シンプルに! 無駄をなくせばIT投資が活きる——マイケル・デル | RBB TODAY

シンプルに! 無駄をなくせばIT投資が活きる——マイケル・デル

エンタープライズ その他

マイケル・デル氏
  • マイケル・デル氏
  • 未整理なデータが増えていく。危機感を受けずにはいられない
  • シンプル化の3本柱
  • 「シンプル化」サイト(日本語版)
  • 「シンプル化評価ツール」は11月末からスタート予定
 米国コンピュータ最大手、デル社の会長兼CEO(最高経営責任者)のマイケル・デル氏が来日し、東京で記者説明会を開催した。日本とアジア太平洋地域について、「ITのシンプル化」戦略を発表した。デルが創業以来顧客に提案し続けているITコストの削減について、従来の製品ごとのソリューション、サービスごとの提案というスタイルをさらに一歩進め、顧客企業に対するトータルなIT環境資源をコンサルティングしていく。そのキーワードとなる「ITのシンプル化」は、正しいITコストの使い方と、省電力で環境と企業の両方に優しいITインフラのあり方を示すものだ。

 「デルは創業以来23年間に渡って成長を続けてきた」と語りはじめたデル会長は、日本市場において「15年で30億ドルのビジネス規模になり、外資系PCメーカーにとっては最大のシェアを獲得した」と続けた。日本市場における第1〜第3四半期のデルのシェアは総出荷量で3位、デスクトップPCの出荷量では2位である。これが牽引する形でアジア地域においても第3四半期に過去最高の140万台を出荷し、第3四半期のデータで20億ドルの売上を達成した。20億ドルといえば10年前のデルの総売上に匹敵する数字である。この成長にはデル・リアルサイトに代表されるような店頭での販路の拡大政策など、直販オンリーにこだわらない斬新な施策の効果が現れている。

 デルの成長に寄与している要素は、アジア市場におけるインターネット、イントラネットの普及だ。アジア市場ではインターネット利用者が過去7年で302パーセントも増加しており、企業のインターネットや、IPネットワークの活用が進んでいる。さらにアジアでは10億人近い潜在的なインターネット利用者が見込まれている。2008年の経済成長率も7パーセントになるという予測もある。デル会長のスピーチでは、「これらの市場で活躍する日本企業のITへの投資は世界最高レベルに到達している」というシンクタンクのコメントも引用された。

 しかし、ここでデル会長は問いかける。「企業のIT投資は有効に使われているだろうか。複雑化するITインフラの保守や更新にコストが割かれており、新しいビジネスやソリューションへの投資が停滞してはいないだろうか」と。つまり、ITシステムが複雑化するあまりデル会長は、企業のITへの投資が、企業の情報戦略や顧客への新しいサービスのためではなく、“ITのためのIT投資”になってしまうことを警告している。

 未整理のまま、活用されることのないデータが蓄積され、無駄なストレージ機器が増えていく。部門ごとにバラバラに機器やソフトウェアが導入されてしまったため、事業部を横断して情報を活用するためらに、新たな機器やソフトウェア、ネットワークが必要になる。これらは複雑化の弊害だ。IT機器の導入コストの無駄、ソフトウェアライセンスの無駄、増え続ける機器のための消費電力の無駄、それらの機器を設置する場所の無駄が発生する。デル会長は「電力のコストが高い日本では、ITの複雑化は企業の収支の重大な要因になると語った」。この言葉は電力だけではなく地代コストの高い日本の企業にも響いてくるだろう。電力の無駄を認識すれば、企業の環境への貢献度も問われる事態だ。

 事実、2006年に161エクサバイト(exa=10の18乗、テラ、ペタ、エクサ…と続く)だったデジタル化データは、このままでいくと2010年には6倍の988エクサバイトになる勢いだ。しかもその95パーセントは未整理のデータ、ただ保存しておくだけで塩漬けになるデータになるという。また、今後5年間でネットワークに接続される機器は、過去15年間に接続された機器よりも多くなる。こうした事態に早く気付き、対応できる戦略を持つことが企業にとって重要になる。デル会長がわざわざ日本に来日した今回の発表は、デルこそがITのシンプル化を推奨し、最悪の事態を救える最良の選択である、とアピールするためである。

 では、デルの提唱する「ITのシンプル化」とは何か。ひとつめは「ITを迅速に配備」し、無駄な時間を排除することである。シンプル化のためにデルの工場で設計されたコンピュータ製品は迅速に顧客に届けられ、到着後直ちに顧客のネットワークに接続し運用が可能になっている。ふたつめは「ITを効率的に運用」するために、顧客に対してシンプル化を推進するコンサルティングを行う。

 「ITによる問題解決はふたつある。複雑化とシンプル化だ。他社はどんどん機器を追加して複雑化していく。しかしデルはシンプル化を進め」とデル会長は語り、ひとの例として新生銀行を挙げた。メインフレームをオープン化、仮想化する過程で、性能の良いひとつの機器によって複数の古いデバイスを置き換えていく。シンプル化とは管理しやすいソリューションを形成し、保守のコストを削減していくことでもある。

 3つ目は「ITを賢く発展」させること。シンプルなシステムは保守のコストを削減できるため、TI予算を保守ではなく発展のために振り向けることができる。もちろん発展の方法もシンプル化の戦略に則ったものであり、保守のコストは必要最低限になる。単なるスケールダウンではなく、ITの各階層のスタックを解決し、柔軟運用を行うことで、スケールのポテンシャルを最大限に引き出すソリューションを提供する。「米国のある雑誌では、各社のITソリューションを比較した上で、ある会社で78個もの機器が必要だったシステムが、デルではたったの2箱で実現できたと評価された」とデル会長は胸を張る。

 複雑化しがちなITソリューションをシンプル化することで、非効率な作業を減らしコストを削減できる。その魅力的なプロセスの第一歩は、デルがWebサイトで提供する。すでに日本語サイトは公開されており、シンプル化戦略や顧客の事例が紹介されている。米国サイトでは「シンプル化自己評価ツール」も提供されており、これは日本では11月30日から提供される予定だ。ここでは顧客に対して、数カ年に及ぶシンプル化達成プランを作成する「ITシンプル化・アセスメント・サービス」も行われる予定だ。

 デルはシンプル化のソリューション提案に合わせて、グリーンなITを実現する製品設計も進めている。例えばデルの最新企業向けPCでは従来製品より78パーセントも消費電力をカットしている。サーバー製品も消費電力を半分にする製品を登場させている。これにより、データセンターの消費電力の制限のため、新たなデータセンターを作るという無駄を省くことになる。電気と土地が高い日本の企業にとって、このスピーチには動かされるに違いない。

 デル会長はこのほかに、IT企業の環境への責任として、従来は個人の顧客に対して行った「PLANT A TREE FO ME」という植樹プロジェクトの企業版を呼びかけている。「PLANT A FOREST FO ME」と名付けられた取り組みは、AMDやsalesforce.comなどの企業が賛同している。デル会長はシンプル化とグリーン化を日本やアジアの顧客に強く訴えた。
《杉山淳一》

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