【コト消費化するインバウンド】料理教室で和食体験! | RBB TODAY
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【コト消費化するインバウンド】料理教室で和食体験!

ビジネス その他
生徒の国籍は多岐にわたる。最近では欧米からの参加者も増えてきた
  • 生徒の国籍は多岐にわたる。最近では欧米からの参加者も増えてきた
  • 外国人は「自分でやってみたい」という欲求が強い。参加型にして盛り上げるのが重要
  • 箸の使い方など、細かな部分を説明することが満足度向上につながる
  • 起業の原点となった、地元相模原市の国際交流ラウンジでの和食教室の一コマ
  • 英日併記、写真を多用したレシピ。外国人向けは特に写真を多用すると喜ばれる
  • 「わしょクックを日本全国に展開していきたい」と語る富永紀子氏
【記事のポイント】
▼訪日観光客のニーズは“一品20分かつ四季の料理を織り込んだメニュー”
▼“コト消費”としてのエンタメ性が、口コミ集客へとつながる
▼サイトはキーワードを駆使して、日英併記で門戸を広く


■公共施設での講座をきっかけに、口コミで集客

 訪日観光客のニーズがモノからコトへと移る中で、そのすそ野がさまざまなサービス産業へと広がりつつある。今まで観光客をターゲットとしていなかった事業者でも、その商品やサービスに“日本らしさ”を見つけたインバウンドが、いつしか口コミで増えていったという例は少なくない。

 近年では世界無形文化遺産に登録されたこともあり、“和食”が日本で体験したいことの上位にランキングしているが、そこから派生してインバウンドから注目を集めているのが「Japanese Cooking Class」。外国人向けの和食料理教室だ。中でも、懐石料理など肩ひじ張ったものではなく、日本人の自宅で開催する日本の家庭料理教室の人気が急上昇。神奈川県を中心に3か所で外国人向け和食教室を開催する「わしょクック」もその一つだ。

 16年1月創業のわしょクックは、社長の富永紀子氏が自宅兼キッチンスタジオのある相模大野を拠点にビジネスを展開。訪日向けの体験ツアーや料理講師の派遣などの法人向け事業や、認定講師養成スクール事業も行っている。創業1年足らずでここまでビジネスを成長させた背景には、起業の2年半前から会社勤めの傍らで、週末に同様の教室を開いてきた基盤がある。外資系企業のマーケティング部門に15年間籍を置いた経験も、集客に必要なターゲット層やコンセプトの設定、法人向けの企画書作りに役立った。

 最初に料理教室を開催するにあたり、富永氏がメインターゲットに設定したのは“来日2~3年、30代半ば、日本語勉強中の、日本人夫を持つ外国人妻”。相模原市近郊にはフィリピン系の店舗があり、日本人と結婚したフィリピン人女性が多く、日本の家庭料理を覚えたいというニーズがあると判断したからだ。近くには座間キャンプや厚木基地もあり、そこからの集客も見込めると考えた。

 始動時のハードルとなるのが集客の部分だが、富永氏がまず足を運んだのが相模原市の国際交流施設「さがみはら国際交流ラウンジ」だ。企画書を持ち込み、「在日外国人向け料理教室」を提案。すぐにGoサインがでたのは、「ニーズやターゲット層まで落とし込んだ企画書のおかげ」だという。参加者は講座の継続を望むようになり、やがて富永氏の自宅で教室を開設。外国人コミュニティは結束が強いため、口コミや友人を連れてくるなどして、その規模は徐々に広がっていった。

 わしょクック設立後も口コミは集客における大きな武器だが、訪日観光客が増えるにつれて、ネットでの訴求も重要となってきた。とはいえ、同社のホームページでは、別段SEO対策は行っていないという。それにも関わらず検索上位に上がるのは、「英語と日本語でサイトを作っていること、そのなかに刺さるであろう検索ワードも入れていることが理由でしょうか」と分析する。「Japanese Home Style Cooking(日本の家庭料理)」、「DASHI(出汁)」などがそうだ。

 現在のインバウンドの80%は中国人や台湾人などアジア系だが、彼らが漢字検索した場合も、これらのキーワードがひっかかる。「在日の場合は日本語を勉強している場合も多いので、日本語表記は大切」とのことだ。



■鍵は20分でできること、日本文化を感じられる四季の料理

 ではコンテンツ作りのポイント、日本人向けの講座と差別化すべき点は何だろう? 富永氏によると、訪日外国人向けには、和食文化の真髄ともいえる四季を織り込むことが大切だという。

「訪日外国人も視野に入れ、メニューのコンセプトを“四季の食材を使った1品20分でできる和食”に設定しました。和食は外国人にとっては難しいというイメージがあるため、“1品20分”という部分を前面に打ち出し、ハードルを下げています」

 メニューの開発にあたっては、質問サイトを利用したり、外資系企業時代の同僚に聞くなどして、外国人に人気の和食を収集。そのなかで最大公約数のものをピックアップした。巻き寿司や焼き鳥、親子丼など定番メニューに加え、月替わりのその時期の旬の食材を使った、お節や節分など伝統行事に紐づけたメニューも人気だという。

 なお、レシピを英語に書き起こす際に注意すべきは、「日本人なら“適量”で理解できる場合も、外国人向けにはティスプーン何杯などきっちり数字で示す必要があります」という点。配布するレシピには、出来上がり写真だけではなく、ポイントとなる作業の写真も何点か使い、一目でわかりやすくするなどの工夫も重要だ。なお、英語だけではなく、ひらがなも併記しているのは、日本語学習中の在日外国人への配慮だという。

 また、講座の進め方も日本人向けとは異なる。訪日観光客にとって、料理教室は実学というよりイベントだ。盛り上げるポイントやサプライズを組み込んだ台本を頭に描き、自らがエンターテイナーとしてもてなすという姿勢が、満足度向上の秘訣となる。

「迎える段階で気持ちを盛り上げ、手取り足取り一緒に調理し、褒めまくる。寿司を自分で巻く、といった実際の作業も喜ばれます。子どもに教える感じですね。また、五感に訴えることも重要です。毎回出汁を取るのですが、カツオ節が表面に浮いてきて花のように広がる様子を見ながら香りをかいでもらう。皆がエキサイトしますね」

■料理教室を軸に、他事業も含めたビジネスモデルを展開

 料理教室を開催する一方で、わしょクックでは認定講師養成スクール事業を展開。調理方法、指導者の心得、外国人への教え方、キッチン作りなどに加え、マーケティング戦略や税金対策まで、個人事業主として独立することを想定した内容を教えている。

 実はわしょクックを立ち上げた後、富永氏の元には「外国人に和食を教えたい」という日本人からの問い合わせが相次いだという。そこで自身のノウハウを落とし込んだカリキュラムを作り、養成講座を始動。現在修了生2名が富永氏のスタジオで講師として活動している。フランチャイズ契約を結び、わしょクックを自宅で開業する道を選んだ生徒もいるようだ。

 数カ月先まで予約で埋まっている養成講座だが、盛況の理由はフランチャイズという形で、修了後の活躍の場を用意している点だろう。また、フランチャイズ展開までを見込んだビジネスモデルは、わしょクックにとっても、さらなる利益を見込むことができる。

「料理教室はそれほど大きな収益は上がりません。わしょクックのシンボルである外国人向け和食教室を安定的なビジネスにしながら、認定講師養成と法人向け事業にさらに注力していきたいと考えています」

 インバウンド向け和食教室へのニーズの高まりに伴い、新規参入を考える中小の事業主も増えている。訪日観光客に選ばれるためには、コンセプトとターゲットの明確化、コンテンツの充実が欠かせない。また、口コミやネット上でのレビューの影響力を考えれば、参加型のショーに見立て、自身がエンターテイナーとして楽しませる意識も重要だろう。その中で、認定講師養成スクールなどの派生事業で収益モデルを生み出そうとしている同社の手法は、インバウンド事業における新たな可能性が見出せそうだ。

【コト消費化するインバウンド:1】料理教室で和食体験!

《尾崎美鈴/HANJO HANJO編集部》
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