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【WiMAX World USA 2006 Vol.3】Clearwire社が順調なビジネス展開をアピール

ブロードバンド その他
 欧米でWiMAXだけのサービスを提供している事業者であるClearwire社のBenjamin G. Wolff氏が行った講演について報告しよう。
  •  欧米でWiMAXだけのサービスを提供している事業者であるClearwire社のBenjamin G. Wolff氏が行った講演について報告しよう。
  • 同社のサービス、簡単、高速、ポータブル、高信頼、手ごろ、がコンセプト
  • 同社のサービス提供の経緯、すでに162000人の加入者を集めている
  • サービス料金。米国と欧州ではサービスメニューが異なる
  • 同社のユーザーのサービス利用目的
  • 同社のユーザが以前に使っていたサービス。有線ブロードバンドからの乗り換えが半分以上
 欧米で“WiMAXだけ”のサービスを提供している事業者であるClearwire社のBenjamin G. Wolff氏が行った講演について報告しよう。伝説のCraig McCaw氏が展開するややミステリアスな同社の動向は注目が高く、会場は期待に満ちた雰囲気で同氏のプレゼンテーションを見守っていた。

 同社が提供しているサービスは、簡単(Simple)、高速(Fast)、ポータブル(Portable)、高信頼(Reliable)、手ごろ(Affordable)な、いわゆる半固定の無線インターネットサービスである。クリアワイヤの設立は2003年10月である。1年後の2004年9月には最初のサービスを開始し、最初の30日で人口35万人の市場で1000人の加入者を獲得したという。その後も順調にサービスを拡大し、2005年5月には21の都市でのサービスを行い、同年末には加入者は50000人を超えた。2006年9月現在、海外3都市を含むルーラル、サブアーバン、アーバンの31の地域、人口560万人の市場に対してサービスを提供しており、162000人の加入者を集めている。サービスの普及率はサービス提供から15カ月が経過したある地域では15%に達するという。同社は米国のトップ100のMSA(Metropolitan Statistical Area、大都市統計地域)の85%の人口をカバーする2.5GHz帯ライセンスを保有しており、今後もサービス地域を拡大していくという。

 ではどんな人が同社のサービスを利用しているのだろうか。なお、同社のサービスは米国で下り最大768kbpsで29.99ドル/月、1.5Mbpsで36.99ドル。欧州では1Mbpsで28.99ユーロ、3Mbpsで38.99ユーロである(日本の基準から見ると決して安いサービスとはいえないが、欧米は事情が異なるのでその点は割り引いて考える必要がある)。

 まず、ユーザーの属性だが、個人利用が64%と多数を占めており、ビジネス利用は11%、両方が目的の人は17%である。ビジネス利用は建設業、不動産業がポータブルなネット接続として利用していることが多いという。注目は同社のユーザーが以前に使っていたサービスである。これは有線ブロードバンドが58%、ダイヤルアップは32%、インターネットは未使用だったユーザーは10%に過ぎないという。

 上記の貴重なデータからは何が読み取れるだろうか。まず重要なことは、ユーザーが今までブロードバンドゼロ層(ブロードバンドが提供されていない地域や住居に住む人)に限定されていないということだ。これは現時点ですでに半数以上のユーザーが他のブロードバンドからの乗り換え組であることを示している。同社が公表したユーザーの購入動機によると、スピードだけでなく、シンプルさやポータビリティに加えてサービスがバンドルされていない点が上位に入っている。国内でも細々と提供されてきたFWA(固定無線アクセス)によるラストマイル手段ではない、新たな需要が存在することが証明されているのではないだろうか?

■ブロードバンドの「パーソナル化」を実現するWiMAX

 Clearwire社のWolff氏によると、現在の無線インターネットは、1980年代の携帯電話(移動電話といった方が正しい)と似ているという。1980年代後半、セルラー方式の電話サービスの普及率は1〜2%と考えられていたが、予測は外れて、全米の携帯電話の普及率は70%に達したという。つまり、1980年代当時、一部の特殊な人を除いて、誰も電話を持ち歩くものとは思っていなかったわけだが、携帯電話は電話を場所や組織のものからパーソナルなものに変えることで、新たな利用形態と需要を生み出し、電話サービスの主役に躍り出た。そして、無線ブロードバンドのClearwire社はすでにサービス地域での人口普及率で2〜3%を達成している。

 インターネットへの接続手段である有線ブロードバンドは固定電話と同じく家庭のインフラとなり、今後も存在し続けるだろう。少なくとも屋内利用の無線LANはコードレス電話と同じく、配線不要の便利なツールでしかない。しかし、いつでもどこでも使える無線ブロードバンドが実現すれば、それは携帯電話と同じ力をもつことになる。Clearwire社の事例からそんな可能性が見えてきているのではないだろうか。

 重要なことは、ブロードバンドのアプリケーションやコンテンツはインターネットにあるという事だ。インターネットにつながらない端末は意味が無い。あと欠けているのは、パーソナルなインターネットを使いこなす端末だけだ。ノートPCやPDAの発展系への模索は続くし、米国のビジネスマンの間で普及しているBlackBerryやMusicGremlinなどからもそのヒントは見えてきている。そして、Wi-Fiと同じ、端末の自由な開発環境を提供しているWiMAXがパーソナルな無線ブロードバンドに一番近い所にあるのではないか。

 WiMAX World USAの基調講演から、「パーソナルモバイルブロードバンド」というあまりにも新味に欠ける言葉の奥深くに隠された意味と、自信に満ちた参加者たちが抱く期待を、リアリティをもって感じる事ができた。携帯電話の文脈だけでWiMAXを捉えていては、WiMAXの本質を見誤ることになる。これだけ分かっただけでも、東京から十数時間をかけて、わざわざボストンまで来た甲斐があったというものだ。今後もWiMAXエコシステムの住人たちの動きには要注意である。

(干場久仁雄(株)IRIユビテック シニアコンサルタント)
《RBB TODAY》
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