『弱いヒーロー Class2』が、Netflixで独占配信中だ。『弱いヒーロー Class 1』の続編となる本作では、主人公のシウン(パク・ジフン)が転校した先で直面する校内暴力といじめに立ち向かう姿を描く。この記事ではClass1にふれつつ、Class2の見どころについて解説する。
(以下、物語の内容にふれるネタバレあり)
あらすじ
ビョクサン高校から転校を余儀なくされ、ウンジャン高校に転入したシウン(パク・ジフン)。親友のスホ(チェ・ヒョヌク)を昏睡状態に陥らせた加害者に復讐したことは転入先の高校でも噂になり「サイコパス」と周りから恐れられ、孤立した生活を送っていた。スホの事件がトラウマとなり、夜も眠れず苦しみ続けるシウン。
ある日、ヒョマン(ユ・スビン)にいじめられているジュンテ(チェ・ミニョン)を助け、ヒョマンと乱闘になる。その時に止めに入ったヒョンタク(イ・ミンジェ)を通じ、バスケ部のキャプテンで学校内のボス・フミン(リョウン)と知り合う。二度と他人に関わりたくないと心を閉ざしていたシウンだが、次第にジュンテを含めた4人で行動を共にするようになる。
フミンは、幼なじみのベクジン(ぺ・ナラ)から、しつこく高校の不良たちで結成された連合に加入するように誘われていた。ベクジンは連合のトップで、断り続けるフミンに対し、父親の店に嫌がらせをしたり、仲間のソンジェ(イ・ジュニョン)を使ってシウンに揺さぶりをかけたりする。
家族や仲間を傷つけまいと思ったフミンは、シウン、ヒョンタク、ジュンテに内緒で連合に加入。ベクジンの指示どおりに動いたものの、バイクの盗みをするようにいわれ「俺にはできない」と連合を脱退し、ウンジャン高校の生徒たちを守るためにベクジンとの対決を決意する。シウンは、持ち前の頭脳で戦いの作戦を練る。
大雨が降るある日、フミンが率いるウンジャン高校の生徒たちと連合の不良たちとの最後の戦いが始まった。勝敗はいかに……!?
登場人物&キャスト
ヨン・シウン(パク・ジフン)

親友のスホを傷つけた加害者たちを半殺しの目に合わせ、ウンジャン高校に転校を余儀なくされた。転校前のビョクサン高校では、全校1位をキープしていた秀才。昏睡状態のスホに対して責任を感じ完全に心を閉ざしてしまう。しかしフミン、ヒョンタク、ジュンテに出会い、ウンジャン高校の生徒を脅している連合の暴挙を止めるべく行動を起こす。
シウンを演じるパク・ジフンは、アイドルグループWanna Oneの元メンバーで現在はソロで活動中。俳優としてのキャリアは、子役時代からさまざまなドラマで主要キャストの子ども時代を演じてきた。近年ではドラマ『コッパダン~恋する仲人~』で見せた凛々しい韓服姿が記憶に新しい。
パク・フミン(リョウン)

ウンジャン高校バスケットボール部のキャプテン。ケンカが強く、ウンジャン高校のボスと恐れられているが、明るいキャラクターで心優しく、理不尽な暴力を嫌う。幼い頃、幼なじみのベクジンにケンカのやり方を教えたことを激しく後悔している。
フミンを演じるリョウンは、ドラマ『輝くウォーターメロン』で、耳の聞こえない両親と兄を持つ青年を演じ注目された。この作品では、『弱いヒーロー Class 1』でスホを演じたチェ・ヒョヌクと共演している。
ソ・ジュンテ(チェ・ミニョン)

ウンジャン高校で、ヒョマンのパシリとしていじめられている。転校してきたシウンに何かを感じ、いじめられている状況から脱するための方法を問う。勇気を出してヒョマンに立ち向かい、シウンらと行動するようになってから少しずつ変化していく。
ジュンテを演じるチェ・ミニョンは、子役時代から数々のドラマで活躍。ドラマ『梨泰院クラス』では、ユ・ジェミョンの少年時代を演じた。またドラマ『二十五、二十一』では、ナム・ジュヒョクの弟役を演じている。
コ・ヒョンタク(イ・ミンジェ)

フミンの親友でバスケットボール部員。ケンカはそこそこ強いが、バスケの試合に出られなくなるため自分からは手を挙げない。最初はシウンのことを誤解するが、次第に理解するようになる。ヒョンタクを演じるイ・ミンジェは、ドラマ『復讐代行人』『ゴールデンスプーン』では、いじめる側を演じたが、今回は仲間思いの好青年を演じている。
ナ・ベクジン(ペ・ナラ)

高校生の不良たちが集まる「連合」のトップ。成績優秀でケンカも強くまわりから一目置かれている。連合への加入を嫌う幼なじみのフミンを執拗に誘う。ベクジンを演じるぺ・ナラは、ミュージカル俳優として活躍。ドラマ『D.P.-脱走兵追跡官-』では性的マイノリティーの脱走兵を演じて注目された。
クム・ソンジェ(イ・ジュニョン)

連合では、ベクジンに次ぐ地位にいるソンジェは、キレると相手をボコボコにする冷酷な人間。ソンジェを演じるイ・ジュニョンは、U-KISSのメンバーでグループでは「ジュン」名義で活動。『恋するムービー』『おつかれさま』など、話題のドラマに出演している。
チェ・ヒョマン(ユ・スビン)

ウンジャン高校で弱い者いじめをしている人物。連合に加入するために弱者を利用して悪事を働くずるい人間。ケンカが強いフミンの前ではおとなしい。ヒョマンを演じるユ・スピンは、大ヒットドラマ『愛の不時着』で、ヒョンビンの部下である素朴な北朝鮮の兵士を演じて注目された。
アン・スホ(チェ・ヒョヌク)、オ・ボムソク(ホン・ギョン)

ビョクサン高校時代にシウンと仲良くしていた友人。スホは祖母と暮らし、アルバイトをしながら高校に通う苦労人。ボムソク(ホン・ギョン)は国会議員の息子で裕福だが、義父からDVを受けていた。スホとボムソクとの仲がこじれ、シウンは苦悩する。
スホを演じるチェ・ヒョヌクは、『二十五、二十一』で、キム・テリの同級生を演じ注目を浴びる。『輝くウォーターメロン』では、聴覚障害者の役を演じている。
ボムソクを演じるホン・ギョンは、『D.P. -脱走兵追跡官-』『悪鬼』などの話題のドラマに出演している。
チョ・ジョンソク(チェ・チャンヒ)

連合を牛耳り、不良の高校生たちを利用して悪事を働いく暴力団。チャンヒを演じるチョ・ジョンソクは、ドラマ『賢い医師生活』でイ・イクジュン役を演じ好評を得たが、今回は悪役で登場し、新たな一面を見せている。
見どころ
心がボロボロになったシウンが再び立ち上がる

親友のスホがトラブルに巻き込まれ意識不明になり、心に大きな傷を負ったシウンは、夜も眠れず苦しむ毎日を送っていた。うつろな目で歩く姿が痛々しい。そして「人を殺して転校してきたサイコパスだ」と校内で噂され、孤立するシウン。
転校した高校でも、相変わらずいじめる生徒といじめられる生徒がいた。誰とも関わらないと完全に心を閉ざしたシウンだが、不良のヒョマンが理不尽な理由でジュンテを殴っているところを見て怒りが爆発する。
シウン役のパク・ジフンを初めて見たのは、ドラマ『再婚ゲーム』の最終話にカメオ出演した時だった。金髪の華やかな容姿で登場し「この子は誰?」と思った記憶がある。
ところが『弱いヒーロー Class1』のシウンはあまりに地味で、そのギャップに驚いた。さらに言葉数が少ない難しいキャラクターをきめ細やかな演技で見せ、特に大きな目で感情を訴えかけるところが印象的に残った。勉強しか取り柄がない寂しい高校生が友情の素晴らしさと残酷さを知り、挫折を味わっていく姿をパク・ジフンは切ない演技で魅了した。

『弱いヒーロー Class2』では、傷ついたシウンが再び立ち上がる姿を描いている。全く笑顔を見せないシウンが、フミン、ジュンテ、ヒョンタクと親しくなっていくことで心の傷を少しずつ癒す。
正直言うと、Class1のボムソクとジュンテのキャラクターが似ているため、ジュンテが裏切るのではないかとハラハラした。しかし留学のために空港にいたシウンに電話をかけ、ジュンテがかけた言葉が「きみは悪くない」。その一言で自分を取り戻すシウンの姿は、涙なしでは見られない。シウンという役を自分のものにしたパク・ジフンは、今後が楽しみな俳優だ。
一気見必至! 魅力はテンポの良い展開と登場人物の豪華さ

本作は、一気見必至の作品といっていいだろう。1話が40分から45分という見やすさも要因の一つだが、テンポよく物語が展開していくので一度見ると止められない。だからといって決して雑な脚本ではなく、一つひとつのエピソードは丁寧に描かれている。
登場人物が豪華なところに惹きつけられる人も多いだろう。まずはClass2から登場したフミンを演じるリョウンだ。

「スラムダンク」が大好きで陽気な性格、学校でいじめられている子を守る根っからのボス気質だ。そこにいるだけで太陽のような存在のフミンは、リョウンにぴったりフィットしている。フミンの底抜けに明るく前向きな性格が、シウンの心の中にあった闇を取り除いたといってもよいだろう。フミンの奇妙で面白い発言に思わず笑みをこぼすシウンがかわいらしい。
一方で、敵役も魅力を発揮している。まずは、連合のトップに君臨するベクジンを演じるぺ・ナラ。

成績優秀でケンカが強いといった2つの武器を持った最強の男だ。フミンとは幼なじみだが、陽のフミンに対してベクジンには暗さが漂う。無表情でケンカ相手を傷つけていく冷酷さが恐ろしい。冷酷だけれど、手に入れた大金で養護施設を支援するなど、心優しい面もある。彼がなぜ連合でトップを張っているのか、連合にこだわるのは何か深い理由がありそうだ。
敵役のもう一人は、ベクジンに次ぐ連合の2番手、ソンジェ(イ・ジュニョン)。キレる沸点が低く、一度キレたら手がつけられない凶暴な男だ。

ソンジェ役のイ・ジュニョンは、今年1月に日本で公開された映画『勇敢な市民』で、虫唾が走るほどの悪役で存在感を見せつけていたが、今回も不気味な笑顔でシウンたちを追い詰めていく。イ・ジュニョンは『おつかれさま』『恋するムービー』では素朴な青年を演じているが、悪役がよく似合う。
このほかにもフミンとともにシウンに寄り添うジュンテを演じるチェ・ミニョン、ヒョンタクを演じるイ・ミンジェといった若手俳優から、悪役で登場しインパクトがあったチョ・ジョンソクら、多彩なキャストがそろい、物語を盛り上げている。
衝撃のラスト! 物語で問いたかったことは?

本作では、激しい暴力シーンが多く、見るのがつらい人もいるだろう。どこへ行ってもいじめる側といじめられる側が存在する理不尽な世の中で、シウンはうんざりする。腕っぷしの弱いシウンは、唯一の取り柄といってもいい頭の良さで、いじめをする連中を倒すすべを身に付けた。
しかし結局のところ、怒りのままに暴力をふるっても何も解決せず、代わりに誰かが犠牲になることをClass1でシウンは嫌というほど思い知った。二度と戦わないと誓ったシウンが立ち上がったのは、友だちを守るため、そして暴力を断ち切って理不尽な世の中を変えようとしたためだ。最終的にベクジンを倒してウンジャン高校が勝利し、シウンはホッとする。そしてスホがようやく目を覚まし、シウンと対面する心温まるシーンもあった。
ところが、ベクジンの死という衝撃的なラストが待ち構えていた。恐らく連合を牛耳るチャンヒの仕業で、ベクジンは悲劇的な最期を遂げたのだろう。号泣するフミンを見たシウンは、かつての自分と重ね合わせたに違いない。やっぱり暴力では何も解決しない…また犠牲者が出てしまった…。呆然とベクジンの遺影を見つめるシウンの心の中に、そんな思いがよぎったのではないだろうか。
チャンヒがソンジェに声をかけ、ベクジンのあとを継ぐように話すシーンでClass2は終わる。ソンジェはチャンヒの申し出に「夢がないな…」と背を向けるが、果たして彼は連合のトップになるのだろうか? もしそうなったら、またシウンは戦いを続けなければならないのだろうか?
Netflixシリーズ「弱いヒーロー」Class1~2:独占配信中
■筆者プロフィール
咲田真菜
大学卒業後、国家公務員、一般企業の会社員として勤務後フリーライターに転身。『冬のソナタ』で韓国ドラマにハマって以来、視聴し続けている。好きなジャンルはラブコメ、ファンタジー、法廷もの。ドロドロした愛憎劇はちょっと苦手。いつか字幕なしで鑑賞したいと韓国語を勉強中。