~中小工場のIoT化最前線:1~見える化で生産性を向上! | RBB TODAY

~中小工場のIoT化最前線:1~見える化で生産性を向上!

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機械の稼働状況を円滑化するために、IoTの導入を検討しているダイイチ・ファブ・テック
  • 機械の稼働状況を円滑化するために、IoTの導入を検討しているダイイチ・ファブ・テック
  • 正田製作所では計測値の記入作業を、IoTによって自動化できないかと検討
  • 独立行政法人経済産業研究所上席研究員の岩本晃一氏
【記事のポイント】
▼IoTで機械の稼働状況を見える化、その平準化が生産力向上を生む
▼工場の機械やその配置で、IoT導入の予算は変化する


■ドイツに続け! 強い中小企業をIoTで生む

 以前から家電の世界などで盛り上がっていたIoTが、インダストリー4.0という名前とともに、工場での利用が本格化しはじめている。元々これはドイツから始まった動きで、語源としては“第四次産業革命”といった意味合いになるだろうか。生産性を向上させる取り組みとして、世界中の事業者から注目を集めている。

 「IoTによる中堅・中小企業の競争力強化に関する研究会」を主宰する、独立行政法人経済産業研究所上席研究員の岩本晃一氏によると、ドイツでは特に中小企業にインダストリー4.0を導入する動きが、ここ1~2年で活発化しているという。

「ドイツは99%以上と、日本と同じぐらい中小企業の比率が多い国です。そのうち、“Hidden Champion(隠れたチャンピオン)”と呼ばれる、強い企業が経済を支えており、競争力を高めるために国も積極的な支援を行っています。この構図は日本に通じるものがあると言えるでしょう」

 岩本氏が研究会を立ち上げたのも、このような潮流を見てのこと。そのモデル企業となるような中小企業を募集して、IoTの導入についての議論を行っている。

■工場の設備によって、IoT導入の難易度は変わる

 岩本氏によると工場におけるIoT導入は、まずその稼働状況を知ることから始まるという。その方法は大きく2つ。ひとつは機械を管理しているCNC(数値制御装置)から、稼働状況を電気信号として抜き出す方法。もう一つが、機械の稼働ランプやメーターなどの変化を、センサーなどでデータ化する方法だ。

 このうち、前者については数百万の予算で、さほど手間なく対応が可能だという。生産性や省力化が進めば、そう遠くなく投資を回収する道もあるだろう。ただ、中小企業でCNCに対応した機械を使用している工場は少ない。研究会に参加している4社の工場でも、導入しているところはなかったという。

 そのため、研究会ではセンサーやライブカメラなどを利用して、機械の稼働状況を見える化する方法を検討してきた。ただ、設立から約1年が経つが、その答えはまだ出ていないという。

 例えば、研究会に参加している正田製作所では始業時、昼休み後、終業時に人の手で行っていた計測値の記入作業について、IoTを導入しようと考えたという。そこで、その間に機械が稼働する生産力、代替される人件費などを計算してみたが、投資を数年で回収できるようなプランはまだ固まっていないようだ。


「見える化という課題を見つけるまでに半年、その解決策を考えるのに半年。さらに、システムを導入して効果が出るまでには、2~3年はかかるというのが実感です。中小企業のIoT導入には、ある程度の時間を見込む必要があると思います」

 IoTのソリューションには中小企業向けのものも増えているが、現場にあわせて完全にオーダーメイドするものは、どうしても費用が高くつく。課題を見つけ、それを解決する筋道をつけ、手ごろなソリューションを探すには、じっくり腰を据えて動く必要がありそうだ。

■IoT導入がもたらすのは“作業の平準化”

 では、機械の稼働状況が見える化すれば、事業者にとってどのような利益があるのだろうか? 岩本氏によると、そのキーワードになるのが“平準化”だという。工場内である機械だけ作業が詰まり、ほかの機械の遊休時間が長いと分かれば、作業を平準化するようなフローを導入することで生産性を向上できる。また、作業の混み具合を営業の人間がクラウド経由で確認できれば、状況に応じた納期や値引きなどをクライアントに提案できるだろう。

 研究会に所属するダイイチ・ファブ・テックでは、受注量を向上させるために会員の募集に手を上げたという。同社の工場ではある機械の前にだけ、作業待ちの部品が積み重なり、それを理由に従業員が受注増に難色を示していた。しかし、ほかの機械を見れば、動いていないものも多い。稼働時間を平準化すれば生産能力を向上できると、直感的に考えたという。

「ただ、なぜその機械の前にだけ部品が溜まるか、経営者の方はその原因を把握できていないわけです。研究会に参加する4つの事業者では、稼働状況の見える化について、バーコードによって管理する体制を敷いていました。ただ、作業員が面倒くさがって、どの会社でも機能していなかったようです」

 IoTであれば作業員に余計な操作を増やすことなく、機械の稼働状況を見える化できる。これは、経営者にとって大きなメリットといえるだろう。

■進むIoT導入支援、利用の機会を見逃さずに

 現在も募集を行っているものづくり補助金(革新的ものづくり・商業・サービス開発支援補助金)では、「中小企業者等が第四次産業革命に向けて、IoT・AI・ロボットを活用する革新的ものづくり・商業・サービス開発を支援」するものについて、補助上限を3000万円まで増やしている。「IoT推進ラボ」のような、IoT導入のプロジェクトを支援するような機関も立ち上がり、国からの補助も活発化してきた。

 ただ、研究会という形で中小企業のIoT導入の実態を見てきた岩本氏は、その立ち上げには第三者の助言を得ることが望ましいという。相談相手になりそうな機関として、同氏が注目しているのが、各県に設置されている工業試験場だ。神奈川県では既に中小企業のIoT導入について、ある程度の相談ができる体制を整えつつあるらしいという。

 また、IoTソリューションについても、中小企業向けのものが増えてきた。今後その数や導入実績が増えれば、より安価に、自身の工場に合った製品が現れることも期待できる。

 このように、中小企業のIoT導入に向けて、その環境が一歩一歩整いつつある。その変化を掴み、タイミング良く導入すれば、同業他社に対するコストや生産力のアドバンテージを得ることができるだろう。今後も、国の補助制度、相談機関、ソリューションといったIoT関連の情報について、中小の工場経営者は注意深く見守っていきたい。
《丸田鉄平/HANJO HANJO編集部》

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