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文化放送が始めたネット放送事業「雷電」〜そのビジネスモデルを解剖する

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文化放送が始めた新事業「雷電」にかかわる面々。向かって左から文化放送の三木明博常務、SHOW-YAのヴォーカリスト・寺田恵子、「CRNフォーラム」の高橋政夫氏、プランニング会社「アベイル・ブレイン」の指輪英明社長
  • 文化放送が始めた新事業「雷電」にかかわる面々。向かって左から文化放送の三木明博常務、SHOW-YAのヴォーカリスト・寺田恵子、「CRNフォーラム」の高橋政夫氏、プランニング会社「アベイル・ブレイン」の指輪英明社長
  • 「雷電」はライブからDVDの販売までが、セットで組み込まれたメディア・プラットフォームだ
 既報のとおり、文化放送がラジオ放送とネット上のVOD無料配信、DVD販売をミックスしたインターネット放送事業「雷電」(ライデン)を始めた。

 VOD配信のインフラを提供するISPには、第2弾企画から「最低保証金」が支払われる見通しだ。またDVDの売上の中から、パーセンテージでISPにマージンが入る。広告費に関しても同様のしくみにする。

 「雷電」の柱になるのは、音楽部門の「雷電music」(ライデン・ミュージック)である。まずアーティストのライブ、コンサートをピックアップし、ラジオ番組として放送する。

 同時にOCNやBBit-Japan(コンテンツ配信広域連携技術研究組合)の組合会社など、当面は合計36社のISPが、自社ユーザ向けにそのコンテンツをVOD配信する。最終的にはDVDの販売までが、セットで組み込まれたメディア・プラットフォームである。

 その第1弾として、再結成された女性バンドの「SHOW-YA」がフューチャーされた。まずは彼女たちのライブがコンテンツとして流通する。

 では「雷電」のビジネスモデルでは、お金の流れはどうなっているのだろうか?

 文化放送の説明では、「基本的には広告ベースでやっていく企画」だ。ビジネスモデルの骨格を組んだプランニング会社「アベイル・ブレイン」の指輪英明社長によれば、広告主は大きく3種類にわかれる。

 「まずコンサートの冠広告だ。たとえばコンサートのチケットやDVDのパッケージには、協賛企業として社名が入る。またラジオ番組のスポンサー広告や、ネット上のバナー広告も用意している」(指輪社長)

 広告主はこれら複数の媒体に一斉出稿することが可能だ。一般にテレビやラジオでは、視聴率(聴視率)が高い番組には広告主がワクを買って広告を出している。「雷電」では、ラジオ番組のスポットCMがこれに当たる。また各ISPのVOD配信ページには、バナー広告が入るしくみだ。

 コンテンツには当然、制作費がかかる。だから無料でVOD配信するためには、こんなふうに広告費でカバーする必要がある。

 そして「アベイル・ブレイン」の白●正彦氏(●は竹冠に旗)によれば、「雷電music」の場合、ラジオ番組やDVDの制作費も一部広告費でまかなわれている。

 一方、VOD配信で重要な役割を果たすのが各ISPだ。インターネット部門の技術統括をする団体「CRNフォーラム」の高橋政夫氏によれば、配信システムは上位からエンコーダとコアサーバ、エッジサーバで構成されている。

 中間に位置するコアサーバは、CRNフォーラムの持ち物だ。またユーザがアクセスする末端のエッジサーバは、すべてISPの配信サーバである。

 各ISPはこうしてリソースを提供する分、コンテンツを無料で仕入れることができる。またISPはVOD配信ページ上に、DVDの「予約受付ボタン」を設置している。DVD販売にも協力しているわけだ。

 だからISPには収入が入るしくみを用意した。「アベイル・ブレイン」の白●氏の説明ではこうだ。

 まずDVDの売上に関しては、第1弾のSHOW-YA企画から、ISPに対しパーセンテージでマージンが支払われる。白●氏は、「有力なネットショップのアフィリエイトに見劣りしないパーセンテージだ」と言う。

 また集まった広告費についても、かかった制作費を差し引いたうえで、残るお金を同様にパーセンテージでISPに支払う。白●氏によれば、このモデルはいままでに前例がない。そのため「こちらのパーセンテージに関しては、今後、ルールを作る必要がある」と語る。さらに今後はISPが直接、物販にかかわる絵も描いている。

 「通信料金にプラスし、物販の課金をするしくみをもつISPさんもある。今後はISPさんが自社サイト上で、DVDを販売する可能性もある。当方としてはこのモデルを確立し、提供できればいいなと考えている。

 またコンサート会場の物販に関しては、ツアーパンフレットやツアーTシャツなど会場でしか売らないグッズがある。ISPさんには、これらの物販まで含めたお話をしている」(白●氏)

 では最後に、ユーザから見た「雷電」のメリットはどうか? 無料でVOD配信されるのは、あくまでライブの「ダイジェスト」である。「これって映画の予告編が無料で観られるようなもんじゃないの?」と受け取られないだろうか?

 実はここにもしかけがある。文化放送の編成局制作部、吉住由木夫次長によれば、「雷電」はコンテンツを「おかわりする」ためのプラットフォームだ。本来なら一過性のライブをまずラジオ番組で、またインターネットやDVDでと切り口を変えて提供する。

 とすればサービス形態の違うコンテンツそれぞれに独自の魅力があり、差別化されたものでなければならない。

 VOD配信するのは確かにライブの「ダイジェスト」だ。だが前出の白●氏によれば、「ダイジェスト版・専用のカメラ」を会場に入れて撮影している。DVD版の映像と違うのだ。

 ダイジェスト版では、まず楽屋裏を撮った。またライブの前と後に、SHOW-YAをインタビューしている。これらの映像はDVD版にはない。ダイジェストでしか観られないのである。

 ユーザとコンテンツホルダー、ISP、文化放送がみんなでトクをするWin-Winモデル。さてマーケットの反応はどう出るだろうか?
《松岡美樹》
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