【インタビュー】オダギリジョー “異端児”はユーモアを愛す! | RBB TODAY
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【インタビュー】オダギリジョー “異端児”はユーモアを愛す!

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オダギリジョー『Present for You』/photo:Naoki Kurozu
  • オダギリジョー『Present for You』/photo:Naoki Kurozu
  • オダギリジョー『Present for You』/photo:Naoki Kurozu
  • 『Present For You』 (C)2013 PLUS heads inc.
  • オダギリジョー『Present for You』/photo:Naoki Kurozu
  • オダギリジョー『Present for You』/photo:Naoki Kurozu
  • オダギリジョー『Present for You』/photo:Naoki Kurozu
  • 『Present For You』パペット完成披露記者会見 (C)2013 PLUS heads inc.
  • オダギリジョー『Present for You』/photo:Naoki Kurozu
ユーモア受難の時代――。ネットやSNS全盛の現代、例えば何気ないひと言やちょっとした言動が、伝え方や表現を間違えたり、一部だけを切り取られることで、発した当人の思いもよらぬ形で受け取られ、誰かを怒らせたり傷つけるものにもなり、思わぬところから“出火”し、火傷どころか大炎上にまで発展する。

「僕自身、わりとそっち方向ですね(笑)。軽い冗談で言ったことが、思いもよらず大きなニュースになってたり…」。

オダギリジョーは苦笑を浮かべてそう語る。それでも、そんな危険な匂いのするユーモアを愛してやまず、少しばかりの“毒”を含んだ作品に惹きつけられる。そのオダギリさんをして、企画が持ち込まれた時点で即「やります」と言わしめた、独特のユーモアに満ちた映画『Present For You』がようやく完成した。

どんな映画なのか? 少し説明を要する。本作はオダギリさんをはじめとする生身の俳優陣による“実写”部分と、オダギリさんらが演じる各登場人物を人形にして、それを少しずつ動かして撮影された“ストップモーション・アニメ”の2つのパートに分かれている。怪しい健康食品を売る会社「Present For You」の雇われ社長・梶原(オダギリさん)と愛すべき仲間たちが、次々と降りかかる難題を前に、危ない橋を渡りながら奔走する姿が描かれるが、実写シーンと俳優陣そっくりの人形によるアニメパートが入り乱れる。

監督を務めたのはCMディレクターであり、アニメ「The World of GOLDEN EGGS」でも知られる臺佳彦(だい よしひこ)。企画段階の当初より臺監督は主演にオダギリさんを想定。GOサインが出る前からオダギリさんの人形を作り、オファーの際にはその人形を使って製作されたパイロット版を見せられたという。

「短いパイロット版なんですが、その段階で世界観、雰囲気が十分に分かりました。挑戦的でクリエイティブなものを作ろうとしているところで、“僕”をイメージしてくれたのが嬉しかったです」。

パイロット版のために作られた“オダギリジョー人形”は本編と同じアフロ&サングラスだったというが、自身の人形を見た時の印象は?

「可愛らしいキャラクターだなと思いました(笑)。でも目や眉毛や口、それぞれのパーツが表情によって付け変えられるようになっていて、その緻密さに驚きました」。

そこから完成、そして公開に至るまで5年を要した。実写部分はある程度、早い段階で撮影された。アニメパートはまず、オダギリさんら俳優や監督がグリーンバックの前で実際に演技をし、その映像に合わせて1コマずつ、人形の手足や表情を少しずつ変化させながら撮影した。オダギリさんもアニメ制作の現場に赴いたが「パシャっと(1コマ分を)撮って、少し人形を動かして、またパシャッと撮るという繰り返し」。1日に撮影できるのは本編の3~5秒分という気の遠くなるような作業が続けられ、ようやく完成した。

「ものすごい根気のいることですよね。あの作業を目の当たりにすると、それが95分の作品になるまでの途方もない労働力が想像でき、本当に頭が下がりました。普段は映画の撮影が終わると、翌年には公開されるんですが、この作品はここまで来るのにこれだけの時間がかかりましたからね。だからこそ、なおさら実写の撮影の後のスタッフのみなさんの苦労を感じます。そういう意味で、なんか僕は出演者としてというよりも、家族とか身内のような感覚で『(完成して)ホントに良かったね…』という気持ちになってしまう(笑)。いままでにやって来た作品とは距離感とか関わり方、完成作を観て感じることが、ちょっと違うかもしれないですね」。

オダギリさん以外に風吹ジュン、青木崇高、柄本明など錚々たる面々が出演しており、当然、彼らをモデルにした人形も登場する。そして、オダギリさん演じる梶原の雇い主である“社長”を演じているのは故・夏八木勲。夏八木さんが亡くなったのは2013年の5月。その後も、『そして父になる』、『永遠の0』など生前に撮影された作品が封切られてきたが、本作は夏八木さんの死から約1年9か月を経ての公開となる。オダギリさんは夏八木さんの死が「いまだに信じられないです。現場ですごくかわいがってもらいました」と語った。

「ヤクザの親分の役ですが、そこに滑稽さがあるんです。滑稽さの演技には目に見えるタイプと肌で感じるタイプの2つがあって、演じ方が違うんですが、夏八木さんはその両方をすごいバランスで演じられているんです。木馬に乗ったりする(前者の)ノリノリの方は言ってみればやりやすいんですよ。でも(後者は)セリフの微妙なニュアンスで、やり過ぎるといやらしいし、でも足りないと笑いにならない。その落としどころが絶妙で素晴らしいんです。70代の俳優さんが、そういう笑い――いまの若い世代に伝わるような笑いのセンスをお持ちだということがすごいなと驚きました。本当に素晴らしい俳優さんだなと」。

“笑い”の話が出たが、冒頭でも触れたように、本作の世界観を支えているのは、なんとも不思議な独特のユーモア。リアルな人形のやりとりに、思わずクスリと笑わされてしまうが、この人形たち、決して実写ではできないような飛び抜けたアクロバティックな動きや華麗なアクションを見せるわけでもない。実写シーンも撮るなら、なぜ5年もかけてわざわざアニメを…? という“そもそも”の疑問さえ頭をよぎるが、そうした良い意味での“くだらなさ”も含めて本作の世界であり、ユーモアなのだ。

「おっしゃる通り、なんで人形を使うのか…? 分かりませんよね(笑)。最初にいただいた台本の段階で、言葉遣いとか表現が個性的で、臺さんの色が濃く出た本だなと感じました。臺さん自身がすごく面白い人で、CMや『GOLDEN EGGS』もそうですが、エッジの効いたユーモアを持ってる人だから、普通の笑いともちょっと違うんですよね。確かにいまの時代では、揚げ足を取られてもおかしくないタイプのユーモアかもしれませんが、そのリスキーな感じが僕も好きだし、似た者同士が集まったのかな(笑)。あれを面白いって思ってしまっている自分がいるし、協同作業でもっと面白くしたいと思って参加してる。確かにバカバカしいんですけど(笑)、そのバカらしいユーモアが好きなんですね。思えば『時効警察』の三木(聡/監督)さんも同じで、すごくバカらしいですよね(笑)。でも、それを大の大人が一生懸命に真面目に作ってる。それがなんか好きなんです」。

もはや、押しも押されもせぬ、日本映画界になくてはならない俳優だが、当人は俳優としての立場に懐疑的で、自らを「作り手きどり(苦笑)」と称する。本作に関しても、監督に積極的に自身の考えやアイディアを伝え、“主演俳優”という立場以上に深く携わってきた。「そこで鬱陶しがられる現場もあるし、『扱いづらい』と思われる事も少なくなかったと思います」と苦笑するが、面白くなると感じれば、迷わずグイグイと踏み込んでいく。

「どんな作品でも、監督やプロデューサー、脚本家の方と話す中で生まれるものが一番大事だと思ってるし、自分のアイディアを出すことが自分の責任だとも思ってます。そうやってキャラクターを膨らませていくのが偶然、“役者”という仕事であるだけで、勝手に“制作側の人間”のような気持ちになってます(笑)。分かりやすく言うと、あるシーンで『もっとこうすれば…』と思って、変更を加えて書き直していくとするじゃないですか。それを一番、きちんと体現できるのは自分なんですよね、自分で書いてるから。だからこそ、役者をやってるだけなのかも。一番、面白いのは書き直している過程なんですよね。それこそが自分が作品に携わる意味である気がするんです」。

場合によっては、与えられたシーンを丸ごと自分で書き換えて提案することもあるという。それはクリエイティブな作業であるが、同時に、自身でも口にしているように、現場によっては越権行為だと煙たがられることも多いだろう。いわゆる“イケメン俳優”として高い人気を誇る一方で、メインストリームのスタイリッシュなキャラクターよりも、本作然り、どこかクセのある人物を魅力的に演じる印象が強いのも、こうした気質のせいかもしれない。

「自分で書き直す中で、どうしても“そっち”の方向に書き換えてしまうんでしょうね(笑)。ストレートな人格よりも、もっと人間臭くしたかったり、何かしらそのキャラクターが向くべき方向を突きつめたいんです」。

決して万人受けするものではないかもしれない。毒が含まれているかもしれない。費用対効果は低いかもしれない。それでも――ふと立ち止まった人の心に深く突き刺さる。それがユーモアであり、オダギリジョーという俳優なのだ。

【インタビュー】オダギリジョー “異端児”はそれでもユーモアを愛す!

《photo / text:Naoki Kurozu》
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