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ローソンの現状とIT戦略——Force.comの活用

エンタープライズ その他
ローソン ITステーションディレクター補佐の森川衡氏
  • ローソン ITステーションディレクター補佐の森川衡氏
  •  ローソン ITステーションディレクター補佐の森川衡氏は、セールスフォース・ドットコムのプライベートイベント「Cloudforce Japan 2009」で講演した。
■厳しいコンビニ業界

「ITは経営戦略と同期したものでなければいけない。ところがERPのビックバンに代表されるような従来型のインプリメンテ—ションでは工数や労力が大きすぎ、ERPの導入自体が自己目的化している」

 ローソン ITステーションディレクター補佐の森川衡氏は、セールスフォース・ドットコムのプライベートイベント「Cloudforce Japan 2009」の講演で語った。同社はForce.comを導入し、コンビニ業界を勝ち抜くための戦略基盤を作った。

 ローソンはいうまでもなく全国展開のチェーン店で、8,587店舗を展開する。内訳はメインの“ローソン”8,424店舗、美容と健康をテーマに働く女性をターゲットにした“ナチュラルローソン”91店舗、単身者や主婦をターゲットにした“ローソンストア100”が72店舗。このうち90%以上がフランチャイズのオーナー経営店というう。売上げ約1兆5000億円。オーナーには経営ノウハウやITの仕組みなどで還元しながら利益を与え、同社に入ってくるのは3500億円程度となる。

 コンビニエンスストア業界は、現在熾烈な競争にさらされている。少子高齢化に加え、客の食い合いが起きない、いわゆる“ホワイトスペース”はほとんどない。業界のレポートによると91年をピークにした1年間の売上を100とすると、2007年には48にまで落ち込んでいる。つまり1平方メートル当たり100万円の売り上げが48万円になってしまっている状態だ。こんな日本市場で闘うのは厳しいと、同業他社のなかには海外展開を強化していく戦略をとっているところもある。しかし、同社はここ3年、店舗数を増やしていない。「これ以上店舗を増やしてもオーナーの利益にならない。弊社は既存のオーナー店の経営をいかに挙げていくかに注力している」と森川氏は強調する。小売業界にはドミナント戦略というものがある。ある地域に集中的に店舗展開を行うことで運送など経営効率を高め、顧客の認知度も同時にアップしていく。ただし、森川氏によるとこの戦略はあるしきい値を超えると、同系列店舗で食い合いを起こすという。

 常にオーナーの募集はかけているが、実際にはそんなに応募があるわけではない。むしろ既存の店舗オーナーが2店目を開くというケースが多いようだ。

 同社が配慮しなければいけないのはオーナーばかりではない。「客の支持を得ない限り、このビジネスは成り立たない。ということは商品を開発していかなければいけないし、メーカーにはローソンと付き合っているといいことがある、と思われなければいけない。この厳しい状況のなかでは、常に成長戦略を描いていかなくてはいけない」(森川氏)。

 経営面で同社がとったのは、店舗数をむやみに増やすのではなく、客層を見た業態を展開することだだった。それが、前述の“ナチュラルローソン”と“ローソンストア100”だ。「これが店舗の食い合いを起こしていない。また既存のオーナーの利益をそこなわないばかりではなく、2店舗目としてオーナーになりための利益の源泉を与えることができる」。森川氏は店舗数を増やさずに売り上げを伸ばしているという数値を紹介した。このほか同社では、店内調理型商品の展開など実験を繰り返している。

■ITをいかに活用していくか

 同社のITステーション(部署)に与えられた課題は、この状況のなかでオーナーに不利益を与えずに、いかに成長戦略を描いていけるかということだった。

 小売りのメイン機能としては、商品(マーチャンダイジング)、店舗運営(店のオペレーション)、開発(新規開店)の3つが挙げられる。この3つが綺麗にシンクロしないといけない。前述したように既存オーナーが次の店舗を開店するというケースが多いため、例えば、そのオーナーがどういう人で、どこの店をどう営業しているかデータ管理し、どのオーナーが適切かを判断、開発がどのように店舗を建てていくかが重要になる。

 森川氏によると、いわゆるCRMの部分は使っていないという。「エンタープライズナーバスシステムとして基幹系に近いようなところまで実装している」。

 講演で紹介されたのは“開発”の部分だ。大きく分けて機能はGIS、FC(フランチャイズ)候補者情報の一元化、建設施設の3プロジェクトにわかれる。このプロジェクトが、レンタル物件、既存店など全てが網羅された物件(不動産)DBとリンクしている。

 GISというのは「簡単に言うと地図と国勢調査が一緒になったようなもの」で、ある地区にどれくらいの家があり、年収どれくらいの人が何人住んでいて、昼夜の人口はどれくらいで……といった情報がわかるものだ。コンビニの商圏は500メートルくらいと言われているが、本来なら500メートルの円を地図上に描いていって、円のないホワイトスペースに出店していけばいいということになる。しかし、前述のようにホワイトスペースがない現在では、入り組んだエリアでどう戦っていくかが難しくなってくる。また、既存オーナーの誰に店を任せることができるのかという候補者のデータベースの参照が必要になる。物件DBは不動産情報だが、場合によっては既存のローソン(青のローソン)を他の業態(ナチュラルローソンやローソンストア100)に変更する場合もあり、これらを検討する。建設施設には什器管理を行う部分もある。店舗で使われている棚などの什器のことだが、複数店舗を管理する企業にとって、初期投資を抑えるためには什器のリユースも重要な課題だ。

 新しい物件が現れると物件に合ったオーナー候補を参照して収益シュミレーションを行う。そして建設の準備に入り、いつごろ契約できるかを検討していく。これらDBやワークフローをビジネスプロセス化し、Force.com上で作りこんでいるという。ただし森川氏は、作りこみすぎて行き詰っているいるのが、失敗しているプロジェクトのほとんどではないかとの疑問もなげかける。「ERPを作るような大げさなことはやっているつもりはない。FC候補者とハコの管理(物件)、建設DBをForce.com上に置き、ワークフロー化している。どちらかというとステータス管理に近い。へその緒になるのは物件DBだけで、あとの部分はそれぞれの目的に合わせ、仕組みの中でなんとなく整合性がとれている」とさらりと説明する。

 ただこのプロセスで考慮しておかなくてはいけないのは、建設にかかわる他事業者との関係だ。同社には7つの支社があり、支社ごとに建設を管理している。が、設計や物件に見合った調査は地域の建設会社や設計事務所などが行う。このあたりも一緒にプロセスに組み込んでいかないと全体のプロセスがうまくまわらない。「従来だとメールやプリントアウトを使っていたが、この仕組みは公開しているので、お互いに什器とその項目、見積もりなどもForce.com上に入れて確認している」。


 最後に森川氏は、店内で提供する唐揚げやスイーツなどの取り組みを行いながらも、顧客の満足度を知ることが大切だと話し、「Cloudforce Japan 2009」開催に合わせ、セールスフォース・ドットコムが発表したmixiアプリとの連携を引き合いに出した。「mixiアプリ」に寄せられるmixiユーザーの意見、投稿に対する他ユーザーの投票結果を、「Salesforce CRM」にリアルタイムで取り込むことができるものだが、森川氏は、来店者の声を経営側に取り入れていくためには有効な手段ではないかとの見解を示した。
《RBB TODAY》
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