
株式会社Leach(本社:東京都、代表取締役CEO:冨永拓也、以下「当社」)は、食のイベント・フェス運営に特化したAI業務OS「FestOS(フェストオーエス)」の開発を進めています。
本稿では、フードフェスティバルやマルシェの運営が抱える構造的課題と、FestOSが目指す解決の方向性についてお伝えします。
拡大を続ける「食イベント」市場と、追いつかない運営体制

コロナ禍を経て、屋外での食イベントに対する需要は急速に回復した。全国各地でフードフェスティバル、マルシェ、朝市、ビアフェス、ラーメンショーといった催事が週末ごとに開催され、地方自治体が観光施策の一環としてイベントを誘致するケースも増えている。
背景には、次の3つの潮流がある。
- インバウンド需要の回復:訪日外国人観光客の間で「日本の食」は観光目的の上位に位置しており、地域の食文化を凝縮した形で体験できるフードフェスは観光コンテンツとして高い価値を持つ。ローカル色の強いフードフェスのほうが、大型レストランより旅行者の満足度につながりやすいという指摘もある。
- 地方創生文脈での「食の祭典」増加:農水産物の直売イベント、道の駅と連携した収穫祭、食べ歩きフェスなど、食を軸にした地域イベントの企画は全国で増え続けている。しかし少人数の事務局体制で回しており、2回目以降の運営ノウハウ蓄積に苦労するケースも多い。
- キッチンカー業界の急成長:固定店舗を持たない移動販売事業者の数はここ数年で大幅に増加。開業ハードルの低さから個人事業主参入が後を絶たず、フードフェスへの出店希望者も急増。運営事務局の管理負荷を確実に押し上げている。
イベントの数と規模は拡大している。しかし、それを裏で支えるオペレーションの仕組みは、10年前からほとんど変わっていない。ここに構造的なギャップがある。
華やかな表舞台の裏側
SNSには色とりどりの料理の写真が溢れ、出店者は「完売しました!」と投稿する。来場者にとってフードフェスは楽しい週末の一コマだ。
しかし、その裏側で動いている運営事務局の業務量は、外からは想像しにくい。
📋 運営事務局が抱える主な業務
100を超える出店者との個別調整 / 開催地ごとに異なる保健所への書類対応 / 複数の決済手段が混在する売上精算──。わずか3~5名程度の少人数チームでこれらすべてをこなしている現場は珍しくない。
開催の2~3ヶ月前から準備が始まり、開催直前の1週間は深夜まで作業に追われ、イベント終了後も精算業務が1ヶ月近く続く。あるイベントでは、運営スタッフの稼働時間の7割以上が書類作成・連絡調整・精算処理で占められていたという話もある。
フードフェス運営を蝕む3つの構造的課題

第1の苦 ── 保健所対応:自治体ごとに異なるルールと、2021年法改正の余波

フードフェスで食品を提供する出店者は、原則として開催地を管轄する保健所から臨時営業許可を取得しなければならない。食品衛生法に基づくこの制度は、来場者の安全を守るために不可欠な仕組みだ。
問題は、許可取得の要件が自治体ごとに異なる点にある。
2021年6月に改正食品衛生法が完全施行され、次のような変更が加えられた。
- 営業許可の業種区分が再編(従来の34業種→32業種に整理)
- 新たに営業届出制度が導入
- HACCPに沿った衛生管理の制度化──すべての食品事業者に衛生管理計画の策定が義務化
この改正は食品衛生行政の統一化を目指したものだったが、施行から数年が経過した現在も、自治体ごとの運用には差が残っている。結果として「同じ食品を提供するのに、A市とB市で必要な手続きが違う」という状況が生じている。
各都市の状況を見ると、例えば以下のような差異がある。
- 東京都:特別区・八王子市・町田市には独自の保健所が設置されており、多摩地域・島しょ地域とは管轄が異なる。提供メニュー範囲、必要書類の種類、施設基準(屋根・三方囲い・手洗い設備の仕様・給排水タンク容量など)が保健所ごとに変わる。
- 福岡県:イベント主催者が各出店者の出店内容を取りまとめ、届出書を一括提出する形式を求められることもある。
- 大阪府・愛知県:同様に独自の運用ルールが存在し、全国巡回フェスの運営者にとっては開催地が変わるたびにルール確認からやり直しとなる。
⚠️ 申請タイミングの落とし穴
多くの保健所では、イベント開催の2週間~1ヶ月前までに申請を求めている。しかし出店者の確定がギリギリになるイベントでは、申請スケジュールとの整合を取ること自体が難しい。出店者が直前に入れ替わった場合、提出済み申請書の修正・再提出も必要になる。
出店者が100ブースいれば、100件分の書類を正確に揃える必要がある。出店者の多くは小規模な飲食事業者や個人経営のキッチンカーで、行政書類の作成に慣れていないケースが多く、こうした不備が積み重なり、運営事務局が一件一件フォローに追われる。
そして、この作業には蓄積性がない。開催地が変わればルールが変わり、出店者が入れ替われば書類指導はゼロからやり直し。この繰り返しが運営者の疲弊を招いている。
第2の苦 ── 出店者管理:チャネル分散と属人化の罠

フードフェスの出店者の属性は幅広い。法人経営の飲食チェーン、個人経営のラーメン店、週末だけ営業するキッチンカー、地元の農家グループ、海外からの出店者。連絡手段もバラバラで、情報が複数のチャネルに分散する。
- メール
- LINE
- 電話
- Instagram DM
出店者に伝達すべき事項は驚くほど多い。
- 出店申込の審査結果・出店料の請求と入金確認
- 保健所書類の進捗管理
- ブース位置と電源容量の通知
- 搬入搬出のスケジュール・ガスボンベ持込規定
- ゴミ分別のルール・雨天時の対応方針
- イベント後の売上報告フォーマット
これらを100以上の出店者に個別に伝え、既読確認・未読者へのリマインド・変更時の再通知まで行う。一つの変更が連鎖的に他の調整を生む構造になっている。
💡 属人化の典型例
ベテランスタッフは過去の付き合いから「Aさんは毎回書類提出が遅れる」「Bさんのキッチンカーは車幅が広いから端のブースに」「Cさんは電源容量を多めに見積もらないとブレーカーが落ちる」といった暗黙知を持っている。しかしこうした情報は個人の記憶やローカルメモにしか残らず、スタッフが離脱すればノウハウごと消える。
出店者が50を超えたあたりから、一人の担当者がすべてを把握するのは現実的ではなくなる。しかし情報が体系的に整理されていなければ、担当を分担することもできない。引き継ぎ資料を作ろうにも、情報がメールの受信ボックス・LINEのトーク履歴・個人のノート・頭の中に散らばっており、まとめること自体に膨大な時間がかかる。
第3の苦 ── 決済照合:精算の迷宮

フードフェスの会場では複数の決済手段が混在している。来場者の利便性を高めるために決済手段を増やすほど、イベント終了後の精算は複雑さを増す。
- 現金
- QRコード決済(PayPay・楽天ペイ等)
- クレジットカード
- 交通系IC
- イベント独自のトークン(食券・チケット制)
売上データの出どころが決済手段ごとに異なることが、精算を複雑にする。
- 現金売上:出店者の自己申告に依存
- QR決済:各サービスの管理画面から個別にダウンロード
- クレジットカード:売上確定は翌営業日以降
- トークン制:販売数と回収数の突合が加わる
さらに決済サービスごとに手数料率が異なり、「クレジットカード決済の手数料を誰が負担するか」「QR決済のキャンペーン還元分はどちらの売上に計上するか」といった取り決めをイベントごとに精算ロジックへ正確に反映させる必要がある。
⏳ 精算遅延が招く悪循環
精算の遅延は出店者との信頼関係を直接損なう。個人経営の出店者にとって、イベントでの売上は次のイベントへの仕入れ資金に充てるケースも多い。「前回のイベントの精算がまだ届いていない」という不満が積もれば、次回の出店辞退につながり、イベントの質そのものが低下する悪循環に陥る。
3つの課題に共通する病巣 ── 「毎回リセットされるオペレーション」

保健所対応、出店者管理、決済照合。3つの課題に通底しているのは、「イベントをまたいだ業務の蓄積と再利用ができない」という構造問題だ。
- 開催地が変われば→保健所のルールが変わる
- 出店者が入れ替われば→連絡先も要望もトラブル履歴もゼロに戻る
- 決済手段・歩合率が変われば→精算シートを一から作り直す
この「毎回リセット」は、単なる非効率にとどまらない。過去の失敗やトラブルの記録が引き継がれないため同じミスが繰り返され、来場者の安全に関わる情報の断絶というリスクにもつながる。
また、毎回ゼロから組み立てるオペレーションは、経験を重ねても効率が上がらない。「何度やっても楽にならない」という感覚は運営者のモチベーションを静かに削り、優秀なスタッフほど離脱する傾向がある。
なぜ既存のツールでは解決できないのか

「Googleフォームで申込を受け付け、スプレッドシートで管理し、LINEで連絡すればよいのでは」──こうした声は当然ある。実際、多くの運営者がこの組み合わせで業務を回している。しかし、汎用ツールの組み合わせには限界がある。
- Googleフォーム:データが静的で、出店者の状況が変わるたびに再入力が必要
- スプレッドシート:100件超の情報を複数人で同時更新するとデータの整合性が崩れやすい。行の削除やフィルター編集中の上書きトラブルも頻発
- LINE:即時性に優れる一方、過去のやり取りを構造化して検索することが難しい
- メール:記録は残るが、メールを使わない出店者には別手段が必要
つまり、各フェーズで別々のツールを「人力で橋渡し」しているのが現状だ。転記ミスや更新漏れが日常的に発生し、「あるツールでは更新済みだが別のツールでは古い情報のまま」という状態が常態化しやすい。
イベント管理の汎用SaaSも存在するが、フードフェス特有の要件──保健所の臨時営業許可対応、食品衛生法に基づく書類管理、出店者ごとのメニュー審査──をカバーしているものはほとんどない。
なぜ今、このタイミングなのか
食イベント市場の拡大、2021年食品衛生法改正による手続きの複雑化、キッチンカー事業者の急増──これらの要因が重なり、運営現場の負荷はかつてないレベルに達している。
加えて、コロナ禍で業界を離れたスタッフが戻らず、ノウハウの断絶がさらに進んでいる。
同時に、生成AIをはじめとするテクノロジーの成熟が、これまで「人の判断が必要」とされてきた業務の自動化を現実のものにしつつある。
- 書類の不備チェック
- 自治体ごとのルール差分の把握
- 定型的な問い合わせへの対応
業界の課題が臨界点に達しているタイミングと、技術的な実現可能性が揃ったタイミングが重なった。FestOSは、この交差点から生まれたプロダクトだ。
FestOS ── フードフェス運営の3重苦を解くAI業務OS

FestOSは、フードフェス・マルシェ運営に特化した業務管理システムだ。保健所書類の処理支援・出店者対応の一元管理・決済照合の効率化を、一つのプラットフォーム上で実現する。
保健所書類の処理支援
開催地の管轄保健所が求める書類要件をAIが判定し、出店者ごとに必要な書類セットを案内する。全国の自治体における臨時営業許可の要件情報を蓄積しており、開催地を指定するだけで必要書類の概要が把握できる仕組みだ。
- 出店者がアップロードした書類をAIが確認し、記入漏れや不備の可能性を指摘
- 全出店者の提出状況をダッシュボードで可視化
- 未提出者への自動リマインド
- 過去イベントで蓄積した出店者情報・書類テンプレートを引き継ぎ、準備時間を圧縮
出店者管理の一元化
LINE・メール・電話など複数チャネルでの連絡内容をFestOS上に集約。出店者ごとのタイムラインで、誰がいつ何を伝えたかが一目で把握できる。担当者が変わっても過去の経緯を確認してから対応に入れる。
- 過去の出店履歴・ブースサイズの希望・書類提出の傾向がイベントをまたいで蓄積
- よくある質問(電源容量・搬入時間・ゴミ分別等)にはAIが回答を支援
- 運営スタッフは個別の判断が必要な問い合わせに集中できる
🔄 「毎回リセット」から「回を重ねるごとに練度が上がる」オペレーションへ
FestOSに蓄積されたデータは次のイベントに引き継がれ、運営品質が継続的に向上する。
決済照合の効率化
現金・QRコード決済・クレジットカード・トークン制など、複数の決済チャネルからのデータを取り込み・統合する。
- ブースごと・決済手段ごとの売上を集計
- 歩合率や出店料を適用した精算額を自動算出
- データ間の差異を自動検出してアラート
- 精算書の生成・出店者がオンラインで内容確認するフローで個別対応を削減
運営者が集中すべきは「企画」と「体験設計」

フードフェスやマルシェは、地域の食文化を発信し、人と人をつなぎ、地方経済を動かす力を持つコンテンツだ。運営者が本来時間を使うべきは、「企画」と「体験設計」の領域にある。
- 出店者のキュレーション
- 会場の空間演出
- 地元生産者とのコラボレーション企画
- 来場者の動線設計
- SNSを活用したプロモーション
書類の取りまとめや精算計算は、人間がやるべき仕事ではない。
FestOSが目指すのは、運営のバックオフィス業務をシステムとAIに委ねることで、人間がクリエイティブな仕事に集中できる環境をつくることだ。書類処理や定型連絡に追われる時間を、出店者との関係づくりや来場者体験の磨き込みに転換する。それが、イベントそのものの価値を高めることにつながると考えている。
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