“地域力”で稼ぐツアー事業 | RBB TODAY

“地域力”で稼ぐツアー事業

 インバウンドの増加に伴い、旅行業法の見直しも進むなか、ツアーや通訳をサービスとして販売する際に、従来は必要だった免許が不要になることが予想される。

ビジネス その他
大谷地底探検の地底湖クルージングは、そのビジュアルのインパクトもあってSNSなどで話題に
  • 大谷地底探検の地底湖クルージングは、そのビジュアルのインパクトもあってSNSなどで話題に
  • 季節限定のフルーツ狩りも根強い人気。二地域居住者やアクティブシニアの取り込みにも一役を担う
  • 環境省との連携で手掛けた「インバウンド向け3泊4日ツアー」の1シーン
  • ろまんちっく村の「あおぞら館」では、地元の農産物が並び大盛況となっている
【記事のポイント】
▼ツアーの起点施設におけるビジネスとの相乗効果で利益を生む
▼地域を動かすには収益だけでなく、観光事業に対する思想が必要
▼二地域居住者などが”第二の生活”を事前体験するというニーズも


■食・農・観光の連携で“稼ぐ地域”への仕組みを作る

 インバウンドの増加に伴い、旅行業法の見直しも進むなか、ツアーや通訳をサービスとして販売する際に、従来は必要だった免許などが不要になることが予想される。ホテルや観光事業者などが、副業的にサービスを展開して収益を上げられる可能性が出てくるが、実際にツアーを売り出すにあたってどうすれば成功するのか? 地域の観光資源を生かした地元ならではのプログラムを企画し、参加者が現地集合・現地解散する“着地型観光”の先駆者として知られる「えにしトラベル」に、そのヒントを探る。

 えにしトラベルは地域の総合プロデューサーとして宇都宮市の農・食・観光をつなぎ、同市を“稼ぐ地域”へと変貌させてきたファーマーズフォレストが運営するもの。同社の事業は道の駅「ろまんちっく村」を中心に展開しており、以前は約70万人だった年間来場者数は同社の参入後に急成長し、今年度は140万人にまで増加した。

 その他、同社では拠点運営や農業事業、地域プロデュース、食農支援、コンサル事業、地域商社事業など多角的に事業展開している。その中で、なぜツーリズム事業としてえにしトラベルを立ち上げたのか? 同事業室室長の原田和之氏はその経緯についてこう話している。

「地域商社である我々には、ろまんちっく村を拠点に地域を総合的にプロデュースし、全体の所得があがる仕組みを作るという使命があります。眠っている地域資源を活用する着地型観光も一つの手段と考え、ツーリズム事業には12年に参入しました」

 同社が提供するツアーは、“驚きと発見、美味しさと感動に出会える新しい地旅の提案”がテーマ。「大谷地底探検と里山ハイキング」「暮らし体験ツアー」「旬の農作物をテーマとした採れたてツアー」など、地元の人間にとっては当たり前の風景や体験に付加価値をつけ、観光資源化している。少人数のツアーということもあり、今では毎週満席となるものもあるようだ。地元を良く知るナビゲーター(ガイド)の案内のもと、通常は立ち入り禁止の大谷地底などのレアな場所や、普段は接する機会のないプレイヤー(地元生産者や料理人)を訪問する。その非日常感が大きな感動を呼ぶのだという。

 これらツアーの大きなポイントは、発着点をろまんちっく村にしている点だ。ここにはツアー客が訪問する観光資源の生産物を含め、地域の農作物や特産品が並ぶ。レストランも併設しており、参加者の多くがここで買い物や食事を楽しむ。「ツアーで食べた果物をまた購入したい」との声を受け、取り扱い商品の発送サービスも開始した。その中でツアーがろまんちっく村再訪の動機付けにもなり、逆もまた然りの仕組みがうまく機能している。

■生産者のリーダー・有力者を口説き落とせるかが鍵

 地域との信頼関係・連携なくしては始まらない着地型観光。その中で、どのように関係を築き、また観光コンテンツを探しだし、ツアーへの協力をとりつけていったのだろうか。原田氏によると、実はこの部分が最も苦労した点だという。

「『地域全体の所得を上げるために農・食・観光が連携して、地域の魅力を見せていきましょう』と生産者の方に話しても、なかなか伝わりません。道の駅に農作物を置いておけばそれなりに売れるのに、なぜ田畑に観光客を呼ぶ必要があるのか、と。そこで理解を得るには時間をかけるしかありません。生産者のリーダー的存在の方や地域の発言力を持った方などを集め、何度も話し合いの場を持ちました」


 同時に彼らにモニターツアーに参加してもらうなどの努力も重ねてきたという。現在の消費者のニーズ、それに対してどう見せれば感動が得られるかというストーリー性。それらをリアルに体験してもらうことで「我々が考える観光の見せ方とはこういうことなんだ、ということを少しずつ理解していただきました」とのことだ。

 徐々に増えていった協力者は現在60名を数え、ナビゲーターは8名が稼働。新たな観光コンテンツについても、地域の方から「使わなくなった学校土地を利用できるのでは」など、提案されることが増えてきたそうだ。

 PRの部分でもプレイヤーをうまく活用し、販促につなげている。集客は主にWebサイトとメディアミックス。毎週2回、FMとAMに番組を持ち、プレイヤーが出演。地域や生産物の紹介を行っている。実際の生産者や地元の人間が情報発信することで、より深い魅力を訴求することができているという。また同社の目玉「大谷採石場跡地の地底探検ツアー」は、誰しもがSNSで発信したくなるインパクトある写真が撮れるツアー。参加者がSNSなどで情報を発信することで、口コミ人気も着実に広がっているという。

■次なるターゲットはインバウンドと二拠点居住者

 次なるターゲットとしてえにしトラベルが取り組んでいるのが、“ろまんちっく村のインバウンドターミナル化”だ。現在インバウンドは1割程度だが、外国人観光客に圧倒的な人気を誇る日光は同県内。日光を訪れた外国人にアンケート調査・PR活動を行うなど、具体的に動き始めているそうだ。

 この背景には、2年前に環境省との連携で手掛けた「インバウンド向け3泊4日ツアー」での手ごたえがある。世界各国の有名な旅ブロガーを集めて日光全体を取り巻く地域の魅力を伝える、という趣旨のツアーで、その際にろまんちっく村を含め地域の見せ方を考案したのがえにしトラベルだ。ブロガーの評判は良く、彼らの発信した情報を見て訪れる欧米人客も今なおいる。

 同時に二地域居住者やアクティブシニアの取り込みにもポテンシャルを感じているという。首都圏から100km県内である宇都宮市は、彼らの田舎暮らしの場としても理想的な地域。移住を考える人の視察も兼ねた参加も増えており、実際に住んだ場合のリアルな生活を、「暮らし体験ツアー」などを通して垣間見ている。

「農業に従事したいという方も多いのですが、実際どのように作り、販売し、収益を上げているのかという懸念もあるわけです。ろまんちっく村や我々のツアーが、その一助となり得るという点も、移住の後押しとなっているようです」

 掘り起こせば様々な観光資源を持つ地域の魅力をいかに見せ、地域・行政と連携し、稼ぐ仕組みを作っていくか。そのためには、「地域の有力者たちと、膝と膝を突き合わせて何度も議論を重ねる」(原田氏)という泥臭い作業が欠かせない。ただ、一度理解や協力が取り付けられれば、一丸となって好循環が生まれる可能性は高いだろう。

 その中で自社の施設を拠点としたツアーを展開していくことが、地域と事業者の両方に利益のある仕組みを作ることになりそうだ。中小の観光事業者の中には、集客にコストをかけられない事業者も多いだろう。だが、ツアーで客を集められれば、それは自社の施設での集客にも繋がる。さらに、施設での物販などを組み合わせていけば、ツアーという集客手段はコストではなく、むしろ利益を生むこともできそうだ。

~規制緩和が生む新観光業:2~地域力で稼ぐツアー事業

《尾崎美鈴/HANJO HANJO編集部》

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