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検索会議今回のテーマは「非検索」〜ゲストは増井俊之氏と茂木健一郎氏

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第4回は「“非”検索会議 Sponsored by Yahoo! JAPAN」
  • 第4回は「“非”検索会議 Sponsored by Yahoo! JAPAN」
  • 情報をいかにして見つけるかという本質から、検索に迫る
  • 橋本大也氏(情報考学 Passion For The Future管理人)
  • 田口元氏(百式管理人)は、独特の虫食い式テキストでプレゼン
  • 増井俊之氏(工学博士、元産業技術総合研究所 研究員)
  • 増井俊之氏考案の「AssocWiki」。シンプルながら可能性を感じさせるシステム
  • 茂木健一郎氏(脳科学者、ソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー)
  • 脳の断面図を引用して、人間の行動原理から「検索」を考察する
 “無敵のビジネスマン・生活者”を目指す無敵会議の一つ「検索会議」。

 その第4回目が「Yahoo! JAPAN 検索」協賛で9月28日にヤフー社内 大会議室にて開催された。しかも今回は検索だけでなく、広くウェブの未来を探る、という意味で「“非”検索会議 Sponsored by Yahoo! JAPAN」というパラドキシカルなタイトルを掲げての「検索会議」となった。

 おなじみの橋本大也氏(情報考学 Passion For The Future管理人)と田口元氏(百式管理人)に加えて、今回の『非』検索会議では、特別ゲストとして「情報検索」「ユビキタス」の専門家として増井俊之氏(工学博士、元産業技術総合研究所 研究員)、「認知科学」「脳科学」の専門家として茂木健一郎氏(脳科学者、ソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー)の二人も加わり、『生活者に選ばれるインタラクション・デザイン』などについて、最新動向紹介と全員参加のディスカッションを行った。

 第1部は「検索しないで情報を見つける非検索術」と題して橋本大也氏が登壇。

 まずは現状の確認としてWeb2.0の考察から会議はスタートした。橋本氏は「情報を引き出すのを支援する仕組みがWeb2.0サービス成功の鍵」とし、キーワード検索以外の方法で情報を探すことが多くなっていると実感しているとのこと。「一日に200数十回、キーワード検索しているが、それ以上に違う形で情報を引き出している」というのがまず現状で、情報をフィルターしつつ引き出す具体的方法として、『RSSリーダー+検索エンジン』(検索結果のRSSを登録しておく)、『ソーシャルブックマーク』などを紹介。さらに「多数のみんなの意見は案外正しい」ということで、「ブログ読者に聞く」「はてな人力検索に聞く」などの『みんなに聞く』という方法紹介とともに、その検証が“案外”正しかったというエピソードを披露した。そして一次元高いところを検索できる『一覧して眺める』方法の具体例としては、taggy.jp、popurls.com、ヤフー地図情報などが紹介された。

 そして最後は「考えるのが大切」とし、事例紹介を締めくくった。

 第2部は「選ばれるサイトとは何か?」と題して田口元氏が登壇。

 「機能を増やすほど、コンプリートするのが大変。シンプル=心理的にスッキリすることで競争優位を保つ」として、百式関連サービスのUIを例に「選ばれるサイトデザイン」を説明した。『ツールより理論をまず覚えるのが大切。“Decision vs Choice”(決まった物を使わせるか、相手に選ばせるか)ということでは、相手に選んでもらいたい。そのためには理論がまず大切』『目指したのは最速の導入で、使い始めるまでに時間をかけさせてはいけない』『あえて比較してもらう。すっきりしていないものを見せて勝負する。そして選んでもらう』『サポートなどで、まずボクを信用してもらう』『結果を出してもらう。ただツールを使って終わりでなく、使ってパフォーマンスをあげてもらう』という5項目を「選ばれるサイト」のポイントとしてあげた。

 最後に、2006年の忘年会議であげられたトレンド「悪魔は細部に宿る(フィニッシュが甘い製品はワンクリックで逃げられる)」を紹介し、「スッキリシンプルに!」と、まさにそれを体現したマシンガントークで締めくくった。

 第3部は「情報整理の決定版は存在するか」と題して増井俊之氏が登壇(予定タイトル「情報検索とユビキタスの現場から」は変更)。

 開口一番、「ジョブスに会わされて、いつ来るのと聞かれた。アップルも検索とかやるんでしょう。来いってことなんで、行きます」と10月1日からアップル社に転職することを発表し、会場を沸かせた。

 キーワード検索花盛りな情報検索に対して「東京の図書館のリスト」(探せそうだが、意外にも探せないらしい)、「盛り上がっている掲示板」、「下北沢の宴会で会った人」、「去年の展示会で見たデモ」などをあげ、その解決のアイデアとして、『人に聞く』『位置情報を使う』『時刻情報を使う』『頑張って索引を作る』『データマイニングを行う』といったものをあげ、その具体的な実装と活用例を紹介していった。「全文検索は基本的に便利だが、自分の文書にしか適用できない、ブックマークに適用できない。サイトや画像を検索できない」として、そうでない手法を紹介。たとえば本棚.orgにおける本棚演算で「萌え専科」に登録された本を持っている人の本棚同士で照合を行うことで「萌え本」の代表作を抽出したり(プログラミング言語Cは萌え本読者必須という、意外な結論も明らかに)、「タグ付けはダサいと思っていたけど、案外バカにできない」としてただただし氏の事例を紹介していった。

 さらに、より洗練された手法として、あらゆるものに索引を付ける「索引ナビゲータ」、時刻やコメントなどのタグの“距離”で情報を関連づける「近傍検索システム」、そして、箇条書き限定ながらリンクのリンクまで表示する「AssocWiki」(非常に便利に感じたが、氏自身は「均質で大きなデータが構造化しにくい」といった問題点をあげている)の3つをデモンストレーションし、今後はこれらを融合して“理想の検索術”を目指すとした。

 そして第4部は「認知科学と脳科学の現場から」と題して茂木健一郎氏が登壇。

 検索しても、その結果リンクをさらに選択してジャンプする現在の構造から、「検索するとは選ぶことである」とし「人間の脳は検索はもっとも不得意。選択がもっとも得意」という観点から、現在のインターネットの行動原理として「クリックエコノミー」というタームを掲げた。あらゆる企業は、いかにクリックさせるかにしのぎを削っているわけだ。しかし「脳の嗜好性はどんどん変わる」というわけで「クリックエコノミーもUtility(効用)という概念に取り込まれる」「嬉しいことがあるとドーパミンが出る。これがハマった状態。報酬が与えられることで、選択という行動が強化される。これはクリックでも同じ」と論が進む。

 「ドーパミンを出させれば、サイトに戻ってくる」という点で、「良いデザインとは何か、はこれ抜きには語れない。知覚される品質とは違う。最高級レストランの食事より、吉野屋の牛丼の反復性が強いのと同じ。Googleの素っ気ないデザインも、ある意味、インターフェイスとかデザインに対する挑戦状だ」と、デザインではなく本質がクリックエコノミーの行動トリガーであり、「Webサーフィンしているとき、どういう基準でクリックしているかを、今まさに皆が知りたがっている。クリックするまではわからない、不確実な世界で、クリックエコノミーが動いている。しかし、どんなユーザの行動も関数として記述できるはずだ」と神秘主義からの脱却を強調。それが神経経済学とのことだ。

 話は異常行動や利他行動にまでおよび「amazonのリコメンデーションとか使います? 現在のものはいいとは思わない。そもそも人間は学習する動物。赤ちゃんが動くのはお金がもらえるからではなく、それで学習できるから」「メーリングリストは押しつけがましいから廃れた。でもブログは自分で読みにいく。これも赤ちゃんが自分勝手に動くのと同じで、自己の学習という原理が強力だから」と、まさに百式の田口元氏の話と繋がったところで終了となった。

 そして最後に第5部として、一般参加者約100名を含めたディスカッション「全体会議」がいよいよスタート。本日のお題は、「画期的なブログパーツ」ということで、15分以内に全員が自由に案を書き、その後は6人のグループで1つの意見に集約して提出するという仕組みだ。

 その結果、おもしろい作品として残ったのは、人気の記事が翌日の新聞となる「日刊俺チョイス!」、会社の話を書いても、上司が見たときだけネガティブな内容がポジティブに変わる「ホメゴロシイン」、ブログの閲覧可能な時間を制限する「パッションフォーザモーニング」、パスワードを表示しておいて他人にブログを書いてもらう「見え見えパスワード」の4つとなった。最終的に「日刊俺チョイス!」がグループ優秀賞の栄誉に輝いた。

 そして、全参加者の中からただ1人だけ、個人の優秀賞も選定。増田氏と茂木氏が選んだのは「スカイポ」。相手の顔が表示されていて、電話・メール・チャット・ポッドキャスト・RSS配信・タグ記入、なんでもできるというパーツだ。「暗い話題が多かったので明るくて良いと思った」(増田)、「何でも突っ込むという感覚がいいなあと思った」(茂木)が選出の理由。そして「コグレマサト?聞いたことありますねえ(笑)」と橋本氏が紹介したが、コグレ氏は「[N]ネタフル」管理人。「夢のパーツ、だと思ったんですけど、ようはアダルトチャットですね(笑)」との受賞の弁で、会場の爆笑を誘いつつ個人優秀賞をかっさらった。

 楽しくとにかくためになる検索会議。次は忘年会議!とのことで、かなりの大人数が予想されるが、ぜひ参加してみて欲しい。
《冨岡晶》
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