Windows Embedded Compact 7 CTP発表、コンシューマ情報端末向け機能強化 | RBB TODAY
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Windows Embedded Compact 7 CTP発表、コンシューマ情報端末向け機能強化

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マイクロソフト OEM統括本部 OEMエンベッデッド本部 シニア マーケティング マネージャの松岡正人氏
  • マイクロソフト OEM統括本部 OEMエンベッデッド本部 シニア マーケティング マネージャの松岡正人氏
  • Windows Embedded Compact 7の特徴
  • デザイン、UIまわりのカスタマイズのためのツール群を用意
  • HDストリーミングなどリッチコンテンツの扱いも支援
  • Device StageでPCの周辺装置としての機能も実装しやすくなっている
  • フルブラウジング、Flash、SL、画面のマルチタッチインターフェイスなど、ミドルウェア以上の機能が組み込まれている
  • 業務用途では、Office文書との連携、シンクライアント端末を意識した機能も
  • ARMv7のマルチコア(SMP)もサポート
 マイクロソフトは4日、Windows CE 6.0 3の後継となる組込み用OSの新しいバージョン「Windows Embedded Compact 7」のCTP(Community Technology Preview)版の記者説明会を開催した。説明にあたったのは、マイクロソフト OEM統括本部 OEMエンベッデッド本部 シニア マーケティング マネージャの松岡正人氏だ。今回発表する新しいWindows Embeddedは、6月1日台北のCMPUTEXで発表されたものを、国内記者向けに説明するものとなる。

 マイクロソフトでは、Windows 7の発表にともない、Windows EmbeddedやWindows Automotiveといった組込み機器向けのWindows OSのバージョンアップやラインアップの再構築を展開している。2009年にはWindows Embedded Standard 7を発表し、2010年5月にはその製品出荷を開始している。

 今回発表されたWindows Embedded Compact 7(Compact 7)も、CEの新バージョンとして昨年からことあるごとに概要がアナウンスされていたものだが、CTP版が公開されたことで、より詳細な機能変更や特徴が明らかにされた。CTP版とは、古くはパブリックベータ版などと呼ばれていたもので、開発者やパートナー企業向けに公開して、最終的な製品に利用者の声を反映させたり、バグ検証などのフィールドテストを兼ねて配布されるバージョンのことだ。CTP版公開後は、市場からのフィードバックを吸収し、最終的な製品は2010年12月リリースを目指しているという。

 今回詳細が発表された機能と特徴を順を追って説明しよう。まず、「ブランデッドエクスペリエンス」として、デバイスのUI(ユーザーインターフェイス)機能を利用しやすいようにOSの機能として用意しつつ、そのカスタマイズもできるようにしている。タッチパネル操作など基本的なUIをテンプレートとしてサポートしながら、各ベンダーが独自の操作性やブランドイメージを確立しやすいように、カスタマイズ可能な範囲を広げ、そのためのツール群も提供するとのことだ。CE 6.0R3でもSilverlightやFlash Lightなどをサポートしていたが、Compact 7では、コンシューマ機器でよりベンダーの差別化要素を出しやすいように配慮されている。

 リッチメディアへの対応では、音楽、ハイビジョン動画などを統合管理するライブラリの強化、オンラインサービスとの連携をしやすくする、コンテンツの同期機能、課金サービスに対応すべくDRMコンテンツのサポートなどが正式に組み込まれた。ハイビジョン動画についてはストリーミング再生も可能で、DLNA 1.5をサポートすることで、デジタル家電との接続も確保した。

 Windows Device Stageと呼ばれる機能では、PCの周辺装置やデジカメ、オーディオプレーヤーなどとしての接続設定、プロファイルの管理が行える。たとえば、USB経由のMTPドライバがサポートされているので、高機能な携帯音楽プレーヤーへの応用が可能だ。もちろん、PCとの同期機能もサポートされている。

 ブラウザ関連の機能も、PCのブラウザと同様でFlash 10.1対応やHTML、CSSサポートなど通常のフルブラウザと同等といえるものだ。AJAXやJavaScriptもCompact 7用に最適化される。特筆したいのは、Compact 7からマルチタッチのAPIをサポートしたことだ。これによって、Compact 7を組み込んだデバイスは、2本指や両手を使ったジェスチャーインターフェイスを、マウスやキーボードと同じレベルで実装することができる。現在は、感圧式のタッチパネルのドライバをサポートしているとのことだが、静電容量式のタッチパネルにも対応予定があるそうだ。なお、このAPIは基本操作を一通り押さえているが、特定のイベントをフックすることで、オリジナルのジェスチャーも定義できるようになっている。

 PC連携やエンタープライズ対応では、PDFやOfficeドキュメント(Word、Excel、PowerPoint)も扱える。これは、APIだけのサポートではなく、Officeアプリが実装されていると考えてよいとのことだ。新クライアント端末としての用途では、RDP(リモートデスクトッププロトコル)がバージョンアップされ、Windows Server 2008との接続が可能となっている。Exchange/Airsync対応により、企業ネットワークへの電子メール接続も可能だ。

 開発環境は、Visual Studio2008が基本となる。VS 2010への対応はこれからとなるが、.NET Framework対応では、サブセットのサポートながら「プラットフォームテストフレームワーク」というデバイスパフォーマンスをレポートするテストツールを用意した。そして、動画や音声などリッチコンテンツを活用したアプリ開発では、Expression、XAMLを利用したソリューションを適用することができる。組込み機器の開発で、デバイスレイヤ、アプリロジック、リッチUIを切り離して開発することで、特殊スキルをもつ要員を育成せずに、短期間での協調開発が可能という。

 ところで、組込みOSといえば、従来はデバイス制御やタスク制御などプリミティブな機能に特化し、ファイルシステムやUIなどはミドルウェアやアプリケーションで対応することが多かったが、Compact 7では、さまざまなAPI、UIコンポーネント、ミドルウェアがサポートされるようになっている。この理由について松岡氏は、「ユーザー、パートナー企業からのニーズが高かったからです。現在では、ミドルウェアも購入する時代になっています。UI機能やミドルウェアなどの標準サポートは組込み機器でも必要という市場の声が高かったので取り込むことにしました」と述べた。

 以上のような特徴をもつCompact 7だが、実際にはどのようなデバイスや製品がメインのターゲットとなるだろうか。松岡氏によれば「マイクロソフトでは、正直、これまで成功したとはいえない」コンシューマ系の端末の市場を、このCompact 7で切り開きたいという。わかりやすい例でいえば、iPadやApple TVのような端末がまずあげられるだろう。

 もちろん、Windows Embeddedの系譜の中では、いちばん実績のあるWindows CEをベースにしており、フットプリントも最小構成では1MB前後からとなるCompact 7の、適用可能範囲は広い。プロセッサは、x86系、MIPSのほかARM V7にも対応し、マルチコア(SMP)もサポートしている。ハードウェアアクセラレーションを含むグラフィックまわりのパフォーマンスアップ、Windows 7ベースのネットワークスタック、Wi-Fi、Bluetooth対応、CellCoreによるGSM、3G通信への対応など、スペックから適用できる製品は、コンポーネントやソリューションの組合せにより多岐にわたる。

 なお、プロセッサについては、Compact 7からSHがサポートから外れている。国内のカーナビ製品では、SHプロセッサのシェアは無視できないものだが、これについては、Compact 7と同じ2010年末のリリースを目指しているWindows Automotive 7が対応するという。Windows Automotive 7はMotegi(モテギ)のコードネームで、現在のWindows AutomotiveとWindows Autoを統合したものとして開発が進んでいるものだ。
《中尾真二》
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