「朝鮮人が井戸に毒を入れた」「朝鮮人が放火した」
100年ほど前に日本で広まった、根拠のない流言だ。
そして今回、故・安倍晋三元首相を銃撃した真犯人が韓国人に置き換えられるという映画の脚本が明らかになった。
『現代ビジネス』は9月15日、安倍元首相の銃撃事件を題材に企画されていた映画の脚本内容を報じた。
報道によると、この映画は、高い支持率を誇る現職首相を目障りに思った宗教団体が、暗殺を計画するという内容だったという。

ここまでは実際の事件とは異なるフィクションだが、さらに印象的なのが犯人の設定だ。
2022年に安倍元首相を実際に銃撃した山上徹也をモデルにしたキャラクターは、真犯人を隠すための“身代わり”として描かれ、実際に首相を殺害した人物は、金で雇われた「韓国人のヒットマン」という設定だったと『現代ビジネス』は伝えている。
山上は2022年7月8日、奈良市で参院選の応援演説中だった安倍元首相を手製の銃で銃撃した直後、現場で逮捕された。
山上は捜査段階から犯行を認めており、2026年1月21日には奈良地方裁判所が殺人などの罪で無期懲役を言い渡した。
その実際の事件をモチーフにしながら、映画では日本人の銃撃犯を身代わりにし、韓国人を実際の暗殺犯として登場させようとしていたことになる。
この映画では、菅田将暉が山上をモデルにした人物を演じる予定だったとされる。しかし、Netflix内で企画が中止となり、実際に制作されることはなかったという。

この報道を受け、日本では批判の声が上がり、韓国でも物議を醸している。
また、この設定は、103年前の関東大震災直後に日本社会で広まった流言を想起させるとして、注目を集めている。
日本の内閣府が公表した2023年版『防災白書』には、1923年の関東大震災直後、大火災で発生した爆発や飛び火、井戸や池の水が濁ったことなどが、「爆弾投擲」「放火」「投毒」によるものだとする根拠のない噂となって広がり、朝鮮人の殺傷事件などにつながったとの記述がある。
日本政府の中央防災会議による専門調査会報告書では、さらに具体的に、「朝鮮人が武装蜂起した」「放火する」といった流言を背景に、住民の自警団だけでなく、軍隊や警察の一部による殺傷事件が発生したと記録されている。特に震災発生から3日ごろまでは、軍隊や警察も流言に巻き込まれ、さらにそれを増幅させたと指摘している。
関東大震災時の朝鮮人犠牲者数については諸説あるが、韓国の国史編纂委員会の資料には、当時の調査をもとに「6000人以上」が虐殺されたとする記録が紹介されている。

1923年には大震災による混乱のなか、根拠のない火災や投毒の責任が朝鮮人に転嫁されたのだ。
100年以上前の実際の事件と、今回報じられた映画の脚本には、時代も背景も大きな違いがある。ただ、実際の災害や事件の責任を朝鮮人、あるいは韓国人に結びつける構図という点では、重なる部分がある。
今回の報道を受け、韓国の誠信女子大学のソ・ギョンドク教授も、「実際に制作されていたなら深刻な外交的失礼にあたる」「嫌韓を助長して商業的利益を得ようとする右派勢力の浅はかな手法としか考えられない」と強く批判した。



