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【総務省】P2P等の帯域制御に関する運用ガイドラインを公表

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 23日、総務省と通信事業者4団体は、一部のヘビーユーザによるP2Pトラフィックがネットワークの帯域を占有することで一般ユーザーへのサービスが阻害されている現状と、そのためISPなどが行っている帯域制限についての運用ガイドラインを公表した。

 総務省では、平成18年11月から「ネットワークの中立性に関する懇談会」を開催しており、平成19年9月20日にまとめた最終報告書で指摘されていた、P2Pトラフィックによるネットワーク帯域の過度な占有について、日本インターネットプロバイダー協会、電気通信事業者協会、テレコムサービス協会、日本ケーブルテレビ連盟の4団体とともに現状の分析や対策を検討していた。今回発表された「帯域制御の運用基準に関するガイドライン」は、プロバイダや通信事業者が独自に行っていたP2P対策や帯域制限について、ユーザーなどから出されている「通信の秘密」を侵害しているのではないか、安易な帯域制限は事業者のサービス提供義務を軽減しユーザー利益を損なうといった意見に対応するため、帯域制限のあり方や運用基準を示したものだ。

 ガイドラインでは、その対象をISPや通信事業者とし、帯域制限の種別としては、特定アプリケーション(ポート制御も含む)を制限する方法と、ユーザーごとの転送量の基準を決めて制限する方法が示されている。基本原則としては、ネットワークの混雑は本来設備の増強によって対処すべきもので、帯域制御はあくまで例外的な状況において実施すべきものだと明記した。

 帯域制御が合理的と認められる例外的な状況については、特定のヘビーユーザーのトラフィックにより他のユーザーの円滑な利用が妨げられている状況が、客観的データによって裏付けられている状態としている。「特定のユーザー」や「特定のアプリケーション」については、ISP側のネットワーク条件や逼迫状況、あるいは緊急性など総合的に判断する必要があるため、具体的な基準は示していない。なお、P2Pファイル交換ソフトによる著作権侵害を防止する目的で帯域制限をかけることについては、合理的な状況ではないとしている。P2Pファイル交換ソフトによるセキュリティ問題への対処も、単純なアプリケーションの種類による一律の帯域制限ではなく、ユーザーごとに同意を得た上で設定されるべきものとした。

 「通信の秘密」の侵害については、そもそも、帯域制御の前提となるヘビーユーザーのトラフィック占有をチェックする行為とそれによって制限を実施することが侵害行為であるとした。人力によらず制御装置などが検出して制限をかける行為も、その制御を行う主体はISPや通信事業者なので、通信の秘密を侵害していないとはいえないとしている。ただし、この違法性行為も、緊急時の刑法の正当防衛や緊急避難が成立する場合、通常時でも政党業務行為に相当する場合は、その違法性が阻却される。

 帯域制限の実施にあたっては、通信当事者の明確な同意がなければ行ってはならず、同意のとり方も規約などに明記してあるだけでは不十分で、個別の同意確認が必要とした。個別の同意確認の方法は、新規ユーザーの場合、契約書に帯域制限に同意する項目を設けて明示的に意思を確認すること。既存ユーザーには個別メールなどで同意の返信を受けることとしている。

 その他、ユーザーに自分のトラフィックがどれくらいなのか通知したり確認できるようなサービスの導入を勧めている。P2P以外の動画トラフィックや帯域制限ではなく課金による対応などは今後の検討事項となっている。

 まとめると、現状行われている各社の帯域制限をほぼ追認する内容だが、実施にあたっては慎重にという内容だ。アプリケーションやトラフィックの種類や状況を具体的に限定していないのは、どんなアプリケーションや通常の使い方でも結果的に制限される可能性が残ってしまうが、帯域制限の本来の目的がネットワークの安定運用にあるとしたら、特定ソフトや行為を制限するより、ガイドラインとしてポリシーを明確にすることを優先させたと思われる。
《中尾真二》
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