【富士通フォーラム2010(Vol.27)】資源消費なき成長にクラウドは有効な一手段――岡田昭広氏 | RBB TODAY

【富士通フォーラム2010(Vol.27)】資源消費なき成長にクラウドは有効な一手段――岡田昭広氏

エンタープライズ ソフトウェア・サービス

富士通 クラウドサービスインフラ開発室 室長の岡田昭広氏
  • 富士通 クラウドサービスインフラ開発室 室長の岡田昭広氏
  • クラウドが対応する市場。同社では新たな市場の開拓に向け、いくつかのトライアルも行っている
  • クラウド普及が本格化。最近では、部門ごとにバラバラに構築された社内システムの基盤を共通化するといった利用目的もあるという
  • オンデマンド仮想システムサービスはIaaSレイヤだが、NaaSレイヤのFENICS IIによる柔軟なネットワークも同サービスの特長となっている
  • IP-VPNを利用して、自社のネットワークとLAN接続し、プライベートクラウドとしても利用できる
  • データセンター内のホスティングサーバと構内接続して、ハイブリッドクラウドとしても利用できる
  • 農業クラウドのトライアル概要。分析と指示のサービスが追加されたことで、業務効率が格段に向上したという
  • 富士通沼津ソフトウェア開発センターの事例。コスト削減効果は大きい
 富士通フォーラム2010で13日、富士通 クラウドサービスインフラ開発室 室長の岡田昭広氏が「企業経営や社会へのICT貢献 ~クラウドコンピューティングによる変革~」と題して講演を行った。同講演では、富士通のクラウドへの取組み、オンデマンド仮想システムサービスの概要、クラウドの活用事例、クラウド関連ビジネスの今後の展開などが語られた。

◆クラウドの普及本格化で新たな市場開拓も

 冒頭、岡田氏は、金融危機、地球温暖化、エネルギーや食料・水の不足、振興国の経済成長など、現代社会を取り巻く諸問題を列挙し、それらをICTで解決していくという同社のスタンスを示した。「資源消費なき成長」にはICTの貢献が不可欠とし、ビジネスの強化や社会インフラ改革に向けて適切な手段を提供していく中で、「クラウドは有効な一手段」であると位置付けた。

 クラウドがターゲットとする市場は幅広く、基幹システムやフロントシステムといった企業システムについては、すでに至る所でクラウドへの移行が始まっている。これはいわば既存市場だ。一方で、エネルギー、住民サービス、環境、交通、農業、医療といったネットワーク社会インフラもクラウドのターゲット市場になりうる。こちらは新たな市場という位置付けになる。

 岡田氏によれば、クラウドコンピューティングによるコスト削減効果などもあり、既存市場の売り上げが落ちる分、新たな市場を開拓する必要があるのだという。実際に同講演の後半では、そうした市場の開拓事例も紹介された。

 クラウドには、企業が自社専用にクラウド環境を構築するプライベートクラウド(所有するクラウド)と、社外のクラウドサービスを利用するパブリッククラウド(利用するクラウド)とがある。富士通では、両者を併用するハイブリッドクラウドインテグレーションという考え方も同時に推し進めていく。すでにクラウドの普及は本格化しており、同社の2009年度のクラウドをキーとした商談案件は1,600件、月次商談数は前年に比べ3倍強に伸張したという。

◆新しい利用法も可能な柔軟性の高い新サービス

 続いて、同社が5月末から段階的に提供予定のオンデマンド仮想システムサービスが紹介された。同社のクラウドサービスは、SaaS、DaaS(Desktop as a Service)、PaaS、IaaS、NaaS(Network as a Service)の各レイヤに分類でき、いずれのレイヤについてもすでに何らかのプロダクトが提供されているが、このオンデマンド仮想システムサービスは、IaaSレイヤでの新たなサービスとなる。

 具体的には、富士通のデータセンターの大規模リソース上にユーザ専用の仮想システムを構築して利用することができるパブリッククラウドサービスだ。ユーザは、同サービスのポータルにログインし、仮想サーバを構築し、利用することができる。同サービスの特長は、設計レス、オンデマンド、セルフサービス、安全性・信頼性の4つだという。

 まず、設計レスについては、多彩なテンプレートを用意しており、サーバ単体の構築だけではなく、ファイアウォールによりDMZを設置した構成や、ロードバランサによる負荷分散構成など、複雑な複数台構成の構築も容易に行えるという。

 オンデマンドでは、リソース配備実行から1時間以内で利用可能になる短いリードタイム、利用時間に応じた料金体系、状況に応じてリソースの増減ができるスケーラビリティなどの特長があげられる。

 セルフサービスとは、リソースの配備から運用・保守まで、すべてWebブラウザから行えるという意味とのことだ。仮想サーバの作成/削除やリソースモニタだけでなく、増設ディスクの追加/削除/接続/切断、仮想サーバの起動/停止/バックアップ、課金状況の確認なども含まれる。ハウジングサービスやホスティングサービスでは、データセンター内のスタッフの手を煩わせるような作業もWebから行えるのは便利だ。

 安全性、信頼性については、端末からバックエンドまで全処理経路にわたってセキュリティを確保しており、仮想サーバのCPUやメモリ性能保証、システムの多重化によるデータの保護、自動フェイルオーバー機能によるダウンタイムの極少化などが提供されているという。

 また、同サービスの極めつけの特長として、IP-VPNや広域イーサ経由での利用とデータセンター構内接続での利用が紹介された。IP-VPN経由の利用では、自社内のLANとVPN接続することで、同サービスをプライベートクラウドとしても利用可能になるという。そして、同社ホスティングサービスの利用顧客には、クラウドサービスとの構内接続環境サービスが提供可能で、これを利用するとハイブリッドクラウドとしての利用もできるという。

◆沼津ソフトウェア開発センターでは年間7億円削減

 同社のクラウド活用事例も紹介された。岡田氏が冒頭でも述べたように、同社は新しい市場の開拓に向けていくつかのトライアルも実施している。その典型事例が農業クラウドだ。

 これは、農業を企業として運営するためのICT活用として、3年前から取り組んでいる案件だという。当初は、圃場状態やノウハウなどの業務の見える化を実施すると同時に、センサー技術を活用して生育画像や気象状況および市況をデータベース化した。ところが、エンドユーザからは、そのデータベースをどう活用すればよいのかわからない、という声が聞かれたという。そこで、さらに分析と指示を加えた。興味深いのは分析サービスにおける予兆監視だ。過去の失敗例からリスク予想し回避するためのものだが、岡田氏によれば、金融業のリスクヘッジシステムや製造業の歩留まり予測システムを応用したという。指示については、施肥や収穫などの作業案内、作業計画作成、圃場情報の提供などだ。これにより、「何をすればよいのか」「この作物を作るにはどの圃場が適しているのか」といったことがわかり、より一層業務の効率化が図られたという。

 また、既存市場の活用事例として、富士通の沼津ソフトウェア開発センターの事例が紹介された。同センターは国内外10拠点、利用者4,700人のソフトウェア開発センターで、クラウドの導入で1,800台のサーバを900台に集約・仮想化し、開発環境も348種あったものを51パターンに整理統合、開発環境の貸出手順を自動化して、稼働状況・課金の見える化も行ったという。投資額は3年間で11億円、結果、削減できたコストは年間7億円にも達するという。加えて、CO2排出量は1,340トン削減できたとのことだ。これは想定取引価格で1,600万円にも相当する。

◆今後はグローバルに展開

 最後に岡田氏は、同社のクラウド関連ビジネスの今後の展開を語った。同社では、プライベートクラウドとパブリッククラウドの両方を強化していくという。また、グローバル展開を視野に入れており、世界共通のクラウドプラットフォームで、2010年度に順次、オーストラリア、シンガポール、米国、英国、欧州大陸へと展開していく予定だ。

 こうしたビジネスの広がりを受け、同社では、クラウドコンピューティンググループを新設、新しい市場を切り拓いていくという。
《竹内充彦》

関連ニュース

特集

page top