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【特集・NGN】NGNでの主導権争いはすでにはじまっている

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日本ヒューレット・パッカード マーケティング統括本部セグメントマーケティング本部本部長の九嶋俊一氏
  • 日本ヒューレット・パッカード マーケティング統括本部セグメントマーケティング本部本部長の九嶋俊一氏
  • HP SDP階層型参照モデル
  • HP SDPアーキテクチャ
  • Felica技術を用いたID連携サービス
  • サイバーにも広がるFelica World
  • ICAS
  • ICASによってモバイル、PC、リアルの接点でアクセスが可能
  • 物理的な実装は上海
 「欧米各国の取り組みの目的は、主にコストリダクションですが、日本では全く違う課題を与えられています」
 日本ヒューレット・パッカード マーケティング統括本部セグメントマーケティング本部本部長の九嶋俊一氏は、NGNについてこのように話す。欧米ではネットワークが老朽化してきており、オペレーションにかかるコストは非常に高くなってきている。ここでネットワークを入れ替えてオペレーションコストを一気に下げてしまおうというのが第一の目的。これに対して日本の場合は新しいビジネススキームを作ることが目的という。
「そもそも、NGNの定義は今と昔とでは、それほど変わらないんです。もともとは研究者の世界の話なのでロジカルなものでしかなかったんですが、総論としてSIP(Session Initiation Protocol)、IMSを使っていくというところが大きなところではないでしょうか」

 しかし、同氏が警告するのは、NGNがクローズドなネットワークになってしまうことだ。
「ITから派生したIPの標準がテレコムの標準として使われるのはすごいこと。それが外から使われるようになってITとの親和性がものすごく高くなるので市場が融合するのはご存知の通りかと思いますし、実際に現在、ネットワークはどんどんオープン化の方向へ進んでいるようです。」(九嶋氏)。

 コアネットワークがオールIPになり、ネットワーク制御がIMSに、具体的にはSIPというプロトコルが使われる。これだけでは意味がなく、この機能が外に公開されたときにはじめて価値が生まれてくる。

 ITU-Tによると、NGNはネットワークプラットフォームとサービスプラットフォームに別けられ、サービスプラットフォームはさらにIMSとSDPで構成される。このなかで氏が強調するのがSDP(Service Delivery Platform)だ。
「(SDPで)今注目されているのは、外部に対して内部の機能を公開するためのものとして期待されています」(九嶋氏)

 ちなみに国内できちんとSDPを実装している通信事業者はないというが、ヒューレットパッカード社はSKテレコム社と組みSDPを提供しており、またスペインのTelefonica Moviles Espana社では、HP SDPを利用し、外部のプロバイダにネットワークサービスを公開し、パートナーシップを組む機会を増やしているという。

 SDPはOMA(Open Mobile Alliance)が出している代表的なリファレンスアーキテクチャで、いわゆる整理箱。つまり、通信事業者のサービスを提供する基盤として、本来こういう機能群が、こういう階層であるべきだろうと決めているものだ。もともとSDPは通信事業者のなかのサービスの開発期間を短縮する、複合的なサービスの開発をしやすくする、などの目的で検討されてきたもの。OMAが通信側とIT側のスキルを融合していこうということに積極的で、ルーツとしてはParlayという団体があげられる。
「この団体は通信事業者とネットワーク装置のベンダーが集まって結成されたものでした。ここではCORBAをインテグレーションプラットフォームとして採用しました。しかし、ITの世界ではCORBAを使ってプログラムをかける人がそんなにいなかったことなど、ITのエンジニアにとっては使いやすいものではなかったんです。Parlayはテレコムの世界で開発してきた人が見ないとわからないような標準化、インターフェースのきり方をしてました」。ここで登場したのがParlay Xで、WEBサービスのインターフェースをベースに新たな活動がはじまった。

 SDPのコンセプトは下記のようになる。

・アプリケーション開発の簡易化と開発コストの抑制
・アプリケーション開発者の拡大
・サードパーティーに対するネットワークリソースの開放、
・オープンかつスタンダード・ベースなアーキテクチャ

ヒューレット・パッカード社では、同社のSDPをHP SDPとして、参照モデルを説明している。

「結局はIDがあって、重要な機能が2つなければいけない」(九嶋氏)
 2つの重要な機能というのはプロファイルをとるインタフェースとプッシュするインタフェースだ。前者はプレゼンスとかロケーション(位置情報)と呼ばれるもので、あるサービスを提供するにあたって意思決定の元情報となるものを提供するインタフェース。後者は適切なシーンにおいて適切なデバイスに情報をプッシュするインタフェースだ。これらがループするようになって、はじめて外から見たときに価値がでてくる。また、これらは決済までつながってクロージングをかけてしまうことが大切だ。つまり、IDを持っている人たちがどれくらいモノに接触しているか?それとIDの数との掛け算でIDの価値が決まる。それをいかに決済に結びつけることができるか?そのためのシナリオをいくつか作り、そのプラットフォーム上に企業の価値がのってくるという構造だ。NGNの世界では、このようなやり方で、各産業の主プレーヤが、市場のシェアを競い合う形になる。

 「通信事業者がNGNを実装するのは2年後くらいになってくるだろう」と九嶋氏は話す。しかし、現時点ですでに使えるものもある。IDと決済という部分で九嶋氏が例を挙げたのが、“FeliCa”テクノロジだ。もともとヒューレット・パッカード社は通信事業者向けの課金やオペレーションのソリューションを提供することに実績があったが、この通信事業者でのノウハウを注ぎ込んで開発した「HPのFeliCa対応サーバ製品であるHP  IC-Chip Access Server for FeliCaはNTTドコモの903iシリーズから搭載の始まった次世代モバイルFeliCaチップに対応している唯一のソリューション」だ。ちなみに次世代モバイルFeliCaチップでは、メモリ容量も多くなり、文字通りおサイフに入る機能が増えている。
「WEBサービス化を待たなくても、FeliCa技術を用いた高セキュリティーの認証でネットワークにログインし、さらに認証のフェデレーションが可能になる。つまり、認証をセキュアにサービス間で連携することが可能になる」「NGNの基盤がととのってくることで、今のFeliCa技術を使った認証やそのフェデレーションが次の世代に生きてくる」
と九嶋氏は話す。

 また、「我々が絶対にやるべきだと考えている」ことの例として挙げられたのは、SIPを使ってのコールコントロールであるという。将来的にはショートメッセージをプッシュするインターフェースとして活用していくことも考えられる。たとえばコールセンターは、SIPはあらゆるメディアに対してコールコントロールができる。それに適切なコンテンツをメディアにのせて適切なデバイスにする。一番シンプルなのがショートメッセージで、プッシュできる唯一のテクノロジーだという。移動中のユーザに何かメッセージを残したいと思った場合に、ショートメッセージか何かで送られる。ユーザーが家におりかつPCを使っていることが明確な場合には、もっと魅力的な動画像などを使った情報提供の仕方が考えられる。さらに同じく携帯を使っていても、止まっているときと移動中によって適切なメディアは何なのかが分かれてくるだろう。NGNの上で、IMSがSIP制御のプラットフォームになり、それを使ってFMC的なサービスを展開しようとするとこのような形になるという。 

 現在、ヒューレット・パッカードは、物理的なセンターを上海に置き、HP Service Marketplaceを展開している。九嶋氏によると、HP Service MarketplaceはSDPのウェブサービス機能と同じものだという。「現在は情報ポータル的なものにしかなっていないが、外部からテスティングし開発できるような環境を作っていこうとしている」(九嶋氏)。
日本では前述したFelicaのような展開のみだが、NGNではこのような取り組みが広がり、マーケットが作られていくことが期待されている。

 現在メーカーはNGNに必死だ。「(各メーカーの)本音は分かりませんが、やはりNGNがキャリアの中だけのものになっては困るという思いがあると思います。しかし、それはITベンダーにとってもそうだし、キャリアにとっても同じ。ITの次世代のプラットフォームになるところに強いメッセージを送り込んでいくことは非常に重要です」「ほかの業界も含めてIDから決済までのプラットフォームの争奪戦がはじまっている。その主導権争いに入らないわけはないですよね」
と九嶋氏はコメントした。
《RBB TODAY》
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