【テレワークツール活用術 第14回】脱・印鑑の最大の障壁は「企業文化」!新型コロナで企業の電子署名導入は進むのか? | RBB TODAY
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【テレワークツール活用術 第14回】脱・印鑑の最大の障壁は「企業文化」!新型コロナで企業の電子署名導入は進むのか?

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【テレワークツール活用術 第14回】脱・印鑑の最大の障壁は「企業文化」!新型コロナで企業の電子署名導入は進むのか?
  • 【テレワークツール活用術 第14回】脱・印鑑の最大の障壁は「企業文化」!新型コロナで企業の電子署名導入は進むのか?
  • 世界180か国以上でサービスが提供されている(画像はドキュサイン公式サイトより)
  • 入力が必要な箇所にフィールドを追加して送信(ドキュサイン公式YouTubeより)
  • 相手はメールアドレスさえあれば署名できる(ドキュサイン公式YouTubeより)
  • 「いつ、誰が、何をした」かの履歴が記録される(ドキュサイン公式サイトより)
 書類に印鑑を押すためだけに会社に足を運ぶ「ハンコ出社」。テレワークの拡大とともに、新たな問題として耳にすることが増えた。

 これを解消するため、当サイトを運営する株式会社イードでは、外部ライターとの契約に電子署名システムの「ドキュサイン」を導入。テレワーク中でも契約書類の発行や送信を容易に行えることに加え、紙の書類を郵送していた頃に比べて署名・捺印して戻してもらうまでの時間が大きく短縮されるなどの効果も出ているという。現場からは「ドキュサインは電子署名だけでなく、ワークフローも設定できるのがありがたいです。従来、契約書のワークフローは別途サイボウズで行っていたのですが、承認から捺印まで一気に進めることができるので楽ですね」との声も挙がっている。

米国はスピード違反切符も電子署名を使用


 日本ではまだなじみの薄い電子署名だが、欧米ではすでに広く使われている。代表的なサービスのひとつである ドキュサインは、2003年にアメリカでサービスを開始。当初は不動産業界での契約手続きに導入され、その後保険の契約や銀行口座の開設といった他のB to Cサービスへ、そしてB to Bの業界にも広まっていったという。

電子署名の代名詞にもなっているドキュサインは180か国以上でサービスを提供(画像はドキュサイン公式サイトより)


 「アメリカでは『DocuSign』が動詞として使われるほど電子署名が当たり前のものになっていて、車のスピード違反の切符にもドキュサインが使われています。また、ヨーロッパも導入が進んでおり、ドイツではオンライン診療の本人確認にドキュサインが使われています」。(ドキュサイン・ジャパン マーケティング・ディレクター土肥氏/以下同)

 日本国内では、メディア関係の企業が外部クリエイターと契約するケースなど、企業と個人の間での契約で利用されることが多く、そのほかには不動産関係の企業の導入も多いとのことだ。


「立会人型」ならメールアドレスだけで署名が完了


 電子署名は「当事者型」と「立会人型」の2種類に分けられる。当事者型は事前に認証局で本人手続きを行って電子証明書を取得する方式。マイナンバーカードなどにも使われている方法だが、プロセスが煩雑で署名者の負担が大きいのが難点だ。一方の立会人型は、電子署名のクラウドサービス事業者が立会人となり、両者がクラウドにアクセスすることで署名を実施する。

 ドキュサインには、後者の立会人型の署名方式が使われている。まず、契約書を作成する側が契約書の雛形をドキュサインのクラウドにアップロードし、署名や捺印、電話番号など入力項目のフィールドを追加してメールで送信。相手はメールに記載されたURLにアクセスして署名もしくは捺印を行う。契約書を作成する側がドキュサインを利用していれば、相手側はメールアドレスだけで署名・捺印を完了できるため負担が少ないのがメリットだ。署名が完了した契約書の原本はクラウドに保管され、契約した両者はそれを証明書付きでPDF化したものをダウンロードし、それぞれ持つことができる。

入力が必要な箇所にフィールドを追加して送信(ドキュサイン公式YouTubeより)


相手はメールアドレスさえあれば署名できる(ドキュサイン公式YouTubeより)


 また、社内の稟議や複数の人がサインする契約などのワークフローを設定することも可能。サインの必要な人を順に指定して送信すると必要な承認の順番に契約書が送られていき、全員の署名が完了すると作成者に通知される。

 管理機能は各企業のワークフローやルールに合わせて柔軟に設定できる。たとえば、管理部門が社内の特定の人にアカウントを割り当てたり、社判を押印できる電子印鑑機能では、印鑑を使える人を限定したりといったことも可能。また、不正防止のためにワークフローをテンプレート化し、それ以外のワークフローを使えないようにすることもできる。

 署名した文書には、依頼や閲覧、署名などの履歴を記録した監査証跡が発行され、これによって書面内容が担保される。「監査証跡とは、“いつ、誰が、何をした”という履歴です。もし裁判などで必要となった場合には、これを証拠として提出します。なお、監査証跡は電子証明のプロバイダーが発行するので、発行元の信頼性が重要となります」。

「いつ、誰が、何をした」かの履歴が記録される(ドキュサイン公式サイトより)


障壁となっているのは企業文化


 印鑑文化に限界を感じつつも、長年使われてきた紙の契約書と印鑑からの脱却は容易ではないと感じている企業も多そうだ。すでに導入を進めている企業は何が違うのだろうか? また、導入のためにどのような工夫をしてきたのだろうか? そのあたりの事情を土肥氏に聞いた。

 「コロナ禍以前は、導入のために取引先を集めて説明会を開催したり、電子署名マニュアルを作成して配布したりと苦労されている企業もありましたが、今回の新型コロナで印鑑のあり方を見直そうという動きが加速し、状況はずいぶん変わってきたように思います。“重要な契約書類には社判を押さないといけない”という意識の強い会社や経営者の方もなかにはいらっしゃいますが、法人同士の契約などにもドキュサインを使う企業も増えています。社内での導入が進むかどうかは、企業文化によるところが大きいのではないでしょうか?」

 ドキュサインではこのほかにも、署名・捺印のプロセスの中で決済を完了する「Payments」や、簡易的な同意書で使われる「Click」といったソリューションを提供。まだ日本語化されていないサービスも含め、契約プロセス全体の自動化をめざしているという。


 日本の印鑑文化に見直しが必要だという声はかなり前から存在していたものの、電子署名などの普及は進んでいなかった。今回のコロナ禍で紙書類のやりとりや押印に物理的なハードルが生じたことは大きな契機となりそうだ。

 今年6月、内閣府と法務省、経済産業省は連名で「押印についてのQ&A」を公表。1ページの簡易な文書ではあるが、“押印をしなくても契約の効力に影響は生じない”といった押印についての民事訴訟法のルールがまとめられている。さらに、民間企業が発行するデータの信頼性を確保する制度の導入を検討する有識者会議も実施。これらの後押しも加わることで、印鑑脱却が一気に進むことに期待したい。
《酒井麻里子》
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