユーザビリティ研究者ヤコブ・ニールセン博士が運営するサイトuseit.comで連載中のコラム『Alertbox』の転載・翻訳記事です。
株式会社イードが運営する「U-site」では、博士からの正式な許可を得て同コラムの全編を日本語訳し公開しています。
《RBB TODAY》

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