【定額制ビジネスに勝算あり】レンタル×アートの素敵な相性 | RBB TODAY

【定額制ビジネスに勝算あり】レンタル×アートの素敵な相性

 経済成長とともにテクノロジーが成熟すると、モノを所有するという考え方が変わってくるようだ。分かりやすいところでは、ビデオや音楽が好例となるだろう。

ビジネス その他
作品の保管先としてだけでなく、レンタルとして存在を広め、購買の機会を提供するに至ったART STAND
  • 作品の保管先としてだけでなく、レンタルとして存在を広め、購買の機会を提供するに至ったART STAND
  • 大型の立体作品は、イベントなどでのニーズも多い
  • 飾って楽しい作品も多く、店舗などのインテリアにも使える
  • ART STAND代表取締役の加藤晃央氏
【記事のポイント】
▼他人の家が作品の保管場所に。レンタルがアーティストの利便性を生む
▼レンタルとして多くの人の手を渡ることが、PR効果を生み出す
▼定額制ビジネスではリピート率が命、サービス設計は入念に


■アート作品のレンタルという隙間を攻める

 経済成長とともにテクノロジーが成熟すると、モノを所有するという考え方が変わってくるようだ。分かりやすいところでは、ビデオや音楽が好例となるだろう。CDやDVDで購入するのではなく、ネットストリーミングのサブスクリプションを利用するのが、今では当たり前となった。車も所有するよりレンタル、リース、カーシェアが合理的と考える人が増えている。

 こうした定額制レンタルというシステムの導入は、今やあらゆる商品・サービス産業に広がりつつある。その中でも、今までにないサービスを打ち出し、成功しているのがアート作品を手掛ける「ART STAND」だ。

 ART STANDのビジネスは、アーティストから預かった作品を保管する倉庫ビジネスと、作品の貸出しを行うレンタルビジネスを組みあせたものだ。保管された作品は同社のサイト上にカタログとして公開され、ユーザーや企業は気に入った作品のレンタルを申し込む。

 これによって、アーティストは単に自分の作品の保管するだけでなく、マネタイズのチャンスを得ることができる。一方、利用者は購入するよりも安価に、さまざまな芸術作品を楽しめるというわけだ。観葉植物のレンタルのように季節の入れ替えを楽しむもよし。気に入ればそのまま購入してもよい。

■アーティストの悩みをマネタイズ手段として解決

 聞いてみるとコロンブスの卵ともいえる、誰も納得するわかりやすいビジネスモデル。ART STAND代表取締役の加藤晃央氏は、そのアイデアをアーティストの苦悩の中に見出したという。

「アーティストやクリエイターには四重苦というものがあります。作品をつくる、保管する、見せる、売るの4つです。私も美大に通っていたのですが、学生の頃は教室などに作品を置かせてもらえます。しかし、卒業すると作品は家に置くことになり、すぐに部屋がいっぱいになるわけです。アーティストとして活動するには、それを公開して購入してもらう必要もあります」

 以前から加藤氏は、アーティストやクリエイターのネットワークを立ち上げ、クラウドソーシングや仕事のマッチングといった事業を展開していたという。これで、“見せる”と“売る”については解決できた。その先に作品の保管場所を提供することを考えるに至ったが、実際にビジネスに乗せるにはいくつかの工夫が必要だったという。

 ただ単に作品を公開しただけでは、ビジネスがうまくいくかはわからない。加藤氏らはアート作品の値段、レンタルした場合の入れ替え頻度などを入念に調査したという。その中で重要なパートナーとなったのが、美術品の保管や運搬に特化した技術、サービスを持つ寺田倉庫だ。芸術への造詣も深く、CSRにも積極的。同社の美術品保管のノウハウも、ART STANDのビジネスに付加価値をつけている。



■個人から企業まで幅広いニーズにマッチ

 加藤氏がアート作品のレンタルという事業形態を選んだのには、もっと気軽に一般の人も絵画や彫刻など美術品に親しんでほしいという想いもあったという。これについては個人利用者の申し込み数などから、手ごたえを感じているようだ。企業や病院、あるいは士業と呼ばれる人や事務所などに向けては、受付やオフィスに飾る絵画やオブジェのレンタルというニーズに応えている。

 500人以上のアーティストが登録し、6000点以上の作品を管理しているART STANDの作品はバラエティに富んでいる。屋外向けのオブジェ、動く仕掛けを備えたもの、中に入れる作品などもある。巨大な「ガチャガチャ」のような作品もあり、これは鑑賞用というよりは、イベントなどでのニーズをつかんでいるようだ。ワンオフの作品を作るよりも、イベントに使えるものをレンタルしたほうが、時間やコスト、イベント後の処理などの問題を解決できる。

 一方、アーティストにとっては、レンタルという形で複数の人の手を渡ることで、より多くの人の目に触れられることもメリットとなる。基本的に販売する以外にマネタイズの道がなかった美術品に、レンタルによる継続的な収益の道を開いたという点はエポックといえるだろう。言ってみれば美術品に印税のようなシステムを導入したようなものだ。加藤氏らが運営していたアーティストのネットワークメンバーのうち、実に80%のメンバーが、ART STANDに作品を預けているという。

■C向けにはコンテンツマーケティングで攻める

 ART STANDは今までにない業態のサービスとなるが、BtoBのプロモーションについては、さほど目新しいことは行っていない。オフィスや店舗には、装飾品として絵画や美術品、小道具などをレイアウトする習慣がある。廉価なレンタルで、若手を含む多数のアーティストの作品が選べるART STANDには、参入の余地が十分にあったようだ。

 しかし、B2Cの場合は少々事情が異なる。富裕層には美術品を購入し、パトロンになるという文化もあるだろう。しかし、一般的な個人宅で絵画を飾るという習慣は、あまり定着しているとはいえない。ホームページなどを通じてファンが増えているそうだが、加藤氏はさらに認知を広げる必要があると話す。そこで同社が提供を開始したのが、Web上の美術館のようなキュレーションメディアのサービス「ART STAND Gallary」だ。

 このサービスではART STANDに登録された作品を、だれでも自由に選び、自分だけのWeb美術館をつくることができる。特定のテーマで作品を集めたり、コメントをつけてオリジナルコンテンツとするなど、使い方は利用者の発想しだいだ。もちろん、登録アーティストが自分の作品をまとめて展示会のように使ってもよい。

 次の展開としては、海外に日本の作品を売り込むことを考えているという。欧米の家庭では、日本よりも家に絵画を飾る習慣が定着している。クールジャパンと相まって、日本の若手クリエイターの作品を、目の肥えた海外の人にアピールできそうだ。

■借り手・貸し手双方のメリットでリピート率を上げる

 レンタルビジネスは参入しやすい面があるが、ECより弱い面もあるという。小売りやECであれば商品を売るだけだが、レンタルでは商品の回収や交換といったロジスティックの問題がある。

 ただ、顧客が消費者から生活者に変わってきたという見方も存在する。企業はモノを買う人だけを顧客としてとらえていては、この先生き残れないという意見もあるようだ。ただ、このようなマーケットの変化の中には、”アートのレンタル”といった隙間のニーズが生まれる。それを的確にとらえることで、サービスのリピート率は上がり、ライフタイムバリューは高まるだろう。その中で、継続的な顧客とのエンゲージメントを重視した戦略が、定額制ビジネスを成功させるポイントといえる。

~定額制ビジネスに勝算あり:2~レンタル×アートの素敵な相性

《中尾真二/HANJO HANJO編集部》

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