
第9回アフリカ開発会議(TICAD9)テーマ別イベント レポート⑦
2025年8月22日
独立行政法人国際協力機構(JICA)
第9回アフリカ開発会議(TICAD9)テーマ別イベント レポート⑦
JICAとAUDA-NEPADが第5次協力覚書(MOC)を締結 ―アジェンダ2063に向けた日本・アフリカ共創を推進―
独立行政法人国際協力機構(JICA)は2025年8月21日、ヨコハマ グランドインターコンチネンタル ホテルにて、オンラインとのハイブリッド形式で第9回アフリカ開発会議(TICAD9)のテーマ別イベント「第5次協力覚書(MOC)署名式およびシンポジウム」をアフリカ連合開発庁(AUDA-NEPAD)と共催しました。
JICAとAUDA-NEPADは2004年に協力を開始し、2014年に最初のMOCを締結して以来、10年以上にわたり地域統合、アフリカ・カイゼン・イニシアティブ(AKI)、食と栄養のアフリカ・イニシアティブ(IFNA)、アフリカ現地企業に対する支援事業(Home Grown Solutions HGS アクセラレータ・プログラム、研究(Policy Bridge Tank)等、多岐にわたる協力を続けてきました。今回署名された第5次MOCでは、これまでの5つの協力分野を発展させ、12のサブテーマが新たに設定されました。
本パートナーシップは、アフリカ連合が掲げる長期開発計画「アジェンダ2063」に沿った取り組みとして位置づけられており、両者のパートナーシップを通じて持続可能で強靭な社会を 共に築いていくことを目的としています。また本イベントでは、過去の協力の成果を振り返るとともに、アフリカの現地企業の支援による課題解決や産業競争力強化に向けた具体的な連携の方向性が議論されました。
冒頭、JICA 田中明彦理事長およびAUDA-NEPADナルドス・ベケレ=トーマス長官が開会あいさつを行い、両機関の協力関係の深化に期待を寄せました。田中明彦理事長は両機関のこれまでの歩みと協力の成果を振り返った上で、「分断が進む世界の中で、グローバルなコミュニティーで協力を深めることは極めて重要です。私たちは、アフリカが革新と強靭性の象徴として世界の成長を牽引する存在となるよう、アフリカとともに努力していきます」とJICAの姿勢を改めて共有。ナルドス・ベケレ=トーマス長官は「日本とアフリカは、互いのトランスフォーメーション、共通の課題の解決、グローバル繁栄を目指し、パートナーシップをますます強化しています。インフラ整備や食料・栄養安全保障、パンデミックに対するレジリエンス強化など、多くの成果も現れています。今後はJICAを中心にパートナーシップの輪を拡げ、ASEAN諸国などの経験からアフリカも学びながら、アフリカも日本を支援していく方針です。MOCが 更新されることで、新たな解決策がもたらされ、アジェンダ2063で掲げられる目標が達成されるでしょう。JICAとAUDA-NEPADの協力関係が強化され、プログラムがスケールアップされることを期待します」と思いを語りました。
その後、両者による第5次MOCの署名式が執り行われ、署名の瞬間には会場から大きな拍手が送られました。記念撮影も行われ、パートナーシップの新たな一章が象徴的に示されました。
署名式に続き、AUDA-NEPAD本間徹長官シニアアドバイザー(JICA国際協力専門員)が登壇し、「10年超にわたるAUDA-NEPADとJICAの協力」と題した基調講演を 行いました。「最初のMOCから10年以上にわたり協力関係を築き上げ、アジェンダ2063への貢献を念頭に、取り組みを発展させてきました。アプローチする分野も、地域統合(インフラ整備、貿易円滑化)、アフリカ・カイゼン・イニシアティブ(AKI)、アフリカ食料・栄養安全保障イニシアティブ(IFNA)、アフリカにおけるパンデミックへのレジリエンス強化のためのHome Grown Solutions(HGS)アクセラレータ・プログラム、Policy Bridge Tankを起点にした研究の強化などへと拡大。共創の成果は他の国際機関にも共有されています。第5次MOCにより、共創領域はさらに広がります」と、これまで両機関が積み重ねてきた協力の成果や取り組みの詳細が紹介されました。続いて上映された「HGSアクセラレータ・プログラム」の紹介映像(https://www.nepad.org/microsite/home-grown-solutions-hgs-accelerator-pandemic-resilience-africa)では、新型コロナウイルスの経験から強化された日本との技術的な協力、アフリカの人材育成や雇用創出などの成果が描かれ、参加者の関心を集めました。
その後に始まったパネルディスカッションでは、アフリカと日本を代表する4名のパネリストが 登壇。AUDA-NEPADにおけるこれまでの経験と今後の展望を語り合いました。本間長官 シニアアドバイザーの進行のもと、AUDA-NEPAD アミン・イドリス・アドム経済担当局長は「JICAとAUDA-NEPADの共創は、アジェンダ2063に基づいて実施されています。医療やインフラ、工業化の領域において、両者の共創は大きな効果をもたらしています」とこれまでの協力を評価。続いてケニアのRevital Healthcareを率いるハーシュ・メータさんが、「新型コロナウイルスのパンデミックを経て、私たちは日本を含め共創パートナーを拡げ、迅速に対応できる診断薬の提供などを実現しています。ユーザー数も拡大しており、今後もアフリカの医療課題を解決するでしょう」と、HGSアクセラレータ支援企業としての経験を共有しました。
さらに、カメルーンのMaKo Industries SAを共同設立したギデ・クアチュさんが、アフリカ・カイゼン・イニシアティブの導入効果を紹介。「アフリカ・カイゼン・イニシアティブを導入したことで、品質向上部門の立ち上げ、貢献した人材の表彰など、新たな取り組みをスタートし、生産性向上を実現しました」と、具体的な効果を報告しました。
最後に政策研究大学院大学 大野泉名誉教授は、日本とアフリカの共創について「実際に現地でインパクトをもたらしていることに驚いた」と各登壇者の発表を振り返った上で、代表的な共創事例を紹介。「アフリカは、若者の雇用創出などの固有の課題に取り組むべきであり、同時に世界的なメガトレンドへの対応も進め、持続可能性を確保していかなければなりません。TICAD9は、複雑な地政学的情勢の中で、インド太平洋やASEANといった地域も巻き込む新たな多国間協力の契機となり得る」と、学術的な観点から私見を述べました。
各スピーカーの発言が積み重なるごとに、「第5次MOCを契機に、工業化やインフラ整備が推進され、アフリカのキャパシティが広がることを歓迎したいです。貿易の拡大、投資の拡充は、日本・アフリカ両者にとって正しい方向だと感じます」(アミン・イドリス・アドムさん)、「私たちは今後、製品の価値を向上し、テクノロジー領域での協業によりイノベーションを起こし、サプライチェーンも強靭化してきます。JICAとの共創により、これらを加速させていきます」(ハーシュ・メータさん)「カイゼン文化は社内に浸透していますが、今後はトレーニングコンサルタントを採用しながら、社内の課題を解決していきたいです。カメルーンにもカイゼンの文化を広げていきたいです」(ギデ・クアチュさん)と新たな視点が提示され、今後の協力の方向性を共有する貴重な場となりました。
最後に閉会あいさつとしてAUDA-NEPAD ナルドス・ベケレ=トーマス長官が共創の精神のあるべき姿、方針や戦略を一つにすることの重要性を伝え、JICA 安藤直樹理事が関係各者への感謝の意を表し、シンポジウムは終了しました。
今回の署名式とシンポジウムは、日本とアフリカが「アジェンダ2063」の実現に向けて共に歩む道を改めて示すものとなりました。JICAは引き続き、AUDA-NEPADとの協力を軸に、アフリカの持続可能な発展と日アフリカ間の強固なパートナーシップの構築を進めていきます。
■写真
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202508223936-O2-2Ak2GdV7】
第5次協力覚書署名式
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202508223936-O4-j9wZBzxG】
JICA 田中明彦理事長
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202508223936-O3-Uii9z75C】
パネルディスカッションの様子
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202508223936-O1-8TgGw5U1】
パネルディスカッション後の集合写真
事後レポート配信予定のテーマ別イベント一覧
8月20日(水)
【テーマ別イベント レポート①】
□タイトル:アフリカにおける⼈間の安全保障と経済開発:多元的な課題への対応と2030年以降の未来
□日時:8月20日(水)10:30~12:10
□場所:横浜ベイホテル東急 B2F「アンバサダーズホールルームB」
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【テーマ別イベント レポート②】
□タイトル:ABEイニシアティブ・TOMONI Africa関連イベント:ABEイニシアティブのこれまでとこれから~更なる架け橋人材の育成を目指して~
□日時:8月20日(水)11:00-13:00
□場所:JICA横浜センター 4F 「かもめ」
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【テーマ別イベント レポート③】
□タイトル:日本・アフリカ間の海を越えた大学間交流・連携の経験および展望
□日時:8月20日(水)12:10-14:00
□場所:ヨコハマ グランド インターコンチネンタル ホテル 1F「パール」
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【テーマ別イベント レポート④】
□タイトル:高専オープンイノベーションチャレンジ・未来を創る共創力 ~アフリカ×日本・10代からの開発課題解決〜
□日時:8月20日(水)14:00-16:00
□場所:JICA横浜センター 4F「かもめ」
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【テーマ別イベント レポート⑤】
□タイトル:若者のつながりが拓く未来‐アフリカとの往来から-(TOMONI Africa)
□日時:8月20日(水)15:00-16:40
□場所:ヨコハマ グランド インターコンチネンタル ホテル 1F「パール」
8月21日(木)
【テーマ別イベント レポート⑥】
□タイトル:JICAアフリカ・ホームタウンサミット ~アフリカの発展と地方創生を共につなごう~
□日時:8月21日(木)09:00-11:00
□場所:横浜ベイホテル東急 B2F「アンバサダーズホールルームB」
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【テーマ別イベント レポート⑦】
□タイトル:国際協力機構(JICA)・アフリカ連合開発庁(AUDA-NEPAD)第5次協力覚書(MOC)署名式およびシンポジウム「アジェンダ2063に向けた日本・アフリカ共創」
□日時:8月21日(木)12:30-14:20
□場所:ヨコハマ グランド インターコンチネンタル ホテル 1F「パール」
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【テーマ別イベント レポート⑧】
□タイトル:債務管理で開発加速!アフリカの持続可能かつ強靭な成長に向けて
□日時:8月21日(木)15:20-16:50
□場所:ヨコハマ グランド インターコンチネンタル ホテル 1F「パール」
8月22日(金)
【テーマ別イベント レポート⑨】
□タイトル:新興国によるアフリカ協力
□日時:8月22日(金)09:00-10:40
□場所:ヨコハマ グランド インターコンチネンタル ホテル 1F「シルク」
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【テーマ別イベント レポート⑩】
□タイトル:Africa×Cultureシリーズ「遺すこと、生きること -アフリカと日本の文化遺産が語る未来-」
□日時:8月22日(金)10:00-11:30
□場所:パシフィコ横浜 展示ホールD
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【テーマ別イベント レポート⑪】
□タイトル:いのち会議 アフリカと共に創る未来社会:SDGs達成とその先へ
□日時:8月22日(金)12:30-14:30
□場所:ヨコハマ グランド インターコンチネンタル ホテル 1F「シルク」
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【テーマ別イベント レポート⑫】
□タイトル:Africa×Cultureシリーズ「アフリカと日本を編む -アートと手仕事がつなぐ新たな社会のかたち-」
□日時:8月22日(金)12:40-14:10
□場所:パシフィコ横浜 展示ホールD
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【テーマ別イベント レポート⑬】
□タイトル:Africa×Cultureシリーズ「音楽でアフリカと日本をつなぐ」
□日時:8月22日(金)16:00-17:30
□場所:横浜ベイホテル東急 B2F「アンバサダーズホールルームB」
※各テーマ別イベントの詳細情報は下記URLよりご確認いただけます。
URL:https://ticad9event.jica.go.jp/