「ファッションの終わり」。傭兵デザイナーとビハインド化 | RBB TODAY
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「ファッションの終わり」。傭兵デザイナーとビハインド化

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左からWWD三浦彰氏、菅付雅信氏
  • 左からWWD三浦彰氏、菅付雅信氏
  • 左からWWD三浦彰氏、菅付雅信氏
2012年9月から半年開かれたセミクローズド会議「ファッションは更新できるのか?会議」と渋谷の本屋SHIBUYA PUBLISHING BOOKSELLERSのコラボトークイベント「ファッションの役割は終わったのか?」が1月23日に開かれた。

登壇者は編集者の菅付雅信とWWDジャパン編集委員の三浦彰。司会を予定していたシアタープロダクツの金森香はインフルエンザのため欠席、同「ファッションは更新できるのか?会議」メンバーである水野大二郎が務めた。

「現代の情報技術・環境の著しい進化、ものづくりにおける技術革新に対し、ファッション分野は更新されていないのではないか。ファッションはこれからどうなっていくのか、一般の人はファッションにどうかかわっていくのかを登壇者2人に聞く」という主旨説明が司会者からあった後、三浦氏がファッション業界の現状について言及。

「昨年10月の、1997年以降ルイ・ヴィトンのデザイナーを務めていたマーク・ジェイコブスの退任劇が印象に残った事件だった。というのも、彼がビッグブランドとの契約デザイナーを辞め、自身のクリエーションに専念することを宣言する出来事だったから。現在のファッション業界の問題は、デザイナーの傭兵化と言える。1985年からシャネルのアーティスティックディレクターを務めているカール・ラガーフェルドを発端として、マーク・ジェイコブスの後任であるニコラ・ゲスキエールが自身のシグニチャーブランドを持っていないことや、J.W.アンダーソンのような超イケメンがロエベのデザイナーに昨年就任しアイコン化していることなどが象徴するように、デザイナー達がビッグブランドグループの傭兵に甘んじている現状がある。デザイナーは以前ほどのパワーはないが、やはりファッションを変革する可能性を持っているのだからこうした状況は憂うべき問題だ」と述べた。

また、「H&Mがコム デ ギャルソン、マルタン マルジェラ、イザベル・マランなどのトップブランドとコラボすることで消費者にブランドからのお墨付きを得ているという印象を与え、コピーブランド疑惑を払拭している。SPAブランド側にメリットはあってもブランド側にはほとんど恩恵はなく、利用されているだけだ。ギャルソンの川久保玲さんにコラボ理由を聞いたが、『私の後ろにはたくさんの社員がいる。それを理解してほしい。ただしファストファッションとのコラボはもうやりません』と話してくれた。

現在、ラグジュアリーブランドとH&Mのようなファストファッションブランドしか好調ではなく、中間のミドルブランドが空洞化している。昨年原宿にオープンした低価格雑貨店ASOKOやFLYING TIGER COPENHAGENが現在も行列が途絶えないという状況がこれからの消費の行方を示していると思う。日本のファッションマーケットがどうなるのか不安になる」と消費レベルの劣化を憂えた。

菅付氏は「『あなたが何を着ているかが、あなた自身の世界へのプレゼンテーション。特に今日は、人々のコンタクトが凄く速くなっている。ファッションはインスタントな言語です』とミウッチャ・プラダが語ったように、以前はファッションが最も速いコミュニケーションツールだったが、今ではソーシャルメディアがそれに取って代わった。SNSの普及により、人の第一印象が実際に出会うより前にネットで検索された情報で決まる『中身化した社会』になったため、ファッションによる見栄を張る必要がなくなった。そのため、人々は自分なりの物語をつくるために背景があるものを求め、ライフスタイルショップに人気が集まっている」とアパレル市場縮小の原因を語った。

そして、「ファッションが生き残るには三つの方法が考えられる。ユニクロのヒートテックやフリースのような超コモディティー化、スポーツウエアなどのように機能性・実用性を追求する超ユーティリティー化、コム デ ギャルソンなどのように思想性の強いブランドを信奉者が支える、という構造を作り上げる超宗教化だ。また、今時代をリードしているのは食分野。食がライフスタイルの中心。今やファッションは時代のビハインドであることをファッション業界自身も自覚するべき。その方が強いものがつくれるはず」と警鐘を鳴らした。また「ファストファッションはあるところでピタッと止まる気がする。フリーマンズスポーティングクラブのようなセミオーダーカスタムメイドが伸びるのでは」とも述べた。

そういった菅付氏の発言に対し、三浦氏は「実は2011年の震災はファッション業界にそこまで影響がなく、それよりも2008年のリーマンショックの煽りを受けた。自分としては、2000年頃の携帯電話の本格化が消費傾向の変化をもたらしたように思う。携帯通信費が増え、相対的に衣料に掛ける予算が縮小したのではないか」と述べた。また、会場の参加者の質問に答えながら「確かにファッションは世の中から5年くらい遅れている。昨年がファッションのソーシャル元年と言える」とコメントし、終了した。

菅付雅信×WWD三浦彰が憂う「ファッションの終わり」。傭兵デザイナーとビハインド化

《奥麻里奈》
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